1985年から1987年にかけてフジテレビ系列にて放送された旧アニメ版の『ハイスクール!奇面組』。そのオープニング曲(以下OP)とエンディング曲(以下ED)を担当したのは、当時、人気絶頂だったアイドルグループ「おニャン子クラブ」から派生したユニット「うしろゆびさされ組」でした。
内容はギャグアニメにも関わらず、それら楽曲は「恋」をテーマにしたものが多く、またOP・ED映像もおもに女性キャラクターに焦点を当てるという、本来なら「解釈違い」の要素です。それにも関わらず楽曲は軒並みヒットに。OP・ED映像とともにアニメ版『奇面組』に“なくてはならない存在”となりました。
受け入れられた理由は「人気コンテンツ同士の衝撃コラボ」と「アニメスタッフの演出力」。
本稿ではその当時を“いちファンの目線”で振り返りつつ、ヒットの背景を探りたいと思います。
◆あなたの一番好きな『奇面組』ソングは?
1985年に放送された『ハイスクール!奇面組』の旧アニメシリーズの主題歌はOPが全7曲、EDが全8曲。基本的に河川唯をはじめとする女性キャラクターの視点で描かれた映像が特徴です。
<歴代OP>
「うしろゆびさされ組」(うしろゆびさされ組)
「象さんのすきゃんてぃ」(うしろゆびさされ組)
「渚の『・・・・・』(なぎさのかぎかっこ)」(うしろゆびさされ組)
「技ありっ!」(うしろゆびさされ組)
「かしこ」(うしろゆびさされ組)
「時の河を越えて」(うしろ髪ひかれ隊)
「あなたを知りたい」(うしろ髪ひかれ隊)
<歴代ED>
「女学生の決意」(うしろゆびさされ組)
「バナナの涙」(うしろゆびさされ組)
「猫舌ごころも恋のうち」(うしろゆびさされ組)
「のっとおんりぃ★ばっとおるそう」(うしろゆびさされ組)
「ちょっと辛いあいつ」(息っ子クラブ)
「ピタゴラスをぶっとばせ」(うしろゆびさされ組)
「うしろ髪ひかれたい」(うしろ髪ひかれ隊)
「立つ鳥跡を濁さず」(うしろ髪ひかれ隊)
アニメの荒唐無稽な世界観を“リアル”とつないだことで視聴者に親近感を生ませることに成功
たとえば初代OPの「うしろゆびさされ組」は、「男の趣味が悪い」と言われても恋心を貫く乙女心を表現した歌詞です。まさに「後ろ指をさされても揺るがない恋心」。「奇面組」にぴったりの歌詞です。そのためOP映像も唯の学校生活を描いたものとなっていました。原作マンガでもラブコメ要素はありますが、ここまでドラマチックに描かれることはほぼなく、アニメスタッフの演出力の賜物と言えるでしょう。
また4代目のED「のっとおんりぃ★ばっとおるそう」では、女性キャラクター6名がそれぞれラブレターを渡すようすを順番に描きました。たとえば恥ずかしそうに下駄箱に忍ばせたり、果たし状のようにドアに縫い付けたり、複数のラブレターを風船に取り付けてバラまいたり……。各キャラクターの個性がうかがえる楽しい内容であり、『3年奇面組』初期のストーリー構成と似ているところにもニヤリとしました。
そもそも当時、人気絶頂のアイドルがテレビアニメの主題歌を担当するということ自体が珍しく、『ハイスクール!奇面組』と「おニャン子クラブ」のコラボにはとても驚かされました。初代OP「うしろゆびさされ組」もアイドルとのコラボを意識してなのか、前述のように唯の日常を描くとともに、メインキャラクターたちがライブステージを演奏するという実在性を強く打ち出した映像に。その強烈なインパクトは視聴者に大きな衝撃を与えました。
※唯と千絵のツインボーカルに加え、奇面組がバックバンドを担当する学園祭のステージのようなイメージ。
『奇面組』の荒唐無稽な世界観を、ある意味メタな手法で“リアル”とつないだことで、視聴者は登場キャラクターにさらなる親近感を抱いたというわけです。
