日本のアニメ作りが変われば、未来も変わる。「NUNOANI塾」が発信するもの 布川郁司氏インタビュー:前編 2ページ目 | アニメ!アニメ!

日本のアニメ作りが変われば、未来も変わる。「NUNOANI塾」が発信するもの 布川郁司氏インタビュー:前編

アニメーションの演出やプロデューサーなどに必要な知識を学ぶ「NUNOANI塾」が、2013年から開講されている。これまでにないかたちの学びの場を作りだした理由は何だったのか、塾長の布川郁司氏にお話を伺った。

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■ アニメ作りの肝は「演出」

―-「NUNOANI塾」で教えるのは「演出」と「企画プロデュース」とのことですが、なぜそこに絞ったのでしょうか。

布川
アニメーターはどこまでいっても技術の向上で、養成に関してもすでにさまざまな学校があります。
「演出」と「企画プロデュース」を教えたいと思ったのは、現在のアニメ制作における肝であるにもかかわらず、プロ向けに教えているところが少ないからです。

―-現在のアニメ制作の肝が、「演出」と「企画プロデュース」にあるとお考えになるのはなぜですか。

布川
まず「演出」の話をしますね。
アニメーターの作画はお芝居で言うと「役者」です。その役者の能力を引き出して、作品を面白くしていくのは演出の力なんです。

特に塾で教えるときに重視しているのはストーリー作りと絵コンテの制作です。
アニメは、実写よりもコンテの重要度が高いです。実写の脚本は、主役となる役者、たとえば高倉健さんなら健さんを想定したところから書いていくけれども、アニメでは絵コンテが登場人物の芝居まで作る。登場人物の芝居はコンテで決まっちゃうんです。

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―-確かにアニメの場合は、実写と作業工程の順番から違いますね。アニメでは、人物の動きの芝居は絵として作ってから、声優さんが声を入れるという。

布川
はい。あと実写の場合には撮り直しや大幅な編集もきくけど、アニメの場合、制作者の人たちに余分に描いてもらうことができません。せいぜい削るのは数秒分です。
だからコンテの段階でかっちり決める必要があるし、作品の内容も決まってしまう。色指定も美術もコンテがないと始まらないし、コンテは作品の設計図でありすべての工程の源になりまる。そこが実写との大きな差です。

塾生にはいろんな制作プロダクションの人がいますが、その中にゲーム業界の方もいます。ゲームの世界では、造形自体はすごいクオリティのものが生まれている。今は次の段階である、お客さんが感動できる映像作りが必要で、それにはストーリーと演出力が必須なんですね。

うちの授業では30分で100枚のコンテを描きます。

―-30分の間に100枚ですか! 実は先日、初心者向けの絵コンテ講座に行ったのですが、私を含めてほとんどの人が、45分で5枚のコンテを描くのがやっとでした。

布川
早さは大事です。コンテは川の流れで言えば上流工程なので、コンテが早くないと、原画にもならないし、色指定、美術、デジタルワークなど、各セクションがストップしてしまいますから。
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《渡辺由美子》

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