制作者はなぜ弱いのか?
一橋大学イノベーション研究センターの出す一橋ビジネスレビューが「日本のコンテンツビジネス」という大きな特集を組んでいる。コンテンツ全般から「テレビ放映」、「著作権」、「映画」、「出版」、「ゲーム」、「音楽」に及ぶ5つの論文から構成されており、総ペー
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コンテンツ産業の言葉は、実は曖昧でひとくくりにすることが難しいものである。しかし、ここでは様々な分野を並列的に取り上げることで、相互の類似と相違、その関連性を考えることが可能になっている。そして、それぞれの論文が業界構造とその力関係が産業に大きな影響を与えていることを明らかにしている。
こした視点で読むと、日本のコンテンツ諸産業が産業構造として共通の構造を持っていることに気づく。また、それがアニメや映画を初めとする制作側・クリエーター側の厳しい状況を生みだす共通の原因だとも考えられる。
この特徴を簡単に言えば、作品の出口である流通分野の企業寡占と作り手である制作側の過当競争状況である。
例えばアニメでは、作品公開の主要な流通媒体の地上波放送枠を在京民放5社とNHKを含めた6社が事実上握っている。これに対してアニメの制作会社は元請企業だけで40社あり、現在は制作作品本数が過剰気味である。
制作側がアニメ作品のテレビ放映を考えた時に、様々な交渉でテレビ局側が有利になることは容易に想像出来る。アニメ作品の放映料がしばしば買い叩かれるのは、こうした業界の構造も理由になっているだろう。
こうした論点は岸本周平氏の「日本のコンテンツ産業と政策のあり方」の中でも触れられている。
こうした流通あるいは媒体の寡占状況はテレビ放映に限ったことではない。出版流通では日販、東販が事実上流通を独占しているし、ゲーム業界ではゲームハード機をソニーコンピュターエンターテイメント、任天堂、マイクロソフトの3社が独占している。それに応じて、それぞれの作品供給サイドである制作者たちの立場は弱くなると考えられる。
また、映画の配給会社では、東宝、東映、松竹による寡占状態にある。山下勝氏の論文「日本の映画産業の「ダークサイド」」は、こうした日本の映画産業の仕組みを解き明かすなかで、90年代半ばまで30年間続いた日本の映画不況と制作者の弱い立場を明らかにしている。
しかし、こうした制作者側の弱い立場が、必ずしも今後も続くというわけでもない。勿論、独占禁止法などの運用も考えられるし、既存の流通構造を無効にするインターネットの発達という要素もある。それ以上に大きいのは、制作分野の人材育成や中堅以下の企業の市場特化や独創性の発揮などの可能性だろう。
ほかにないものが提供する無二の存在になることが、こうしたいびつな構造を打破する大きな力になるからである。それは、アニメ作品を越えるジブリ作品ブランドを創り出したスタジオジブリの成功が一番の例であろう。
/一橋ビジネスレビュー(2005年冬)(アマゾンへのリンクです)
掲載された論文のタイトルと著者
日本のコンテンツ産業と政策のあり方 岸本周平
日本の映画産業の「ダークサイド」 山下勝
ゲートキーパーとしての出版社と編集者 佐藤郁哉
日本のゲームソフト産業 米倉誠一郎/生稲史彦
日本と韓国のモバイル音楽ビジネス 武石彰/李京柱
《animeanime》