夏アニメ「サンダー3」まさにアメイジング!! マンガバース×マルチバース+2D作画×3D+あいみょん!? 総監督&監督&副監督が語るこだわりの映像表現【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

夏アニメ「サンダー3」まさにアメイジング!! マンガバース×マルチバース+2D作画×3D+あいみょん!? 総監督&監督&副監督が語るこだわりの映像表現【インタビュー】

マンガ世界とリアル世界のキャラクターがクロスオーバーしたら、ただの中学生がスーパーヒーローになっちゃった!! 7月より放送中のSF×ファンタジーアニメ『サンダー3』の 総監督×監督×副監督にインタビュー。

インタビュー スタッフ
注目記事
TVアニメ『サンダー3』場面カット
TVアニメ『サンダー3』場面カット 全 13 枚 拡大写真

原作者・池田祐輝氏が「月刊少年マガジン」で連載していたコミック『サンダー3』が、7月よりTVアニメになって放送中。「マンガバース」のキャラクターと「マルチバース」のキャラクターが同じ画面で肩を並べる、今までありそうでなかった衝撃の絵作りが話題になりました。

TVアニメ『サンダー3』メインPV|毎週水曜放送中

【ストーリー】
「ぴょんたろう」「つばめ」「ひろし」の中学生トリオは、「スモール3」と呼ばれる冴えない3人組。しかし担任教師のドクから借りたディスクを再生したことで、テレビの向こう側に広がる“もうひとつの世界”ことマルチバースの世界に迷い込み、誰も経験したことがないような体験をすることになる!!

「マルチバース」のワードが示すように、アメコミ好きのハートを掴むネタを盛り込みつつ、昭和ギャグマンガで定番だった「ギャグアニメのキャラは死なない」を超人として描いた、独自の調理法で唯一無二の極上メニューを作り上げて注目を集めました。

そこで本稿では、アニメ版の主要スタッフである「瀬下寛之」総監督、「井手恵介」監督、「菅井進」副監督にインタビューを実施。原作コミックと同様の表現をアニメシリーズでも実現した、その意欲的な制作現場の裏側をうかがいます。

(左から)「菅井進」副監督、「瀬下寛之」総監督、「井手恵介」監督

【プロフィール】
瀬下寛之 総監督…監督、CGディレクター。『シドニアの騎士』『亜人』『BLAME!』『ルパン三世VSキャッツ・アイ』『GAMERA -Rebirth-』などで監督を務めるほか、新海誠監督『すずめの戸締まり』ではCGキャラクター演出を手掛けている。

井手恵介 監督…監督、演出家。『亜人』では、演出やストーリーボードを担当。『Levius -レビウス-』、『ルパン三世VSキャッツ・アイ』などでも瀬下寛之とタッグを組み監督を務めた。

菅井進 副監督…CGディレクター、演出家。『シドニアの騎士』『亜人』のほか、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』『パシフィック・リム: 暗黒の大陸 』にてCGディレクター、演出を担当。

[取材・文=気賀沢 昌志]

原作は“騙された” “ありそうでなかった面白さ”

TVアニメ『サンダー3』場面カット

――本作のタイトル『サンダー3』と同様に、監督業が“3つ”に分類されていますね。どのような役割分担なのでしょうか?

瀬下寛之(以下、瀬下) 簡潔に言うと、総監督がストーリー・世界観・キャラクター・ビジュアルスタイルの方針を出し、それを井手、菅井両監督と共に検討・推進した後、最終的に総監督が決定するという役割分担のチームです。また、各話演出として、井手くんが主に奇数話、菅井くんが偶数話を担当しています。

僕ら3人の関係性は縦割り管理の関係ではなく、得意分野を持った人間のコラボレーションに近い形ですね。それぞれが常に全体を把握しつつ、責任を負う領域を分担しているようなイメージです。3人とも3DCGの出身で、3DCGの手法・技法・作法を詳細まで把握している分、コミュニケーションが円滑です。効率的な仕組みを構築したら、このような編成になりました。

