商社がアニメ進出するわけ:双日のケース(10/24)
伊藤忠商事とカートゥーンネットワークによるアニメ共同製作事業、三菱商事と電通のアニメ事業提携など、近年総合商社がアニメビジネスに関わるケースが増えている。
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数千億単位のプロジェクトも行なう総合商社がなぜ不案内に見えるアニメビジネスとの関わりを深めるのだろうか?
社団法人日本貿易会の月報10月号新規事業特集に総合商社のひとつ双日が寄稿した「コンテンツ産業育成における商社の役割」(下記リンク先参照)はそうした疑問の一部に答えるものになっている。
双日はこの5月に日本政策投資銀行とクロックワークス(双日の持分会社)と共同で投資組合(日本コンテンツ投資事業有限責任組合)を設立し、米国最大のアニメ流通企業ADヴィジョンに出資し注目を浴びた。
また、同時にこの投資組合は海外向けのコンテンツライセンスの管理会社ARMを設立している。
今回の特集はこれまでのプレスリリースや報道だけでは判りにくかった、双日のアニメビジネスの目的とARMの役割が簡潔に説明されている。
今回のビジネスのポイントは、総合商社のふたつの大きな機能、海外ネットワークとファイナンス機能が要となっている。海外ネットワークを利用したライセンスの販売は比較的判りやすいが、むしろ今回注目すべきはファイナンス機能である。
なぜならこのARMのビジネススキームは、日本企業でなく米国のアニメ流通企業のファイナンスサポートが最大の目的になっているからである。
このビジネスは日本のアニメコンテンツを買う企業に資金環境をサポートすることで、それらの企業がより日本のコンテンツを買いやすくする。結果的に日本企業にも利益となることを目指している。ADヴィジョンへの出資も、そうした流れの一環にあると考えてよいだろう。
また、ARMの役割は同社が海外向けのマスターライセンスを獲得し、各海外企業にサブライセンスを供給することである。一気に高額なマスターライセンスを獲得するのに較べて、海外の流通企業の資金的な負担はこれで軽減される。
この場合サブライセンサーは、ADヴィジョンに限定されていない。このビジネススキームは、多くの海外企業に適用されることで、そうした企業による日本アニメの買付け需要を促進する目的があるわけだ。
今回の双日のビジネススキームの背景には、日本の人気アニメのライセンス高騰と、米国でのアニメDVDの販売不振が多くのアニメ流通企業の財務基盤を傷つけたこと、米国のアニメ流通企業の多くはベンチャー企業で資本調達力が十分でないことなどが事情としてある。
また、こうした複雑なファイナンススキームが登場するのは、海外におけるアニメ流通ビジネスがこれまで以上に複雑化し、同時に拡大しつつあることも示していそうだ。
/日本貿易会
/コンテンツ産業育成における商社の役割
《animeanime》