2025年12月5日より公開中の実写映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』は、2021年にマガジンポケットにて連載が開始された、にいさとるによる同名マンガが原作。ケンカで風鈴高校のてっぺんを目指す高校生・桜遥が、街を守る「防風鈴(ぼうふうりん)」と呼ばれる集団と出会い、仲間とともに街を守るために戦う姿を描いている。
そんな主人公・桜遥と同じく風鈴高校の1年生で、涼しい笑みを浮かべて誰にでも優しいけれど、あまり本心を見せず謎めいた存在の蘇枋隼飛。アニメ!アニメ!では、そんな蘇枋を実写で演じた綱啓永と、アニメで声優を務めた島崎信長(※)に独占インタビューを実施。2人が感じる蘇枋の魅力を聞いたほか、こんな機会だからこその「お互いに聞いてみたいこと」という質問をぶつけてみた。※崎はたつさき表記

[取材・文=米田果織 撮影=You Ishii]
■俳優と声優…“蘇枋隼飛”を演じる上での共通点
――まず、島崎さんから実写映画の感想を聞かせていただけますか。
島崎:舞台となる街「東風商店街」の造形がしっかり作り込まれていて、さらに、そこに暮らす人を演じる役者さんたちがとても生き生きしていて、「なんて忠実に再現されているんだ!」と驚きました。街を守ることを描いた作品なので、アニメにしても実写にしても、そこがしっかりしていないと世界観に没入できないと思っていました。そこが忠実に仕上げられていたことと、また演じる俳優さんたちが作り上げたキャラクター像、そしてスタッフさんたちの熱量が伝わってきて、一気に映画の世界に惹き込まれてしまいました。
――私も拝見させてもらいましたが、島崎さんも言ったように、街の完成度に驚かされました。
綱:僕も初めてセットを見たときは、「これどうやって再現したの!?」とかなり驚きました。実際にある街並みを借りて再現していると聞きましたが、どこをどうやってあそこまで仕上げたのか、キャストでさえも全部把握できていないと思います(笑)。
島崎:「喫茶ポトス」の店内の再現度とかすごいよね! どこまでセットなのか、実際にあの形のおしゃれなカフェだったのか、めちゃくちゃ気になっちゃいました(笑)。
綱:完全に街を“WIND BREAKERの世界”にしてくれていましたよね。実写作品をお届けする上で僕が大事だと思っているのは、衣装、ヘアメイク、そして美術だと思っています。それが演技にとてつもない力をくれるので、僕含めキャスト全員が「演じやすい環境を作ってくれた」と美術の皆さんに感謝しています。

――そんな綱さんは、実写映画に出演が決まる前から『WIND BREAKER』のファンだったそうですね。アニメと原作のどちらから入られたのでしょうか?
綱:実はアニメからなんです。
島崎:えっ、そうなんだ!
綱:もちろん原作も読みましたが、最初はアニメから。そして、島崎さんの演技も相まって、そのときから蘇枋が一番好きなキャラクターでした。
島崎:うわ、うれしい……!
――最初に『WIND BREAKER』の物語に触れた際の印象を聞かせてください。
綱:キャラクターたちが個性豊かで、全員に魅力がありますよね。チームのバランスやキャラクター同士の関係性がしっかりと描かれていて、また男子なら誰しも心奪われるであろうケンカのシーンも。映画で描かれる防風鈴vs獅子頭連のやりあいも、見ていてたぎるものがありました。
島崎:わかるなぁ~(笑)。
――蘇枋が一番好きになった理由などはあるのでしょうか?
綱:やっぱりケンカのスタイルですね。他のキャラクターと明確な差があるというか、カンフーや合気道を彷彿とさせる独特の闘い方をするじゃないですか。そこにとくに魅力を感じました。僕以外にも、あの闘い方を見て蘇枋のファンになった人はたくさんいると思います。
――島崎さんからも、蘇枋の魅力に感じる部分を聞きたいです。
島崎:これはたぶん声優ならではのクセなのですが、外見的な部分より、内面を見てしまうんですよね。実写だと見た目やスタイル、所作など全部を一人の俳優さんが受け持つことになりますが、声優は声だけなので。感情の表現に特化する仕事なので、より内面に集中してしまうんです。蘇枋のこともそうやって見ていると「クールな顔して内側は熱いやつ」という印象を持ちました。だからこそ、桜や楡井と共鳴するんだと思うんです。涼しい顔をしていて、奥にはグツグツとしたものを宿しているところが好きですね。

――蘇枋を演じるにあたり、どんなことを大切にしましたか?
綱:萩原健太郎監督と話し合い、なぜ蘇枋が防風鈴に来たのかなど、原作に描かれていないバックボーンを作りました。原作のにい先生からもヒントをいただいたりして、「このシーンはこう感じているからこのセリフが出る」と1つ1つ大切に考えることで、蘇枋を表現できたように感じています。
島崎:描かれていない部分を補完して演じるって、本当に難しいですよね。僕もよく悩みます。
綱:声優さんでも同じようなことに悩むことがあるんですか?
島崎:ありますよ! これは蘇枋に限らず、他の作品・キャラクターにも言えることです。原作で描かれていなくても、「きっとこの間にこんなことがあったんだろうな」「こう思ったんだろうな」とそのキャラクターの人生を埋めていかないと、セリフにもキャラクターにも説得力が出なくなります。そこを大事にして演じないといけないということは、俳優さんも声優さんも共通していますね。

