こうしたなかで毎年開催され高い人気となっているのがWowmax Media!の海部正樹代表とジェトロパリセンターの豊永真美次長による「欧米のアニメ市場の最新動向と今後の展望」である。
このシンポジウムが人気なのは、両氏とも調査によって得られたデータを豊富な知識と合わせて論理的に解説する点である。さらに毎年あらたな情報を付け加えられることから、まさに最新動向に相応しい内容となっている。
北米のDVD市場の特徴
今年の海部氏の最新情報は、北米ではビデオグラム(DVD・ビデオ)の販売金額の底入れや非劇場公開のアニメーションDVD市場の成長、さらにグラフィックノベル・マンガ市場の成長である。
特に海部氏は北米での日本アニメのビデオグラムの不振が、かつての右肩あがりの反動から、過度に強調されていると指摘した。
同氏によればDVD-BOXの販売増加に助けられて数量ベースで減少しているDVDも、売上高ベースで見れば2006年は2005年より増加しているという。
また、米国のアニメビデオグラム販売の特徴として、売上高の多くが少数のタイトルに集中している点を指摘する。海部氏によれば米国のアニメの売上高は、上位10タイトルで全体の21.7%を占めている。 2006年に発売されているアニメタイトルは5216あり、1タイトルあたりの売上げ平均は2270枚とかなり低い水準にとどまっている。
さらに企業別のシェアを挙げながら、アニメDVDの流通はハリウッドメジャーの影響力が弱く、アニメ専門のディストリビューターが強い特異な市場といったことも付け加えた。
今後の動向としてはデジタル配信とアニメ専門チャンネルの拡大の動き、リメイク企画や日米共同製作の増加、アメコミアニメーションOVAが米国独自の大人向けアニメーション市場を形成しつつあることなどにふれた。さらに海賊版の問題などにもふれた。
アニメーション好きのヨーロッパ人
一方、豊永氏の話は、ヨ-ロッパ主要国のアニメーションの映画・テレビ放映事情が中心であった。同氏によれば、ヨーロッパ人は日本人や米国人に較べてもアニメーションの好きな国で、特にハリウッドの3DCGアニメーション映画の市場は極めて巨大だという。
例えば、フランスでは日本のアニメの人気が高いとよく言われるが、テレビ放映では日本アニメがヨーロッパや米国のアニメーションに対して圧倒的に強いというわけではない。
豊永氏が3月に調べた結果では、フランスの地上波放送局で放映されるアニメーションの日本アニメの占める割合は10%過ぎない。特に土日のゴールデンタイムで放映されているのは『明日のナージャ』のみとなっている。
欧州市場は巨大であるだけに米国企業にとっても魅力的な市場で、米国のアニメーションが広く人気があるのが実情のようだ。
WiiとDSで日本ゲームに対する評価は一変
また、豊永氏はアニメでだけでなくヨーロッパでの日本のポップカルチャー全体について、いくつかの最新のトレンドを解説した。
そのなかで特に興味深かったのは、日本のゲームに対する評価である。同氏によれば昨年来の任天堂のWiiとDSの発売により、これまでに日本のゲームに対する評価が完全に変わり、日本ゲームが広く受け入れられつつあるという。
「脳を鍛える・・・」や「NITENDOGS」といった日本的なゲームの人気が急激に高まり、ヨーロッパ人が苦手なロールプレイングゲームの「ドラゴンクエスト」すら、売上げが伸び始め、今後の期待が持てるという。
仏のNARUTO売上げはハリーポッターの1/2
また、相変わらずマンガ市場は勢いがあり、シリーズ作品を中心に売上げ数は確実に伸びている。特にフランスでは『NARUTO』が強く、どこまでブームが広がるかを注目している。
『NARUTO』の最新刊26巻の売上げは13万部、これはハリーポッターの最新刊の売上高が30万部ということを考えれば極めて大きいという。
米国とヨーロッパという異なる市場ではあるが、いずれの報告も楽観し過ぎることも悲観し過ぎることもない現実的な視点で多くの考え方を示唆するものであった。
今回のシンポジウムの内容を胸にとめ、今年一年の欧米でのアニメビジネスの動向を注視したい。
/Wowmax Media!
/日本貿易振興機構
欧米アニメ市場の最新動向と今後の展望
3月22日(木)
主催:日本貿易振興機構(JETRO)
パネリスト:
Wowmax Media! 代表/プロデューサー 海部 正樹
ジェトロ・パリセンター 次長 豊永 真美
司会:ジェトロ・本部輸出促進課 梅村 明歌音
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