1月より放送が開始されたTVアニメ『呪術廻戦』第3期「死滅回遊」編。その幕開けを飾るオープニング映像が、ファンの間で大きな衝撃を呼んでいる。今回のオープニングテーマは、King Gnuによる「AIZO」。これまでのシリーズでも数々の名曲を世に送り出してきた彼らによる新曲に乗せて描かれるのは、過酷なデスゲームの開幕と、逃れられない悲劇の予兆だ。
◆羂索の「掌の上」で踊らされる絶望のゲーム
冒頭、赤黒い月に照らされた東京を一人歩く虎杖悠仁の姿が映し出されるが、その月が次第に羂索の瞳へと変化する演出は、まさに死滅回遊が彼の掌の上で転がされているゲームであることを象徴している。羂索によって仕組まれたこの呪術テロは、日本全国10ヵ所の結界(コロニー)を舞台に、術師たちが互いに殺し合うことで発生する呪力を抽出することを目的としている。
映像内では、レジィ・スターや石流龍といった過去の術師たち、そして現代で目醒めた日車寛見ら参加者の姿が次々と流れ、彼らが羂索の「マーキング」によって常に監視下にある状況がメタプレイヤー的な視点で表現された。コロニーを黒い筒に見立て、それを羂索が覗き込む姿は、参加者が監視下から逃れられない残酷なゲームを強いられている事実を、端的に示す非常に秀逸な演出だったと言えるだろう。
◆散りばめられた「夜蛾とパンダの幸せな記憶」という残酷
特に視聴者の情緒を揺さぶるのが、夜蛾正道学長とパンダに焦点を当てた一連のカットだ。映像内ではパンダの無邪気なかわいらしさと、夜道に一人立つ夜蛾学長が纏う圧倒的な孤独感の緩急が、胸を締め付けるようなコントラストで描かれている。子どもに向ける優しい目線の夜蛾学長。そして崩れる積み木、その直後に夜蛾が作り上げた“呪骸”たちが住む森が黒く描かれ、そこでパンダが彷徨っている。「父」を失った後の喪失感が痛烈に表現され、原作読者であれば、誰もが胸を締め付けられた作中屈指の号泣エピソード「パンダだって」に向け、制作陣が意図的に「泣かせ」にかかっているのは明白だろう。
他にも、映像には夜蛾とパンダが並んで座る2ショットに加え、日下部篤也の妹が息子のタケルを幸せそうに抱いている姿がモノクロで挿入されている。日下部にとって夜蛾は、亡くした甥の魂を複製した呪骸を作り、妹を絶望の淵から救ってくれた恩人だ。こうした呪骸を通じた深い絆や、幸福な記憶の断片が描かれることこそ、これから待ち受ける“最悪の展開”へのカウントダウンに他ならない。
パンダという突然変異呪骸に宿った「心」と、それを生み出した夜蛾の愛情、そして彼らに救われた日下部一家の想い。それらがアニメ版ではより重層的なボリュームを持って描かれたOPは、絶望感が倍増させられる制作サイドの“予告”だったのかもしれない。
◆仙台結界…加速する戦いの連鎖
また、映像には「死滅回遊」の複雑な人間模様と、それに翻弄されるキャラクターたちの苦悩が、過去最大級の情報密度で詰め込まれている。乙骨憂太がリカを完全顕現させて戦う仙台結界の激闘や、法の理不尽に絶望した日車の象徴である六法全書が焼き尽くされるシーンなど、各結界の主要な戦闘シーンも網羅。これから登場するインパクト抜群の敵キャラもくまなく登場させる怒涛の映像は、物語の重厚さを0.1秒にも満たないカットにまで凝縮させている。
◆「自分を洗い流す虎杖」と「嘲笑う宿儺」のメタファー
一方で、主人公である虎杖悠仁の精神状態を暗示する演出も、極めて救いのない形で描写されている。48話冒頭で手の汚れを落とそうとする虎杖は、渋谷事変で宿儺が犯した虐殺をあたかも自分の罪だと認識し、必死に洗い流そうとする姿は実に痛々しい。OP映像に洗面所の鏡越しに虎杖を嘲笑する宿儺の顔が挟まれたことで、虎杖がどれほど足掻いてもその呪縛からは逃れられないという「救いのなさ」が浮き彫りとなっている。
◆羂索に始まり羂索に終わる「地獄の開幕」
今回のオープニング映像は、徹底して「羂索に始まり、羂索に終わる」構成となっている。OP映像で何度か登場する爆弾は、今後描かれる“羂索の爆弾”を表現したものだろう。
過去最大密度の情報量にファンの期待値も爆上げとなっているが、第3期がただの能力バトルを超えた「心を揺さぶる物語」になることを予感させる地獄の開幕映像であった。
(C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会



