悠木碧さんインタビュー
キャラクターの外殻は論理で、
感情は感覚で演じていく
5月20日にオンラインゲームが日本でサービスを開始し、アジアで絶大な人気を誇る「ブレイドアンドソウル」。4月より放送中している、剱一族の寡黙で美しき剣士・アルカが主役のアニメ版も佳境を迎える。
ゲーム版・アニメ版ともにキーパーソンとなるアルカの宿敵、ジン・ヴァレルを演じる悠木碧さんにとって、この役は「一つの夢が叶った」という、挑戦ともいえる役だった。ジン・ヴァレルへの想いや、アニメ最終話のアフレコを終えた現在の気持ちを聞いてみた。
[取材・構成=川俣綾加]
『ブレイドアンドソウル』(TBSテレビ)
/http://www.tbs.co.jp/anime/blade/
『ブレイドアンドソウル』公式サイト(NCsoft)
/http://www.ncsoft.jp/bns/
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――アニメ!アニメ!(以下、AA)
冷徹で無口なジン・ヴァレルは悠木さんのこれまでのイメージを塗り替えるような役どころでした。この役はどのように決まったのでしょうか。
――悠木碧さん(以下、悠木)
アニメをやるのかオンラインゲームをやるのか、全くわからない状態でオーディションを受けました。この時ジン・ハズキの台本もジン・ヴァレルの台本と一緒に届いて「ジン・ヴァレルの台本は間違って届いたんだろうな」って思っていたんです。
でも間違っていたのはハズキのほうで、本当に驚きました(笑) ジン・ヴァレルに決定したと一報を受けた時も「私、どんなミラクルを起こしちゃったんだろう!?」なんて思うくらい、経験の無いキャラクターだったのでドキドキでした。
――AA
ジン・ヴァレルはアニメではまだまだ謎の多い人物です。悠木さんの考えるジン・ヴァレルはどんな人物ですか?
――悠木
これから色々と明らかになる部分ですが、“可哀想な人”です。もっと本当に冷酷で人間の部分を忘れられていたなら人を殺しても苦しまずに済んだけど、そうではないんです。
アニメでは苦しみを誰も理解してくれないという孤独や葛藤がすごく描かれていて、何よりみんなに「化け物」と呼ばれるのがあまりに可哀想で、悲しくて。もう、「あの子は女の子なんだよ!」と叫びたいです。アフレコでは私だけでもジン・ヴァレルの味方でいたいなと思いながら、いつも演じています。
――AA
ゲームとアニメの両方で演じていますが、演技の違いなどは?
――悠木
ゲームの時はプレイヤーに個性が無い状態でジン・ヴァレルが一方的に話しかけるような状態なので、能動的なキャラクターにしないと彼女が話すきっかけがなくなってしまうんです。「これをプレイヤーに伝えたら悔しがるだろうな」みたいなサディスティックな部分が強いキャラクターとして演じました。
アニメでは色々なキャラクターが起こすアクションに対して、受けの答えが多く、独り言は多いんですがあまり人と会話していないというか。受動的で、他人とは別次元で生きている感じで、ぼんやりしていることが多いんですよね。ゲームよりは寡黙で人形のようなイメージでいます。だからこそ、少ないセリフで彼女の恐さ、冷たさ、人形っぽさを出していこうと頑張りました。
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――AA
冷たさや怖さを表現するために工夫したことは?
――悠木
これはあくまで私の考え方ですが、声の演技って、まずはそのキャラクターの呼吸を考えることがスタート地点だと思うんです。元気な子ならいつもハフハフして呼吸が浅くてどたばたしてそうとか、おっとりした子はゆっくりした呼吸で、とか。ジン・ヴァレルは呼吸しない、というのをやってみようと思いました。無呼吸な状態でも生きられるなんて、怖いですよね。吸う音を小さく、まるで息をしていないかのような演技を序盤の軸にして、徐々に彼女の感情の揺れが出てくるとそれに合わせて呼吸も変化させています。戦闘力も高いタイプなのできっとすごく呼吸が深いはず。ゆっくり堂々と、一発の呼吸でひとっ飛びできるくらい。そんな呼吸をイメージしています。
――AA
お話を伺っていて思ったのは、演技に対してすごく論理的に考えるタイプなんですね。
――悠木
最初にキャラクターの外殻、外殻というのは声のトーンや先ほどの呼吸のお話ですね。これを作るときは論理的に考えていくほうがいいと思うんです。一方でキャラクターの感情や心の動きは自分のカンや感覚に頼っています。ジン・ヴァレルは作品の中でもヒントの少ない人物で、彼女が何を考えているか私にもわからない頭が良くて人知を超えた存在なので、そこはカンというか、彼女になったつもりで演じることを重視しました。