「終わりのセラフ」The Musical、人間vs吸血鬼、殺陣と歌とで世界観が迫力感満載 | アニメ!アニメ!

「終わりのセラフ」The Musical、人間vs吸血鬼、殺陣と歌とで世界観が迫力感満載

■ ライブミュージカル『プリパラ』 み~んなにとどけ! プリズム☆ボイス ■ 『ホテル・カルフォリニア~HOTEL CALFORINIA~』

連載 高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
注目記事
(C)鏡貴也・山本ヤマト・降矢大輔/集英社(C)「終わりのセラフ」The Musical製作委員会2016
(C)鏡貴也・山本ヤマト・降矢大輔/集英社(C)「終わりのセラフ」The Musical製作委員会2016 全 7 枚 拡大写真
高浩美のアニメ・マンガ×ステージ評
連載第163回

■ 「終わりのセラフ」The Musical、人間vs吸血鬼、殺陣と歌とで世界観が迫力感満載

連載中の人気コミック、テレビアニメ化もされ、満を持してのミュージカル化である。
客席に車のクラクションやら爆発音が響き渡り、軍靴の音、各キャラクターが登場する。それから百夜ミカエラの独白「吸血鬼のボスから逃れられたら……」と言う。舞台中央に映し出される心電図のモニター、物語は戦いで昏睡状態になった百夜優一郎がベッドに横たわっているところからで、そこから時間が遡っていく構成。
1人逃げ延びた優一郎、共に戦うことになる三宮三葉や君月士方、早乙女与一らと出会い、打ち解けて仲間となり、成長していく。厳しい一ノ瀬グレン、実は情に厚い男で常に部下を思いやる。形状は日本刀、鬼呪訓練の際に優一郎の体を乗っ取ろうとするも「仲間になってくれ」の優一郎の言葉で憑依することを認めた阿朱羅丸、高い身体能力を生かした動きがキャラクターにマッチ。

ミカエラの回想、逃げ切れずにつかまってしまったこと、フェリド・バートリーを欺いたつもりだったが、実は見破られていたこと、クルル・ツェペシによって吸血鬼になってしまったことが彼を苦しめる。プロジェクション・マッピングをふんだんに使い、アンサンブルの動きやロックな曲調のミュージカルナンバーで綴っていく。
見どころはやはり人間vs吸血鬼の戦いの場面であろう。一ノ瀬グレンはミカエラに追いつめられ、”あわや”というところで優一郎が助けに入る。彼が刺した相手は生き別れになったミカエラ、優一郎はとどめを刺せなかった。唯一の”家族”と思っていたミカエラが、まさかの吸血鬼、原作でもここは感涙の場面であろう。百夜優一郎演じる佐野 岳始め、話題作の舞台化とあってキャストの熱演が光る。歌で感情を爆発させ、やるせない、どうにもならない感をひしひしと伝える。
原作は結末まで至っていないので、舞台版も優一郎が昏睡状態から目覚める、ところで終わっている。この先のストーリーも”続編”として舞台化して欲しい。

■ ライブミュージカル『プリパラ』 み~んなにとどけ! プリズム☆ボイス

オープニングからキャラクターが賑やかに登場し、ショータイム、観客は早くもテンションが上がる”仕組み”だ。
それから物語が動き出す。ライブに遅刻しそうになり、『PrisumStone』へ急ぐらぁら。到着するもいつもの『パラ宿店』はお休みであった。青井めが姉ぇと青井めが兄ぃ(どちらもオリジナルキャラクター)に案内されてロッポンギ店からプリズムツアーで1時間前に遡ることになったが、到着したのは、なんと1年前のまだプリパラが禁止されていた過去だった。現代に戻るためにらぁらはこれまでの大事な場面をひとつひとつ再現していくことに……。

