この夏読みたい!ドラマとは違う原作マンガ「みなと商事コインランドリー」の歳の差を越えた“優しさの恋”に心を洗われる【おすすめマンガ手帖】 | アニメ!アニメ!

この夏読みたい!ドラマとは違う原作マンガ「みなと商事コインランドリー」の歳の差を越えた“優しさの恋”に心を洗われる【おすすめマンガ手帖】

未成人の高校生シンと、アラサー男性・湊が、年の差を越えて関係を深めるBLマンガ。湊の過去の後悔とシンの真摯な想いが交錯する中、二人は互いに影響を受け、成長していく。恋愛感情の多面性を丁寧に描いた作品。

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アニメ・マンガに目がないアニメ!アニメ!編集部がまだアニメ化されてないけどおすすめしたいマンガを紹介するコラム<おすすめマンガ手帖>。今回は、桜も散り、茹だるような暑さの夏の足音が聞こえてくる今日この頃。そんな迫り来る季節に向け、酷暑をさっぱり洗い流してくれるような、爽やかで“ゆるキュン”マンガをおすすめしたい。漫画:缶爪さわ、原作:椿ゆずによるBLマンガ『みなと商事コインランドリー』(以下、『みなしょー』)だ。

エアコンもない古びたお店「みなと商事コインランドリー」を祖父から継いだ湊晃(みなとあきら)。アラサーで元社畜だった晃は、今は地元に愛される店をのんびりと営んでいた。そんなある日高校生の香月慎太郎(かつきしんたろう、通称 シン)が客として来店する。歳の差を超えて仲良くなるふたりだったが、晃がゲイであることがふとしたことから慎太郎にバレてしまう。

ゆるキュンBLマンガ原作コンテスト優秀賞受賞作「Wash my heart!」を改題してコミック化した本作は、2022年には草川拓弥&西垣匠主演でTVドラマ化。2023年に放送されたシーズン2は、原作者の椿ゆず提供のオリジナルストーリーで、原作マンガとは異なる展開を迎えた。

※以下の本文には“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意ください。

真摯に描かれる“年齢差”というテーマ

『みなと商事コインランドリー』

『みなと商事コインランドリー』で印象に残るのが、"年齢差"の描きかたである。アラサーの湊とまだ成人していないシン――成人と未成年のラブストーリーには倫理的なハードルが高く立ちはだかるが、本作は精緻な心情描写と人物造形によってそれを乗り越えている。

湊さんは出会った直後からシンの顔を好みだと感じており、好意的ではあるのだが、同時に彼をはっきりと「未成年」と認識。「こいつに手を出したら社会的に死ぬ」とも考えている。逆にシンは、押せ押せで湊にアタックを重ねる。湊はシンのペースに乗せられつつも、未来ある若者の可能性を奪うべきではないと、シンの思いを拒絶する。

湊が慎重になるのは過去のとある経験が起因していた。高校生の頃、担任の佐久間先生のことが好きで卒業の日に勢い余ってキスをしてしまったのだ。そのことを「黒歴史」としてずっと思い悩んでおり、シンが自分の向けている好意もまた「黒歴史」になってしまう類の憧れや感謝に由来するものなのではないかと訝っている。自分自身が年上の男性を好きだったからこそ、自分のようになってほしくないと望む湊。”大人”として、シンの将来のためを思って彼の思いを拒むのだ。

もちろん湊が佐久間先生に抱いていた感情が、”若気の至り”と括られるような非恋愛感情であったわけではないのだと思う。しかし十年経った今も恋愛感情だったのかもはや判別のつかない好意で動いてしまった後悔を抱えているのだ。自分が佐久間先生側――未成年から好意を抱かれる大人になったとき、シンが将来抱えうる後悔を考えずにはいられない。だから、悶々とした好意と後悔に囚われつづける(かもしれない)シンの未来を断ち切るために彼との距離を置こうとする湊は、自分自身の“恋愛”の感情を一切考慮に入れていない。その姿は、年齢の異なる二人の関係に現実味と奥行きを与えている。

まっすぐな想いが、心を動かす

しかし、シンはそれでもまっすぐな想いを湊さんに伝えつづける。佐久間先生にはキスをするだけで逃げ出してしまった湊とは異なり、シンは好意をはっきり言葉にして伝えつづける。自分の感情を大切にすること、そしてそれをはっきり表現する勇気と強さに胸を撃たれた湊は、ついに佐久間先生に十年越しの告白をするのだ。

湊とシンのキャラクター造形は、さまざまな人間関係や人生経験から奥手な現実主義者かつ和を乱さないコミュニケーションスキルを得た“大人”の湊さんと、まだ経験が浅いからこそなににでも素直にぶつかれて不機嫌も隠さない"子ども"のシン、と対照的に描かれている。互いが互いに持っていないものから影響を受けてゆく様子は、他人との関わりによって双方向に価値観がゆれるというコミュニケーションの悦びそのものである。

“ふり”が本物になる瞬間

『みなと商事コインランドリー』

いわゆるサブカプとして登場するキャラクターも魅力的だ。シンのクラスメイト 英明日香(はなぶさあすか)は、幼なじみの佐久間柊(さくましゅう)に恋しているのだが、恋愛に疎い柊は明日香の好意に気づいていない。ふたりは過去、一緒に世界旅行に出たことがあり、そのときにナンパ対策で付き合っているふりをしたことから明日香は好意を抱きはじめた。柊からするとあくまでもナンパ避けでしかなかったのだが、その"ふり"は明日香にとって本物の感情になっていった。

“ふり”が本物になるという表現は、物語の冒頭にも登場する。出会ったばかりの湊にシンは「『俺はシンが好きです』って言って。言ったら本当になるかもしれねぇから」と言う。恋愛感情が自明なものではなく、”ふり”や発した言葉からも生まれ得るという『みなしょー』に通底する価値観は、人間が抱く好意の幅の広さやグラデーションを示している。

『みなしょー』はそれぞれの人生経験にもとづいた価値観でぶつかり合いながらも、相互に影響を受け、独自の人間関係を構築してゆくゆたかで愛に満ちあふれたマンガである。暑い夏のお供にぜひ読んでみてほしい。



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《丹渡実夢》

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