―氷川
ウォシャウスキー姉弟は『マトリックス』の頃から日本のアニメに影響を受けていると話し、実際に『スピードレーサー』(日本のTVアニメ『マッハGoGoGo』が原作)も監督しています。日本のアニメの作り手、しかも『攻殻機動隊S.A.C』シリーズなどが北米で高く評価される神山監督から今のウォシャウスキー姉弟はどう見えますか。
―神山
映画監督として次のフェーズに入ったのかなと。『マトリックス』の後、政治色の強い作品をいくつか作り、プロデュースもしました。そこから今度は自分の主張がちょっと引っこんでエンターテインメント性が高く、一般の人に届ける作品を作りたくなってきたのかな。
それと制作基盤が安定してきたからこそ作れるものに移ってきていますよね。彼らがもっと多作になるとうれしいですね。『ジュピター』はすごくしっかりした映画ですが、この先もっと違った映画を作る時が来るような気がするんですよね。その予感はこの作品かもら感じます。
―氷川
逆に今のアメリカの観客からは、日本のアニメはどう見られているのでしょうか。
―神山
『攻殻機動隊S.A.C』シリーズはカートゥーン・ネットワークで10年ぐらい放送されていました。それでよく観てもらえました。ただ最近は日本のハイティーン向けの作品があまり放送されなくなったという話を聞くんです。「日本アニメのSFがなくなった」と北米のファンが嘆いていますね。ウォシャウスキー姉弟は、実はそうしたファンの要望に応えようとしている感じがします。
―氷川
かつて日本のアニメに通じるSFビジュアルを大予算で表現したのが『スター・ウォーズ』でした。以後、大規模になるハリウッドのSF映画やアクション映画に、追いつき追い超せと、80年代から90年代に日本のアニメクリエイターが奮戦します。さらにそれを見たウォシャウスキー姉弟のような人たちがSF大作を作り……と、まるでピンポンのラリーのような感じです。またこちらも打ち返さないと。
―神山
悔しいのでまた押し戻したいなと思います。
―氷川
日本と北米の映像は、この先どう進むと思われますか。
―神山
いまは日本と北米の映像ファンが求めるものに、少し齟齬が出ている時期かなと思います。これがまた近づくのか、日本は独自路線を行くのか。独自路線で突き詰めてハリウッドを驚かせるのか、もう一回頑張って追い越そうみたいになっていくのかは気になりますね。
80年代ってアニメスタッフの技術が継承されてなかったんです。僕らが業界に入って自分たちが昔見た技術をやりたいと思っても、その技術はすでになかった。だから自分たちでその技術を掘り起こしました。次の世代がそれをまたやってくれるといいですね。『ジュピター』はそのとっかかりになると思うし、ウォシャウスキー姉弟はそういう意味でいえば異母兄弟ぐらいに当たる、アニメ業界の親戚。そういうふうにリンクさせながら映画を楽しむのも面白いのかなと思います。
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神山健治監督
『ジュピター』
3月28日(土)新宿ピカデリー、丸の内ピカデリー他 全国公開
http://www.jupitermovie.jp
アニメ!アニメ!×ジュピター特集ページ公開中!
/http://animeanime.jp/special/388/recent/
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