日本の劇画作家がテーマ アジアの巨匠が生み出した映画「TATSUMI」 エリック・クー監督インタビュー
8月24日から、京都シネマにて『TATSUMI』が公開される。2011年に製作された本作は、シンガポールの気鋭エリック・クー監督が、日本の劇画家・辰巳ヨシヒロのマンガをもとにその半生をアニメーションとした。公開にあわせ、クー監督のインタビューを再掲する。
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■ 『TATSUMI』は、劇画と映画の結婚
-- アニメアニメ(以下AA)
『TATSUMI』は、ドキュメンタリーであり、アンソロジーであり、さらにアニメーションである。非常に複雑な構成を取っています。このアイディアは、どこから生まれたのですか?
-- エリック・クー監督(以下クー)
私はまず、辰巳先生の人生である『劇画漂流』を世界に広めたい、共有出来るようにしたいと考えました。それと同時に、先生のこれまでの作品をこれにつなぐことを考えました。短編と先生の人生をつなぐというものです。
それが全体で長編映画となるとうまくいくはずだと考えたのです。私は短編作品を単純な短編映画にはしたくなかったのです。それはスムーズではないのです。それは人生と一緒になることに意味があるのです。
また、私にとって重要だったのは、辰巳先生が自らこの映画のナレーションをやってくれることでした。
-- AA 映画はアニメーションで表現されています。でも、題材になった劇画は、そもそも動かない画を映画的に表現することで生まれた表現手段です。それをもう一度映画にすることについてはどう思われますか?
-- クー
劇画が映画になるのは、いわば劇画と映画の結婚です。私は辰巳先生の作品は、あまりアニメ的ではないと思っています。これらの作品は映画と同じ、劇画なのです。
実際に辰巳先生の作品のコマ割りは、映画のよいストリーボードになっています。制作に携わった多くのアニメーターは、先生の創造性をキープしており、実際に私たちがやることはあまり多くありませんでした。
-- AA 映画は日本でなく、シンガポールで作られているのですよね?
-- クー
カナダ、インドネシア、シンガポール、それにフィリピンの人により制作しています。アニメーションパートはインドネシアのバタムです。
-- AA 日本人から観ても、違和感のない映像なのですが、制作にあたってはどのような指示を出されたのですか?
-- クー
それはうれしいですね。出来るだけ作品に忠実にしました。また、別所哲也さんが声を演じてくれたことも重要です。そうしたコンビネーションが、違和感を持たせなかったのだと思います。
一方、それだけでは足りないところがあるので、独自のリサーチも行いました。
-- AA 例えば、どんなものでしょうか
-- クー
映画の画面は大きく、マンガに描かれていない部分が現れます。それは独自に考えなければいけません。それを辰巳先生にひとつひとつ確認しました。例えば、隠れた場所に何があるのか、電車の色はどうなのかなどです。
その際に棚の手すりが大き過ぎるといったことなどの指摘を受けましたね。それと大阪弁もです。この時代にどんな大阪弁がしゃべられていたのか。これも課題でしたが、辰巳先生がアドバイスしてくれました。
《animeanime》
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