「∞(ノンストップ)クライマックスアクション」と銘打つ名作ゲームを、ノンストップクライマックスアニメへと昇華させたのは『アフロサムライ』シリーズなどを手がけ、ハイディテールのビジュアルと、刺激的なアクション演出を得意とする木崎文智監督。人気ゲームのアニメ化に真っ向から取り組んだ、一大プロジェクトの内幕を聞いた。
[木崎文智(きざき・ふみのり)]
1969年生。福岡県出身。1980年代末よりアニメーターとして活躍し『バジリスク~甲賀忍法帖~』で初監督。切れ味の鋭いアクション演出は海外からの評価も高く、近作『アフロサムライ:レザレクション』はエミー賞へのノミネートも果たした。
(※崎の字は、本来は“たちさき”です。)
『BAYONETTA Bloody Fate』 /http://www.bayonetta-movie.com/
■ 「このゲームは舐めちゃダメだ」
- まず本作を監督する経緯はどういったところから?
- 木崎文智(以下「木崎」)
プロデューサー側からの指名でしたね。まず原作ゲームを渡されて「こういう企画があるので触っておいてください」という感じでした。
- 木崎監督は普段ゲームはプレイされますか?
- 木崎
そこそこかな。『バイオハザード』や『HALO』みたいなアクションゲームが多いんですけど『ベヨネッタ』もちょうどその好きなタイプだったので、素直に面白かったですね。
でも最初は「これをアニメ化する気なんだ。大変だけど、どうするんだろう?」っていう……。
- わりと他人事な感じで(笑)。
- 木崎
まあ、アニメの企画ってなかなか決まらないことの方が多いので、最初はそれほど本気にしてなかったんですね。遊んだのはちょうど『アフロサムライ:レザレクション』の直後の2009年末ぐらいだったと思うんですが、いずれ企画が動くならそのときに考えよう、という感じでした。企画が動き出す前はそもそもなぜ、アニメ化を言い出したんだろうと。
『ベヨネッタ』という作品は、まずゲーム内にハイレベルなCGムービーがあるので、アニメ化する際の労力の重さは容易に想像できますよね。スタッフへの負荷はこれまでの作品と比べ物にはならないだろうし、僕も「このゲームは舐めちゃダメだよ」という意見でゴンゾの内藤プロデューサーと話し合ったんですが「それでもやるんだ」という強い要望があったので「じゃあなんとか実現に向けてやりましょう」ということで、監督を引き受けることになりました。
- 内藤プロデューサー
アニメ化に関しては「木崎さんにこそ監督をお願いしたい」という強い希望が関係各者からあったので、逆に木崎監督が降りることになっていたら、この企画は成立しなかったですね。
- なるほど。本格的に動き出したのはいつ頃ですか?
- 木崎
企画自体は原作ゲーム『ベヨネッタ』がリリースされた2009年から動いていたんですが、翌年の2010年に企画が固まって、まだ当時関わっていた『X-MEN』の作業を経てからシナリオやキャラクターの開発に着手しました。シナリオと並行でイメージボードを描き、絵コンテ作業に入ったのが2012年の10月でしたね。
- では2014年リリース予定の『ベヨネッタ2』に合わせたスケジュールではなくて、1作目当時から動いていたアニメ化が、結果的に『2』につながるタイミングになったということですね。
- 木崎
そうですね。
- アニメ化にあたっての全体の方針は?
- 木崎
実制作に入る前に、参考用にゲームのCGムービーをつないだ7時間ほどの映像を見たんですが、あらためてすごくて「これを編集して2時間にすればいいんじゃないの?」と思えるほどだったんです。それだけならゲームをプレイするのが作品にとって最善だと思うので、シナリオ開発初期には、ベヨネッタとジャンヌの過去などゲームで語られていない部分をアニメで描くアイデアもあったんですが、最終的にはプロデューサーサイドから「ストーリーを誰もが理解しているのではないので、アニメではゲームのストーリーをしっかり見せてほしい」というオーダーがありました。
それを受けて映画の90分という長さで『ベヨネッタ』という作品をちゃんと理解できるように構成し直して、なおかつキャラクターが記憶に残るような形を目指して、シナリオから絵コンテ作業に進めていった形です。基本的な流れは原作を踏襲しつつ、アニメならではの独自性を盛り込む方向になっています。
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