東村アキコインタビュー“何も考えずただ走り続けてきた17年”『かくかくしかじか』第19回文化庁メディア芸術祭 マンガ部門大賞受賞  2ページ目 | アニメ!アニメ!

東村アキコインタビュー“何も考えずただ走り続けてきた17年”『かくかくしかじか』第19回文化庁メディア芸術祭 マンガ部門大賞受賞 

東村アキコさんの『かくかくしかじか』が、第19回文化庁メディア芸術祭 マンガ部門で大賞を受賞した。文化庁メディア芸術祭受賞作品展の開幕を前に、作者である東村さんに作品への想い、受賞しての感想を聞いてみた。

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──宮崎、大阪で漫画を描いていた頃と東京での現在。大きく変わったことは何か教えてください。

東村
東京はすごく暮らしやすくて好きですね。宮崎では母や親戚のおばちゃんに手伝ってもらって内職のように漫画を描いていました。今では、東村プロダクションでたくさんのスタッフに支えられて、漫画家志望の若い子もいっぱいで、すごく部活っぽいというか。昨日も10人以上のアシスタントさんたちと、部屋にぎゅうぎゅうになって漫画を描いていましたよ。にぎやかですごく楽しい。〆切は身体的にはつらいですけど、最近は精神的につらさと感じなくなりました。

──逆をいえば、わりと最近まで精神的なつらさを感じることがあったんですね。

東村
ここ2~3年くらいでつらいと感じなくなりました。ようやく、本当にようやく、35歳を過ぎてからやりかたわかってきたんです。漫画の描きかた、仕事のまわしかた。どんな職業でも同じだと思いますが、波に乗るまでがつらいですよね。『かくかくしかじか』は波に乗る前、つらいと感じていた最後の時期に描いた作品。これを描き終わったことで自分の何かが抜けてクリアになったというか。そういった意味でも大切な作品になりました。


──現在も多数の連載を同時に進めていると思います。驚異の執筆スピードですよね。

東村
1月10日までお正月休みをいただいて、そのあとの8日間で『海月姫』『美食探偵 明智五郎』『雪花の虎』の3本の原稿を仕上げました。なので今月はもうお休みです!(笑) 他にネームや下書きをしている時間もありますが、1月はもう月末まで〆切がありません。よく徹夜してるとか、休みが無いと思われがちですが。結局は人海戦術でいくしかないと思っています。作業量は人数と比例するので細分化して。私は悩んで手を止めることがないし、人に任せてもいいっていう性格なので(笑)、それが幸いしているのかも。

──決断の早さも仕事量につながる。

東村
仕事は早くないと意味がない、と個人的には思っています。

──食、歴史、ファッションと多彩なジャンルの漫画を描かれています。今後はどんな作品を描いてみたいですか?

東村
いっぱいありますね。田中圭一先生のような名作パロディもやってみたいです。例えるなら『ベルサイユのばら』の絵でSFを描くとか。そいうった類のパロディ。日本には名作がたくさんあるし、私は他の先生の絵を模写するのも大好きだし、いつかやってみたいですね。描きたいストーリーもたくさんあるので、もっとアシスタントにデビューしてもらって私が原作をやりたいです(笑)

──東村さんのアシスタントはデビューしている方が多いですよね。

東村
多いですよ。これまでにも『ZUCCA×ZUCA』のはるな檸檬さん、『きのこいぬ』の蒼星きままさん、『リアルアカウント』の渡辺静さん、『本日、あかね日和。』の桜庭ゆいさん、『平成甘味録 さぼリーマン』のアビディ井上さんと萩原天晴さん。他にもたくさんいます。東村プロにきたからには必ず世に出てもらいます。

──最後にメッセージをお願いします。

東村
『かくかくしかじか』は嘘偽りなく、漫画家になるまでを描いた作品。メインテーマが「絵を描くこと」なので絵を描いている人はもちろん、自分の子供が美大を目指している人、尊敬する師匠がいる人、たくさんの方に読んでいただきたいです。連載誌だった『Cocohana』は女性向けなので男性の目にとまりにくいですが、ぜひ男性にも読んで欲しいですね。受賞作品展もぜひ楽しんでいってください!

第19回文化庁メディア芸術祭
マンガ部門大賞『かくかくし かじか』 東村 アキコ
(C)Akiko HIGASHIMURA/SHUEISHA

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《川俣綾加》

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