舞台中央後ろには大きなスクリーン、キャラクターに扮した声優陣が前で踊り歌うがスクリーンにはその動きとシンクロするアニメ映像が映る。舞台なので、表現はあくまでもアナログだ。布を使ったり、あるいは紐、風船やシャボン玉、アンサンブルのダンス等で様々な場面を見せる。ファンならよく知ってる決め台詞『かしこま!』等も飛び出し、オーソドックスではあるが、作品世界を上手く舞台に乗せた格好だ。アニメの”ライブシーン客席”もスクリーンに映し出されるが、ここでは観客に配られたライト(装着型・自動で光る)で盛り上がりたい。
オーソドックスで、メリハリの効いたステージング、オペラやミュージカル演出で海外でも評価が高い田尾下哲の手腕が光る。ジュークボックスミュージカルの手法ではあるが、楽曲のみならず、映像までも上手く舞台だけのオリジナルストーリーに入れこんだ構成だ。

各キャラクターを演じているi☆Ris(アイリス)は流石にチームワーク良く、楽しく演じきっていたのが印象的だ。声優として演じ続けてライブも行ってはいるものの、キャラクターと同じ衣装をつけての”演劇”は初めての経験だそう。
会見でも「どうなるんだろうと心配したけど(無意識に)らぁらちゃんになれてよかった」(茜屋 日海夏)と語っていた。また、ここでプロフィール不明の3人アイドルチーム『トライアングル』のポップ担当のぴのん(4月からのアニメ新シーズンに登場する)がお披露目された。なお、『トライアングル』の最後のメンバーは3月12日の『映画プリパラ み~んなのあこがれ♪レッツゴー☆プリパリ』公開日に発表される。

■ 『ホテル・カルフォリニア~HOTEL CALFORINIA~』

原作はすぎむらしんいち、北海道の山奥の開業間近いリゾートホテルを舞台にしたクライムアクションギャグのコミック。ヤングマガジン(講談社)にて連載され、単行本は全5巻。土砂崩れ、社長の失踪、完全に孤立してしまった人々の奇想天外な共同生活を描いている。

舞台に文字が浮かぶ。「北海道のどこか山奥」、物語はここで起こる。土砂崩れのシーン、プロジェクト・マッピングで表現、車が立ち往生、タイトルロールが浮かび上がる。一転してホテルのシーンに変わる。「社長!!」と叫びながら男が右往左往、恰幅の良いおばちゃん登場、男は「社長、見なかったか?」と女子更衣室に入り、案の定、「キャー!!」、とお約束感のあるドタバタから始まる。そこから再び、土砂崩れの場所に移る。
車から降りてきたのは、いかにも強面な感じの3人組。そこへ白いスーツのまた強面の男が1人やってくる……。やくざ、ホテルにお勤めとはとうてい思えない従業員たち、何故か武士の格好をしたおじいちゃん等、”多士済々”なキャラクターが登場する。北海道なだけに熊も出没、予測出来ない展開が続くのである。常にハイテンション、すぐに撃ち合い、もうなんでもあり、だ。バイオレンス、エロ、不条理、もちろん客席を使っての演出もあり、シュールな笑いが充満する。

原作が発表されたのは、およそ四半世紀前、しかし、古びた感じもせず、作画のタッチもそこはかとなく感じさせる。俳優陣のテンション高い演技で作品のエッセンスをおよそ2時間、これでもかと見せる。流行りの原作ものばかりではなく、秀作を”発掘”しての舞台化もまた意味のあることではないだろうか。

「終わりのセラフ」The Musical
2016年2月4日~2月11日
AiiA 2.5 Theater Tokyo
http://www.nelke.co.jp/stage/owarino-seraph/

ライブミュージカル『プリパラ』 み~んなにとどけ! プリズム☆ボイス
2016年2月4日~2月7日 
Zeepブルーシアター六本木
http://avex.jp/pripara/

『ホテル・カルフォリニア~HOTEL CALFORINIA~』
2016年2月4日~2月14日
紀伊国屋ホール
http://www.nelke.co.jp/stage/HOTEL_CALFORINIA/

「終わりのセラフ」The Musical
(C)鏡貴也・山本ヤマト・降矢大輔/集英社
(C)「終わりのセラフ」The Musical製作委員会2016
ライブミュージカル『プリパラ』 み~んなにとどけ! プリズム☆ボイス
(C)T-ARTS/syn Sophia/テレビ東京/PP2製作委員会
撮影/洲脇理恵
『ホテル・カルフォリニア~HOTEL CALFORINIA~』
(C)すぎむらしんいち/講談社

《高浩美》

特集

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]