アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2026年1月号には、『アルゴリズム』をリリースした安野希世乃が登場。
アーティストとして新境地となるナンバー
――表題曲の「アルゴリズム」は、テレビアニメ『嘆きの亡霊は引退したい』第2クールのOPテーマです。強さを感じさせるナンバーですね。
アニソンらしい、バンド演奏が光る曲ですよね。最初に曲をいただいたときは、「私が歌っていいのかな」と感じたくらい、これまでに歌ってきた曲とは違ったテイストだなと思ったんです。だからこそ、どんな歌声を求められているのかを考え、なかなか答えが出なかった曲でもありました。
――歌声の方向性はどの段階で決めたのですか?
キーチェックのときに、音楽プロデューサーの福田正夫さんと相談しながらイメージを作りました。じつは、当初は歌詞のカッコ内に入っているフレーズも、主メロとして私が歌唱する予定だったんですが、息継ぎが難しく、がんばって歌おうとすると、オケで求められている力強い歌唱ができなくなってしまったので、コーラス扱いになりました。結果的には、掛け合い風になったことで、ロックっぽさが増したのではないかとポジティブに捉えています。また、ライブなどで歌唱する際、皆さんにも歌っていただけるポイントにもなって、よかったなと思います。
――キーは、やや低めですよね。
私の声質で楽曲に負けないパワフルさを表現するためには、もう少し重めのキーのほうがいいのではないかとなり、キーを当初の音より3音ほど下げたんです。高い音を力強く歌うときは頭頂に意識を置くことが多いのですが、そうすると、どうしても声のもととなるお腹から遠ざかってしまうので、繊細さが必要になるんです。でも、今回はキーを低めにしたので、照準を合わせやすくなった感覚でした。
――楽曲としては、決して明るいだけではないナンバーですが、声色ではどんな表現を目指しましたか?
祈りや願いを込めたいと思って歌いました。この曲はシンプルなことを伝えているように見えて、全部がフェイクであるという矛盾を抱えているんですね。カッコつけた理想の自分を表現しているので、きちんと歌いつつも、その裏にある矛盾した思いが浮かんでくればいいなと思っていました。
――主題歌となっている『嘆きの亡霊は引退したい』の主人公・クライがまさにそんな思いを抱えていますね。
私なりの解釈ではありますが、この歌の主人公は、虚像を完璧に作り上げ、「こうありたい自分」を、力を込めて高らかに歌っているというイメージでした。でも、その裏に、じつはそうではないことをにじませている。歌う側としても、虚勢を張ってこの物語を演じ、歌いきることを目指しました。
――アニメでは、物語が進む最中にOPが流れますよね。
第1クールのときから、OPへの入り方がとてもオシャレですよね。楽曲がかかっているときにセリフが入ったりもして、作品と楽曲が溶け合うところを目指しているのだと感じていました。2つとして同じものはないOPになっているので、今後、どんな形で流れるのか、私も楽しみにしています。
――テレビサイズには、フルにはないピアノのイントロが追加されていますね。
じつは、ピアノは私のレコーディングが終わった後に追加されたフレーズなんです。アニメでしか聞けないので、ぜひ楽しんでいただければと思います。
――安野さんの思うフルサイズだからこその魅力は?
