『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』原 恵一監督インタビュー‐前編‐ 「杉浦日向子作品は嫉妬するぐらい好き」 | アニメ!アニメ!

『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』原 恵一監督インタビュー‐前編‐ 「杉浦日向子作品は嫉妬するぐらい好き」

5月9日に『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』が全国公開となる。監督は原恵一、5年ぶりの長編アニメはどのような想いで作られたのか。原監督にお話を伺った。

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5月9日に、長編アニメ映画『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』が全国公開となる。2005年に世を去った杉浦日向子のマンガを原作に、日本を代表するアニメーション監督である原恵一が映像化した話題作だ。
江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の娘であるお栄を主人公に、江戸時代の市井の人々の生活を描いた。監督は原恵一、アニメーション制作はプロダクション I.Gと聞けば映画ファンの期待も高まるに違いない。2015年初夏期待の1本である。
原恵一監督は、『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』などで世の多くの人に知られるようになった。その後、『河童のクゥと夏休み』『カラフル』などを手がけた。とりわけ『カラフル』はアヌシー国際アニメーション映画祭にて長編部門で審査員特別賞と観客賞を同時受賞、海外でも高い評価を得た。
その原恵一監督が手がける5年ぶりの長編アニメ映画『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』。どのような想いで作られたのだろうか。原監督に本作に関わるきっかけや制作についてお話を伺った。
[取材・構成=数土直志]

『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』
5月9日(土)TOHOシネマズ日本橋、テアトル新宿ほか全国ロードショー
http://sarusuberi-movie.com/

■ 杉浦作品の魅力は、町人、市井の人を描くこと

誰もが期待を抱くに違いない杉浦日向子作品と原監督、そしてプロダクション I.G。一体、このつながりはどう生まれたのだろうか?実は原監督は、当初から杉浦作品のアニメ化を望んでいたという。
そして、数々の作品は嫉妬するぐらい好きだとも。そこには両者に通じる共通性もありそうだ。

―『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』の企画の立ち上がりについて教えてください。

原恵一監督(以下、原) 
『カラフル』(2010年)の次回作がなかなか決まらなかったんです。いろんな企画が浮かんでは消え、なかなか決まらず月日が流れてしまって、僕もさすがにちょっと焦っていて。
その時にプロダクション I.Gの石川光久さん(代表取締役)とお話をする機会があって、そのときに自分ができればうれしい作品として、杉浦日向子さんの別の作品についてお話しました。そうしたら石川さんが「杉浦さんの作品だったら実は『百日紅』の企画を動かしたことがあるんだよ。諦めたんだけど」という話がありました。
その後、石川さんに単刀直入に「原さん、『百日紅』をやらないか」と言われました。

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―その時に『百日紅』についてどう感じられましたか?

原 
『百日紅』は杉浦さんのなかでもとりわけ好きな作品だったので、躊躇はなかったです。ただ『百日紅』は大きな流れを持って完結する作品ではないんですね。どちらかというと群像劇で、一本一本で違う人物にスポットが当たるエピソードが集まっている。じゃあ『百日紅』という原作をどうしたら一本の映画に構成できるかから考えはじめ、構成をつくりました。

――映画全体で見ると、妹・お猶の話が大きな山場ではありますが、淡々と語られています。意図して感情をおさえるということはあったのですか?

原 
そこは杉浦さんの原作の良さでもあると思っています。そこを大きく推そうとは思いませんでした。

―これまでの作品『カラフル』、『はじまりのみち』でもドラマを持たせながらも、そこはやや抑えながら、そのなかで伝わる演出が原監督の持ち味なのかなとも見えます。

原 
だから杉浦作品も好きなんだと思いますね。

――相通じるものがあると。

原 
ええ。嫉妬するぐらい好きです(笑)。

――杉浦さんの作品で好きなポイントはどこにありますか?

abesan原 
時代劇はどうしても侍が主人公の作品になります。でも、杉浦さんの場合、町人たち、市井の人々を描いている作品が多いんです。それが作品として成立しているところが、すごい。

――その主人公が葛飾北斎の娘のお栄です。女性で浮世絵師で個性的ですが、『百日紅』ではじめて知る人も多いと思います。歴史のなかではこれまであまりスポットが当たらなかったと思います。

原 
僕も『百日紅』読むまでは北斎にそういう娘がいると知らなかったんです。ただ、実際にいて、一回嫁いで別れて北斎が死ぬまで一緒に暮らした事実があります。
北斎が描いたと言われる絵の一部はお栄が描いたとされる作品もあります。
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