ガンダムシリーズの最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』が大ヒットを記録しています。テレビアニメ作品の先行上映としては異例と言えるほどの話題を集めている本作を監督したのは、鶴巻和哉監督。これまで、ガイナックスとスタジオカラーの数々の名作に関わり、自らも監督として作品を発表してきた鶴巻監督のキャリアを振り返ってみましょう。
◆『エヴァ』の副監督、監督作『フリクリ』で話題に
鶴巻監督は、スタジオジャイアンツでアニメーターとしてキャリアをスタートさせました。『ゲゲゲの鬼太郎』などさまざまな作品に原画として参加し、『ふしぎの海のナディア』(1990年)からガイナックスに入社、作画監督や特典映像の演出などで実力を発揮します。
1995年放送の『新世紀エヴァンゲリオン』では副監督の1人として、人気シリーズを支えます。その後、2000年に発表されたOVA作品『フリクリ』で本格的に監督としてデビュー。ポップなセンスと破天荒なエネルギーに満ちた作風で話題となり、高い評価を獲得します。
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その後、2004年にガイナックス20周年を記念したOVA作品『トップをねらえ2!』を監督。1988年に発表された第1作の続編でありながら、オリジナルの設定もふんだんに盛り込んだ宇宙SFアニメに仕上がっています。
この後、庵野秀明氏が新会社スタジオカラーが設立すると、鶴巻監督も参加。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』(2007年~2021年)シリーズで、庵野秀明総監督の下、監督の1人として大きな役割を果たすことになります。
テレビアニメ『月面兎兵器ミーナ』(2007年)のシリーズ原案を務めるなど、他社の作品にもさまざまな形で関わりつつ、2017年に『龍の歯医者』を前後編版(各話45分)を発表。こちらはNHKで放送されました。
そして、2024年『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の監督に就任したことが発表され、その先行上映版である『-Beginning-』が現在大ヒット中。これまで数々の作品を支えてきた鶴巻監督にあらためて注目が集まっています。
◆鶴巻監督の代表作
鶴巻監督の主要作品はどれも個性的。SFへの傾倒と縦横無尽で自由なアニメーション作画を駆使した作風が特徴と言えます。主な監督作品を振り返ってみましょう。
フリクリ
とある地方都市に暮らす小学校6年生のナオ太は、ベスパになる謎の女ハル子との出会いによって、不思議な出来事に巻き込まれていきます。額からロボットが生えてきたり、奇妙な生命体との戦いに巻き込まれたりする一方で、町内は変わらず日常的な空気が流れています。ナオ太もそんな日常を過ごしながら、兄の恋人だったマミ美やクラスメイトのニナモリ・エリとの関係に悩んだりするなど、情感溢れる日常描写も魅力。縦横無尽なアイディアを繰り出し、アニメーションらしい飛躍する描写を数多く盛り込んだ、破天荒な展開が魅力の本作は、OVAの名作として伝説的な作品としてアニメファンに記憶されています。
また、『フリクリ』25周年記念として、アニメ全6話をYouTubeにて2025年2月28日ま期間限定公開しているので、ぜひチェックしてみてください。
トップをねらえ2!
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SF好きとして知られる鶴巻監督が、そのセンスを全開にした作品。少女型アンドロイドのノノは、宇宙パイロットになることを目指して家を飛び出します。バイト先でバスターマシンに乗って宇宙怪獣と戦う少女ラルクと出会うと、自らも宇宙怪獣との戦いに身を投じていくのです。バスターマシンに乗れるのは、大人になると失われてしまう特殊能力を持つトップレスと呼ばれる者だけ。ノノはアンドロイドであるためトップレス能力を持たないのですが、彼女の出自には宇宙怪獣やバスターマシンに関する重大な秘密が隠されていたのでした。
ブラックホールや変動重力源など、かなり濃いSF要素が物語の中で重要な要素として描かれています。とはいえ、物語としてはガール・ミーツ・ガールのストレートなもので骨格はわかりやすく、女の子同士の絆が感動的に描かれてもいる作品。宇宙でのスケールの大きいバトル描写も必見です。
龍の歯医者
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日本アニメ(ーター)見本市で発表した短編作品から生まれた長編アニメで、ミステリ・SF作家の舞城王太郎と組んだバトルファンタジー。龍を虫歯菌から守護する職能集団「龍の歯医者」の岸井野ノ子と、龍の歯から蘇った少年ベルを中心に、戦うことや生きることの意味を問いかける作品。空飛ぶ龍を戦争に活用しようとする勢力と隣国との争いの中で、敵国の人間や歯医者の仲間たち、愛する人を失った悲しみから龍の歯医者を殺そうとする者たちなどが織りなす人間ドラマが魅力。空飛ぶ巨大な龍の描写のスケール感と、少年と少女の生きる意味を問いかける冒険が争いの中で描かれる切なくも美しい作品です。
機動戦士Gundam GQuuuuuuX
鶴巻監督が満を持して放つガンダムシリーズの最新作。とあるスペースコロニーで生活する少女アマテ・ユズリハ(マチュ)は、戦争難民で運び屋として生きる少女ニャアンと出会い、モビルスーツ同士の戦いに巻き込まれていきます。偶然も重なりモビルスーツに乗り込んだマチュは、不思議な感応能力を発揮し(本人はキラキラと呼ぶ)、赤いガンダムに乗る少年シュウジと心を通わせ、非合法なモビルスーツ同士の決闘競技「グランバトル」へと挑んでいくのです。空間を縦横無尽に用いたモビルスーツバトルは迫力満点。シャリア・ブルなど『機動戦士ガンダム』で登場したキャラクターが重要人物として登場するなど、従来のファンを沸かせる要素をふんだんに持ちつつも、キャラクターデザインなどは新鮮さに溢れています。
そのほか、鶴巻監督は『ふしぎの海のナディア』のパッケージの映像特典「ナディア おまけ劇場」や、『トップをねらえ!』のLDディスクの特典「新・トップをねらえ!科学講座」といった作品も監督しています。また、日本アニメ(ーター)見本市で『I can Friday by day!』などの短編作品も発表しています。
アニメーターとして、演出家として、これまで数多くの作品で素晴らしい仕事を残してきた鶴巻監督ですが、庵野秀明氏という巨大な存在に隠れがちで充分に日の目を見てこなかったと言えます。『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』によって、いよいよ鶴巻監督に本格的にスポットが当たる日が来たと言えるでしょう。本放送でどのような内容を見せてくれるのか、今から楽しみです。
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