最後まで疾走感を失わず、隙がないところです。ほしいところにほしいフレーズが入ってきて、幾何学的なレベルで最初から終わりまで、美しいナンバーになっていると感じています。今回、演奏をYOURNESSさんが担当してくださっているのですが、バンドレコーディングの日は皆さん勢ぞろいでした。もちろん、ブースにはおひとりずつ入るのですが、まるで家族のような和やかさを感じ、これこそがバンドの空気なのだと、そのキラキラした雰囲気にドキドキしました。そして、私もこの作り手の一員となって歌うんだと、いい意味での緊張感が生まれました。
――初回生産限定盤には、「アルゴリズム」のミュージックビデオ(MV)を収録したBlu-rayも同梱されますが、撮影の思い出を教えてください。
楽曲のレコーディングが去年の冬ごろにあり、MVの撮影は今年の夏でした。撮影監督も楽曲の持つ疾走感から、爽やかな映像をイメージしてくださっていたのでロケが多かったのですが、まずとても暑かったです(笑)。全体の構成としては、街中を昼夜関係なく駆け抜ける白い衣装の私がいて、もうひとり、本当は逃げたい、弱いものを抱えた黒い衣装の私がいる。強くありたい光の私と、隠れて引きこもっていたい闇の私が出会い、融合して力強く舞う映像になっています。今回は、光と闇、とハッキリ分かれた人物を演じるので、衣装だけでなく表情も明確に違ったほうがいいだろうということで、白い衣装のときは力強く晴れやかで、黒い衣装のときは迷いがありなかなか笑顔を見せないように意識しました。ただ、油断すると笑ってしまいがちで、白い衣装のときも監督から「もっと力強く」とディレクションを受けていたほどなので、自分の二面性をしっかり演じることを心掛けていきました。

――カップリング曲の「Re:fresh」は、2024年3月に配信リリースされた楽曲ですね。
作詞を私が担当したのですが、いま聞くと、どのフレーズを使うかで迷ったことも懐かしく思い出します。でも、かなり練り上げたので、よくがんばったなと感じますし、自分の作詞の流儀がひとつの形になった曲だったという印象もあります。川崎智哉さんが作ってくださった曲を聞いたとき、そのドラマティックさからシーンがすぐに浮かんだんですね。そのイメージをもとに、曲と足並みを揃えて、歌いたいメッセージや気持ちを、純度高く届けられたと感じています。私らしい、元気印の王道をいく楽曲だと思いますので、シンプルに悩まずに聞いていただけたら、何かひとつ、ビタミンを受け取ってもらえるのではないかと思います。
――そんなテイストの違う2曲が入ったシングルですが、どんな1枚になったと感じていますか?
ある意味で、奇跡の1枚になったなと思います。「アルゴリズム」は、表向きは大人の顔をしてリーダーとして振る舞っているクライさんの姿に近しいですが、「Re:fresh」は、大変なことはあるけれど、一旦ペルソナ(仮面)を脱ぎ捨てて、自分の好きな世界、好きな人たちと笑い合おうと、好きを全肯定している曲で。「怠けたい、楽しいことだけしたい」というクライさんの脳天気な部分を表しているようにも感じられるんです。これは完全に偶然ですが、クライさんの表も裏も表現できた、お得な1枚になったなと感じています。
――安野さんは『嘆きの亡霊は引退したい』でアルトバラン役を担当していますが、どんなキャラクターですか?
アルトバランはカッコいいビジュアルですが、クライさんにはペースを乱されてしまうキャラクターです。アルトバランと関わることで、クライさんのマイペースさがより際立って見えると思うので、注目していただきたいです。また、じつは第19話に登場した温泉ドラゴン役も担当させていただきました。基本的にはセリフではなく鳴き声なのですが、監督からOPテーマのメロディを鳴き声で表現してく[小森1]ださいと言われて(笑)。イントロのピアノの旋律部分から鳴き声で表現したので、実際の映像でどう使われたのかも見ていただけたらと思います。
――では、最後に読者へメッセージをお願いします。
安野希世乃のシングルとしては、新境地の1枚になりました。「アルゴリズム」はいい意味でこれまでの私とは違ったタイプの曲ですが、アニソンを愛する皆さんには、刺さる方も多くいらっしゃるのではないかと思います。自分自身、王道をいくアニソンらしいアニソンを歌ってこなかったので新しいチャレンジになりましたし、聞いていても合いの手を入れても気持ちのいい、フェスやライブで聞いても楽しい楽曲になったと感じます。このタイプの楽曲を歌う身としては新人の心持ちですので、どこかの会場で聞く機会がありましたら、どうか熱気をぶつけて曲を支えていただけたらうれしいです。皆さんがいて完成する楽曲だと思っていますので、たくさん聞いて、一緒に歌ってください!

Profile
やすの・きよの/7月9日生まれ。宮城県出身。エイベックス・ピクチャーズ所属。
2017年にミニアルバム『涙。』でソロアーティスト活動を開始。これまでに、シングル4枚、アルバム1枚、ミニアルバム4枚をリリース。
Information
『安野希世乃5th LIVEツアー2025~僕らの、雨が、やむまで。~』が開催中。
チケット購入方法などの詳細は、公式webサイト【https://avex.jp/kiyono-yasuno/】をチェック。
「アルゴリズム」
発売中
DIVE II entertainment
初回生産限定盤2800円(税込)
通常盤、期間限定アニメ盤各1650円(税込)
表題曲はテレビアニメ『嘆きの亡霊は引退したい』第2クールのOPテーマ。ロックバンド・YOURNESSのメンバー・古閑翔平が作編曲を手がけた、激しいロックチューンだ。カップリングには、2024年3月に配信限定でリリースした「Re:fresh」をCDに初収録する。

