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「東京マンガラボ出張コラム部」第1回 漫画好き大学生が薦めるこの作品

全国の大学にある漫画研究会の有志によって運営しているマンガ系情報サイト『東京マンガラボ』がお薦めするこの1冊。新連載開始。

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■ もはや職人芸の4コマ力(ヂカラ)! 『ゆゆ式』

abesanもう1作品は、今年の春クールよりアニメが放映開始、『まんがタイムきらら』にて連載中の『ゆゆ式』です。作者は本作が連載デビュー作となる三上小又先生。
「きらら」とその系列誌といえば、『けいおん』や『ひだまりスケッチ』など多数のアニメ化作品を送り込み続ける、いわゆる「萌え4コマ」と呼ばれるジャンルにおける中心地として存在しています。そんななか、『けいおん!』という核弾頭がありながら、実はアニメ化作品が少ない本誌きららが送り込む次なる刺客が『ゆゆ式』なのです。

「萌え4コマ」といえば、女の子達の「キャッキャウフフ」な会話劇を楽しむ作品が多数を占めますが、その道に精通していない人から見ると個々の作品の特徴を掴むのがなかなか困難だったりします。正直自分も萌え4コマはまったく明るくないのですが、本作はそんな自分にすらその魅力がぐいぐいと伝わってくる、強い個性を持った作品なのです。

『ゆゆ式』の大きな魅力をざっくりと説明すれば、「『スベった』ことさえも面白くしてしまえる、三上先生の着眼点」だと思います。具体的な例をいくつか挙げると、たとえば「なにか上手いたとえを言おうとして、ゴニョゴニョ言うだけで結局思いつかなかったこと。」あるいは「会心だと思ったツッコミが、意外と周りの反応が薄くてションボリしてしまうこと。」台本の存在しない、日常会話の中だからこそ訪れるちょっとした会話のすれ違い。三上先生は、「なにか面白いことを言ってやろう」と虎視眈々と狙っている人達に訪れるであろう、「あるあるな失敗」を見事にすくい取ります。それが、作品の会話劇に独特の「生の会話っぽさ」を与えているのです。

「あるあるネタ」に関してプロと一般人の間を分ける差があるとすれば、それは「目の付け所」だと思います。普通の人のあるあるネタが周りの人達に「わかるよ、それ」と共感してもらうためのものだとしたら、『ゆゆ式』で出てくるような一味違うあるあるネタに感じる印象は、「たしかによくある。けどそんなところ普通だったら気にも留めてなかった。この人おかしい!(褒め言葉)」というものです。
その「三上先生特有の視点」が、『ゆゆ式』と一般的な萌え4コマを分ける境界線になっています。ここで、作品を通しで読んで驚いたことを一つ挙げたいと思います。主要キャラの一人に日向縁(ひなたゆかり)という、設定上は超お金持ちな家の娘となっている女の子がいるのですが、連載が始まって約5年間、「お弁当が超豪華」「学校に家のメイドさんがやってくる」といった、ほかの作品ならたまらず使ってしまうであろうお嬢様キャラならではの「鉄板ネタ」を、三上先生は1度として使っていないのです!キャラの魅力で押していくネタに頼らず、執拗なほどに「会話にまつわるネタ」を掘り下げていく作品からは、もはやただならぬ業を感じさせる……といったらさすがに大業ですかね。業だけに。

『ゆゆ式』では「スベった」シーンでさえもクスリとしてしまうのは、ひとえに三上先生の4コマならではの「テンポ」と「間」を巧みにコントロールした演出力によるものです。そもそもネタとして破綻しているからスベっているのであり、それでも面白くするには「間とテンポ」で生まれる空気感で笑わせるしかないのです。これを言葉で説明するのは野暮の極み。「4コマならではのテンポが生み出す気持ちよさ」は、是非実際の作品を読んで堪能して下さい。
ちなみにアニメ版『ゆゆ式』に関して、漫画が持つ特有のテンポを映像に変換するのは非常に難しいだろうと放映前から不安に思っていました。アニメのスタッフの方々には、ぜひ原作の持つ「テンポの気持ち良さ」まで再現して欲しい……と考えるのは、面倒臭い「原作好きのファン」特有のぼやきなのでしょうか。
それらが『ゆゆ式』が持つ魅力のおおよそ半分です。それではもう半分はなにか。それは、櫟井唯(いちいゆい)というツッコミキャラの金髪の女の子が担っています。もう一人の主要キャラ「野々原ゆずこ」と縁に「可愛い可愛い」とイジられ、2人にツッコミながらも、顔を真っ赤にして照れている……その姿を眺めていると正直ニヤニヤが止まりません。動いている彼女が見られるというだけで自分はアニメ版に満足しています。唯ちゃん可愛いよ唯ちゃん!

お目汚し失礼しました。今後の漫研の仲間達は、それはもう真面目かつ熱い漫画語りを見せてくれるはずです。
次の人へのハードルを上げきったところで第1回を終えさせて頂きたいと思います。今後も当記事と、本サイトである東京マンガラボをよろしくお願いいたします! 

『東京マンガラボ』 /http://tokyomangalab.com/
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