アニメ・マンガに目がない「アニメ!アニメ!」編集部が、まだアニメ化されてはいないけれど“今すぐアニメ化してほしい!”と思う珠玉のマンガを紹介する連載<おすすめマンガ手帖>。
「異世界転生モノ」や「悪役令嬢モノ」の話題作が次々とアニメ化されるなか、今回注目したいのは、悪役令嬢ならぬ“極めて傲慢な男性の悪役貴族”が主役の物語。破滅の運命に抗うため、恵まれた才能に甘んじてきた主人公が初めて「努力」に挑む、黒雪ゆきは原作の『極めて傲慢たる悪役貴族の所業』を紹介する。
本作は、人気Web小説を原作とした「悪役転生×最強無双」のファンタジー作品。みく郎がマンガ、魚デニムがキャラクター原案を担当し、コミカライズ版は2026年8月時点で2巻まで刊行されている。主人公は、前世の記憶を取り戻し、自分が小説の悪役貴族に転生したと気づいたルーク。詳しい物語は思い出せないまま、待ち受ける「破滅エンド」を回避するため、自らの傲慢さと格闘しながら鍛錬を重ねていく。

※以下の本文には“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意ください。
◆傲慢だけど、心はまっすぐ。“悪役令息”が破滅エンドの回避を目指す

「悪役令嬢」に転生し、バッドエンドを目指す主人公のストーリーの名作群が続々とアニメ化されている今物語の「悪役」となった男性主人公たちの、結末を変えるための日々に焦点を当てた物語もアニメ化してほしいと願っている。その代表格として紹介したいのが『極めて傲慢たる悪役貴族の所業』だ。これが、本当に面白い!
ミレスティア王国で代々続く由緒正しい貴族、ギルバート家。その嫡男で、“極めて傲慢”な悪役貴族のルークは、ある日突然、前世の記憶を取り戻し、自分がファンタジー小説の悪役キャラクターに転生したことに気づく。しかも肝心のストーリーは思い出せず、覚えているのは「破滅エンド」を迎えることだけ。いずれ物語の「主人公」にボコボコにされ、読者をスカッとさせるために打ちのめされる運命にある。
しかし彼は考えた。そんな「破滅エンド」を回避するためには何が必要なのか。たどり着いた答えは、これまでの彼が知る必要すらなかった「努力」だと思い至る。人が努力によって獲得する能力を、生まれながらに持っていたため、これまで努力する必要がなかったのだ。だが、そんな彼が鍛錬を重ねれば、それは大きな武器となるはずだ。
ところがそこに立ち塞がるのは物語の強制力。強者に教えを請おうとしても、自分より地位の低い者に頭を下げることを、ルークの自尊心が許さないのだ。苦しみもがき、なんとか言葉を絞り出すルーク。自身をあくまで“傲慢なルーク”でいさせようとする物語の強制力に打ち勝たなければならない姿がまた面白い。
手始めに執事のアルフレッドに剣術を習うことにするルーク。それを申し出るときも「情緒不安定なのかな」と思わせるように言葉をひねり出すのに苦労をする。どうしたって、王者然とした傲慢極まりない言葉しか出てこないのだ。彼の言葉は伝わるのか? 真意をくみ取ってもらえるのか? そう心配になるほどの会話描写は抱腹絶倒だ。
しかも父親をはじめとした彼の周囲の人々も、一筋縄ではいかないキャラクターばかり。そんな中、ルークはこれまで必要なかった「努力」を重ねながら、少しずつ「破滅エンド」へと至る本筋から離れようと行動していく。その中で彼が出会う人物が、誰一人として“普通ではない”ことも、この作品の面白さだ。さらに作品の魅力を高めているのが、ルークの表情だ。一見するとヒーロー然としたイケメン。しかし、シーンを作り上げる昨今の「ざまぁ」文化を踏襲する無双の全能感から、悪役ならではの邪悪な表情を見せるのだ。それもまたルークの魅力となっている。「強すぎすげぇ」という無双の爽快感に「悪い顔やばい」という悪役ならではの魅力、さらにヒロインたちのちょっとしたお色気も加わった本作をぜひチェックしてもらいたい。
これがいつかアニメ化されたら、いっぱい笑えそうだなあ。