それではなぜ「うしろゆびさされ組」(おニャン子クラブ)が楽曲を担当することになったのか? 実は「おニャン子クラブ」の拠点となるバラエティ番組「夕やけニャンニャン」側からのオファーが発端でした。
「夕やけニャンニャン」とは1985年にスタートした夕方のバラエティで、フジテレビの深夜番組「オールナイトフジ」から派生した番組として人気を博しました。初代司会者は片岡鶴太郎さん。「とんねるず」も出演しており、番組の進行を破壊するような破天荒な芸風で当時の若者から絶大な支持を受けていました。
「オールナイトフジ」では多くの女子大学生が出演しアイドル化していましたが、「夕やけニャンニャン」ではオーディションなどで集められた学生たちが「セーラー服を脱がさないで」で歌唱デビュー。1980年代といえば完璧なアイドル像が世間一般のイメージでしたが、「おニャン子クラブ」ではあえて素人っぽさを打ち出し、親しみやすさで人気を獲得したわけです。もちろん歌だけでなくバラエティ番組やドラマなどでも引っ張りだこでした。
※「オールナイトフジ」の女子大生アイドルグループ「オールナイターズ」が先にデビューし、素人っぽさで人気ではありましたが、夕方の時間帯という一般層に訴えかけやすい状況もあり「おニャン子クラブ」が爆発的な人気を獲得しました。なお当時は子供の人口が多く、夕方にアニメ番組を放送していた時代。そのあたりの事情からも時代を感じます。
『ハイスクール!奇面組』のテレビアニメ化が決定した際、「おニャン子クラブ」の売り込みの意図があったのか、「夕やけニャンニャン」側から楽曲を担当したいとのオファーがあったそうです。そこから『ハイスクール!奇面組』のためのユニットとして高井麻巳子さんと岩井由紀子さんによる「うしろゆびさされ組」が結成されました。
楽曲制作を担当するのは、ヒットメーカーの秋元康さんと後藤次利さんのゴールデンコンビ(一部異なる)。当時のアイドルソングやアニメソングとは異なる、個性あふれる歌詞や曲調もインパクトがありました。
生稲晃子さん、斉藤満喜子さん、工藤静香さんによる「うしろ髪ひかれ隊」へバトン
第65話からは、高井麻巳子さんの「おニャン子クラブ」卒業に伴いOPとEDを「うしろ髪ひかれ隊」が担当。個性的な歌詞は次第に丸くなっていきましたが、「うしろ髪ひかれ隊」の頃になると、さらに大人びたイメージへと移行していくことになります。
※「うしろ髪ひかれ隊」のメンバーは、生稲晃子さん、斉藤満喜子さん、そしてなんと工藤静香さん!
そんな1985年版の『ハイスクール!奇面組』ですが、1987年8月に「夕やけニャンニャン」が最終回を迎えると、まるで歩調を合わせるかのように1987年9月に全86話の放送を終了することに。1985年版の『ハイスクール!奇面組』は「おニャン子クラブ」とともにあり、その相乗効果で人気がさらなるものになったと思っても間違いではないでしょう。
なお「おニャン子クラブ」ではソロ活動などを理由に“卒業”することが定番となり、それが後のハロプロ、AKB、そしてVTuberへと受け継がれています。まさに現代グループアイドルの礎のような存在でした。
このように歴史を紐解いてみると、いかに1985年版『ハイスクール!奇面組』が奇跡のテレビアニメだったか感じられるはず。もちろん新沢基栄さんの原作マンガのおもしろさが前提ではあるものの、“解釈違い”が“解釈違い”で終わらず、さらなる魅力に繋がったのは当時関わったすべての関係者の熱い想いの賜物でしょう。
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2026年1月9日(金)よりフジテレビ「ノイタミナ」枠で令和版『ハイスクール!奇面組』を放送中。

OPテーマはBREIMENの「ファンキースパイス feat. TOMOO」、EDテーマは離婚伝説の「ステキッ!!」がそれぞれ担当しています。



