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“漫画が芸術となるのは素敵なこと” ルーヴル美術館特別展音声ガイド神谷浩史インタビュー

7月22日より森アーツセンターギャラリーにて開催中の、ルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9~漫画、9番目の芸術~」。展示会場で聴くことができる音声ガイドを担当する神谷浩史さんに話をうかがった。

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“漫画が芸術となるのは素敵なこと” ルーヴル美術館特別展音声ガイド神谷浩史インタビュー
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――ところで神谷さんは、ルーヴル美術館にはどんなイメージがありますか?

残念ながらルーヴル美術館には行ったことがないのですが、もちろん興味はありますし、生きているうちに一度は行ってみたいです。古きものに対しての敬意や、長い歴史の中で築き上げてきたものが形を変えずにあの中に残っているんですから。ヨーロッパが石文化であるなら日本は木の文化なので、彫刻や建築などは火事などがあるとどうしても消失してしまう。ヨーロッパで歴史ある建築物がたくさん残っている様子を見ると、それに憧れの気持ちもありますが、日本のように新しいものをどんどん作っていくスピード感も悪くないと思う。ルーヴル美術館からはそういった風土や文化の違いも感じられるんでしょうし、なんと言っても全ての作品が人間の手によって作られているというのが本当に素晴らしいと思います。

■何度も読み返すのは、あの頃の思い出を大切にしているから

――漫画についての思い出も聞かせてください。子供の頃から漫画に親しんでいると思いますが、今はどのような読み方をされていますか?

神谷
今はKindleが便利すぎて、紙で買うことは少なくなりましたね。すでに書籍版で持っているにもかかわらずKindle版で昔読んでいた漫画をまとめ買いするということもよくしています。それって、自分の思い出を大切にしたいという気持ちの表れだと思うんですよ。人は年をとると「昔は良かった」という感覚を若い人に押し付けたりしてしまいますが、その感覚はわからなくはないんです。それってただ昔の方がいいということではなく、その人の思い出を大切にしているということなんじゃないかなって思うんですよね。その思いを共感して欲しくて話をすると「昔は良かった」になるのだと思うけれど…それを強制された方は迷惑な話ですよね(笑)。

――神谷さんが心の中に大切にしまっている、思い出の漫画は何ですか?

神谷
高橋留美子先生の作品は大好きですね。『うる星やつら』、『めぞん一刻』、『らんま1/2』などは連載当時、毎週楽しみにしながら読んでいました。『めぞん一刻』が好きすぎて、コマを見るだけで瞬間的にその話を思い出せるし、次がどうなるかも知ってるはずなのに、読む時期によって印象が変わったりする。僕が初めて『めぞん一刻』を読んだのは中学生ぐらいの時ですが、未だに新しい気持ちを発見することがあります。そんな漫画を留美子先生は20代の時に描いていたのだから、ちょっと恐ろしいですね(笑)。

――みんなの憧れの女性である音無響子を20代で生み出していたわけですからね。

神谷
10代の僕には、ヒロインの音無響子という人物はただただ魅力的に見えていたんですけど、最近になって冷静に読んでみると、「この人すごい理不尽なこと言ってるな」なんて思って、ああ僕も大人になったんだななんて思ってみたり。たくさん出てくるキャラクターを、十把一絡げで「大人たちの行動」とだけ見ていたけれど、あの人たちにもそれぞれ個性があるし、納得できる行動もあればできないものもあるなって思うようになったり。そう思えるのは、読んでいる僕もいろんな経験をして大人になったからなんだと思います。

――子供の頃はKindleではなく単行本で買っていたと思いますが、本としてのエピソードはありますか?

神谷
『めぞん一刻』を初めて買った時、なぜかいきなり9巻を買っちゃったんですよね。その時の最新刊が9巻だったんだと思います。途中からでストーリーがよくわからないにもかかわらず、想像力で補うことで読めていた。確か9巻の最初の話は、主人公の五代くんが就職活動をしているというエピソードだったんですよ(笑)。中学生の僕にしたら、就職なんて遠い世界。よくそんなものを読めたなと今でも不思議に思います。中学生なので1巻から買いそろえるお金もないけど、とりあえず欲しくて買ったんでしょうね。漫画の買い方や読み方が今とはだいぶ違うけれど、それだけ夢中だったんだと思います。

――漫画は神谷さんの人格形成に影響を与えたと思いますか?

神谷
僕を構成する数パーセントは漫画でできていると言っていいほど漫画が身近な存在だったことは間違いないと思います。テレビは一家に1台しかない時代でしたし、それよりは漫画の方が手に取りやすかった。だけど無制限に買えるわけではないですから、限られたおこづかいで買ったものを大切に読んでいました。どの漫画も等しく、何回も何回も読んでいましたね。子供の頃に買った漫画はどれも思い入れが深いです。

――人の数だけ漫画の思い出があるのでしょうね。最後に、「ルーヴル No.9」の楽しみ方、音声ガイドの聴きどころを教えてください。

神谷
芸術、美術館というとどうしてもハードルが高く感じてしまいますが、美術館での最低限のルールを守れば、どんな楽しみ方をしてもいいと思います。漫画と芸術、それぞれに違いはなく、等しく人を楽しませるために人間が生み出した作品だと思うので、芸術に興味ある方は漫画に、漫画に興味のある方は芸術に、それぞれ興味を持っていただけたら幸いです。「ルーブルNo.9」には、きっとあなたの人生を豊かにしてくれる何かが待っているはずです。
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《大曲智子》

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