TVアニメ『サンダー3』場面カット

――元々が3DCG畑だったのですね。

瀬下 僕の場合は1980年代からCMや映画、ゲーム、展博映像など、さまざまな分野でCGを活用してきました。とにかく、3DCGというツールが好きで、いつか3DCGで長編アニメをやりたいと思ってアニメ業界に移ったのですが、1980年頃は1秒の映像を作るのに100万円かかった時代です。それがようやくテレビ番組の予算で制作できるようになったのが、2014年に放送された『シドニアの騎士』でした。

――そして今回、『サンダー3』も3DCGアニメとして映像化されました。皆さんは原作コミックをお読みになって、最初の印象はいかがでしたか? 自分は正直"騙され"ました(笑)。

瀬下 僕も騙されましたし、驚きました(笑)。元々連載初期の段階で、友人に「面白いマンガがあるよ」と教えてもらい、第1話から「早く続きが読みたい!アニメ化したい!」と感じたのがきっかけです。

井手恵介(以下、井手) 自分も知人から教えてもらいました。

――どういった部分に惹かれましたか?

井手 主にマンガバースの、あの緩い日常描写ですね。セリフも特徴的で、短い会話がテンポよく飛び出します。とくに印象に残ったのは、冒頭の「パンツなんか落ちてないよ」でした。中学生が実際に会話していそうな内容で、でもどこかマンガらしくないリアルさというか違和感があって心地いいんですよ。できるなら、あの会話部分をもっと見ていたかったですね。

TVアニメ『サンダー3』場面カット

――自分もマルチバースがディストピアすぎて、その雰囲気のギャップに風邪をひきそうになりました。

井手 マルチバースはずっと「3Dにしたらおもしろそうな雰囲気だな」と思いながら読んでいました。それくらい想像力を刺激される世界観でしたし、それを実際に担当することになって驚きましたね。

菅井進(以下、菅井) 僕は仕事の話が決まってから読みました。最初はマンガバースのかわいい絵柄を見ながら「僕、こんなかわいい作品やれるんだ!!」と思っていたのですが、そこへ来て急にあのマルチバースですよ(笑)。かなり驚きましたね。異世界転生のようで異世界転生モノじゃない。この“ありそうでなかったもの”がおもしろいと思いましたし、「こういう表現方法があったのか!!」と気付かされました。

監督陣で試行錯誤― マンガバースとマルチバースの表現の差別化

――トリッキーな作品ではありながら、異星人に対して絶望的な戦いを挑むカタルシスもあって熱いストーリーに引き込まれます。映像化するにあたり、皆さんはどこを大切にして、どのようなことを実践したいと思いましたか?

瀬下 柱は3つです。まずマンガバースのキャラクターが戦ったときに独特の爽快感やカタルシスがあること。その一方で、ただ無双するのではなく、キャラクターたちの優しさを描写すること。そして「ふたば」と「ぷうすけ」がと圧倒的にかわいく描かれていることです。特に「ぴょんたろう」たちが優しさに溢れている存在であることを、とにかく大事に思いながらアニメ化しました。

TVアニメ『サンダー3』場面カット

――大事に描くといえば第6話です。宇宙小動物の「キューちゃん」と「ふたば」が交流するシーンが、ものすごく丁寧に描かれているように感じました。

瀬下 原作コミックでもあえてセリフを使わずにじっくりと描いていて、その印象的なシーンのエッセンスや雰囲気をアニメでいかに再現するか苦心しました。根底にあったのは、どんなシリアスな状況になっても「ふたば」と「ぷうすけ」と彼らを取り巻くマンガバースのキャラクターたちが、とにかく愛くるしくなることです。

井手 マンガバースのキャラクターたちが魅力的でなければいけないという意識はありましたね。3DCGの線は、とにかく原作コミックにあるような「ゆるい線」が苦手です。曖昧さが失われてカッチリ出てしまうんですよ。そうなると原作コミックとは見え方が変わってしまいます。あとはマンガバースとマルチバースの表現の差別化で、どうバランスを取るか悩みました。その部分は監督陣でかなり話し合い、試作映像ではやっていなかった表現を本番で足したりして、かなりこだわりました。

TVアニメ『サンダー3』場面カット

――マンガバースのキャラクターを表現するスクリーントーンに「なるほど!」と思いました。

井手 あの表現はまさに試行錯誤の成果ですね。我々は「アミテン表現」と呼んでいます。当初は3D表現の一環としてテストしましたが、見え方がチープになってしまうので、アウトラインの太さや照明で差別化する方法を試したり、2Dの「アミテン表現」を試したりしました。結果、アウトラインや照明の差別化では、合成を失敗したかのような見え方になってしまい、個人的にも「これはないな」と思いました。しかし2Dの「アミテン表現」には可能性を感じたので、それを活かす形でようやく現在の形に落ち着いたんです。そのあたりはいろいろと試した結果、原作コミックに描かれている表現に立ち返ろうとチームで話し合いました。

菅井 僕が大切にした部分もマンガバースとマルチバースの差別化の部分です。ただしビジュアルだけではなく、演技の部分でも個性をつけたいと考えました。例えばマンガバースのキャラクターは誇張が多く、リアルでは表現しないような、少しだけ超人に見えるかっこよさがあります。かっこよさを求めるにしても、マンガバースとマルチバースではかっこよさの質が変わりますし、そういった差別化は意識しました。

瀬下 アクション表現においても、基本方針としては、マンガバースならマンガバースならではのアクション、マルチバースならマルチバースならではのアクションを描く、という差別化を意識したんですが、注意しないと「無双の強さ」ってすぐにインフレしてしまいます。そこで、殴り飛ばされた敵が壁を何枚も突き破るからすごいアクションというより、殴られた側のリアクションが絶妙な「やられてる感」が表現できたことで「強さにもいろいろある」という、いわば飽きのこない強さを追いかけました。

TVアニメ『サンダー3』場面カット

菅井 主人公と言っても本質は中学生ですからね。

瀬下 そう。格闘経験のない中学生に突然戦闘スキルが生まれるわけではないんですよ。「ルーザーズ」だった少年たちが「一生懸命」に闘うという印象を大事にしました。本当は殴ることもしたくないし、命を奪うつもりもありません。そういった優しいキャラクターたちがそれでも勇気を振り絞って戦い、そして妹を救うお話なので、そのキャラクターの魅力を見失わないようにしながら、どのようなアクションにするべきか考えました。

――異質なものが同居する難しさですよね。

瀬下 初期段階ではマンガバースを手描きに、マルチバースを3DCGにすることも考えたのですが、制作がものすごく大変になってしまいます。例えば第3話で宇宙人をジャイアントスイングするシーンなど、2D作画と3D作画を合わせこむ作業に大きなコストがかかるんです。その制約の中で、どうすれば原作の、独特の違和感の面白さが表現できるか試行錯誤を重ねました。

TVアニメ『サンダー3』場面カット

――大変といえば「ツヨクナール」もそうですね。武器を出現させる能力のために作らないといけない3Dモデルもあって、大変だったのではないでしょうか。

井手 大変です(笑)。ただものすごく面白いです。登場させる武器はフィクションの存在ですから、その分、負担は少ないんですよ。

あいみょんのマリーゴールドには「感謝しかありません」

TVアニメ『サンダー3』場面カット

――それら大変なことを積み上げて、毎回心を揺さぶる仕上がりになっているのですね。個人的には、(瀬上の)父親が亡くなり、家が潰されて取り乱す母親に胸が締め付けられました。本当に辛かったです。

瀬下 うれしいです。瀬上がいつ泣きだすのかを慎重に検討して大切に作り上げたシーンですし、ああいった重要なストーリーラインは、カットのつなぎ方ひとつひとつにこだわったので、戦闘シーンのような派手さ華やかさはないですが、ドラマでこだわった部分をご評価いただいたのはすごくうれしいです。

――それと「マリーゴールド」がそのまま出ているところに驚きました。

一同:(笑)。

――ゲーム機の名称などは、元ネタから少し変えてますよね。それなのに「ここはそのままなんだ」と(笑)。

瀬下 今回、オープニング・テーマ曲もエンディング・テーマ曲も別の音楽レーベルなのですが、挿入歌の「マリーゴールド」だけ、委員会や関係者諸氏のご理解ご協力で実現できました。

井手 最初は「使えたらいいよね」くらいのノリでしたからね(笑)。

瀬下 電車賃を路上パフォーマンスでまかなうというシーンですが、登場人物たちが突然歌うとなると、皆が普段から聞いている曲じゃないと不自然かなと。それで「マリーゴールドなら皆知ってる感があっていいよね」と盛り上がったのですが、当初「許可は無理でしょ」と。ですから実際に許可をいただいたときは大変驚きました。

TVアニメ『サンダー3』場面カット

――ありがとうございます。それでは最後に読者へメッセージをお願いします。

井手 「ふたば」と「ぷうすけ」は、この先もめちゃめちゃかわいく描けていると思うのでお楽しみに!!

菅井 制作現場に感じるのは、スタッフ全員がこの作品を愛しており、皆前のめりで取り組んでいるということです。ファンの皆さんも安心して見てもらえるのではないかと思いますので、原作コミック、アニメともによろしくお願いします!!

瀬下 とにかく原作が本当に面白いんです。アニメにしたら、やはり面白くなりました。各話が「もう終わり?」と瞬く間に見終わるような展開とクリフハンガーで次回に続きます。今後もご期待ください!!

<放送情報>
フジテレビ 毎週水曜24:45~
関西テレビ 毎週木曜26:15~
アニマックス 毎週土曜22:00~
東海テレビ 毎週土曜25:45~
BSフジ 毎週日曜25:30~
北海道文化放送 毎週木曜24:55~
テレビ西日本 毎週木曜26:15~
福島テレビ 毎週水曜24:45~
Netflixにて配信中

【STAFF】
原作:池田祐輝(講談社「月刊少年マガジン」所載)
総監督:瀬下寛之
監督:井手恵介
副監督:菅井進、リュウナリ
シリーズ構成/脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン原案:恩田尚之
アニメーションキャラクターデザイン:山中純子、もりやまゆうき
アニメーションディレクター:こうじ
プロダクションデザイン:田中直哉、フェルディナンド・パトゥリ
造形監督/光画監督:片塰満則
メカデザイン:帆足タケヒコ
美術監督:亀井勇介、中村圭吾
音響監督:山口貴之
音楽:フレデリック・シャトー、立山秋航
オープニング・テーマ:優里「サンダーボルト」
エンディング・テーマ:音羽-otoha-「しゅるれりら」
企画・プロデュース:スロウカーブ
アニメーション制作:UNEND

【CAST】
手塚ぴょんたろう:鈴代紗弓
吾妻つばめ:川井田夏海
お茶の水ひろし:秋山絵理
手塚ふたば:蜜蜂ほのか
ドク:坂田将吾
瀬上貞一:坂 泰斗
田代涼花:広瀬ゆうき
如月 澪:前川涼子
皇 恭治:石谷春貴

(C)池田祐輝・講談社/「サンダー3」製作委員会

サンダー3(1) (月刊少年マガジンコミックス)
¥792
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
サンダー3(10) (月刊少年マガジンコミックス)
¥792
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

《気賀沢 昌志》

特集

この記事の写真

/