映画「デデデデ 後章」浅野いにお描き下ろしの結末は!? 原作から変わった3つのポイント | アニメ!アニメ!

映画「デデデデ 後章」浅野いにお描き下ろしの結末は!? 原作から変わった3つのポイント

浅野いにおの同名マンガを原作にした劇場アニメ『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション(以下デデデデ)』の後章が公開されました。前章が口コミで絶賛が相次ぎ期待値が膨らんでいたのか、後章の公開初日3日間の興行収入は前章の139%の成績を記録しています。

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『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』後章ポスタービジュアル(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』後章ポスタービジュアル(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee 全 14 枚 拡大写真

浅野いにおの同名マンガを原作にした劇場アニメ『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション(以下デデデデ)』の後章が公開されました。前章が口コミで絶賛が相次ぎ期待値が膨らんでいたのか、後章の公開初日3日間の興行収入は前章の139%の成績を記録しています。

後章は、プロモーション段階で原作とは異なる結末になると明かされていました。原作者の浅野先生が映画用に描きおろしたネームから作られた結末だそうで、原作準拠を求められることが多い昨今、珍しいことですが、実際にどんな違いがあるのか、ネタバレありで解説したいと思います。

※結末に触れるネタバレがあります。ご注意ください。

■前章―構成を大幅に入れ替えた脚本に

(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

映画『デデデデ 前章』は、概ね原作通りの展開と描写でしたが、構成を大きく変更している箇所がありました。それは、おんたんと門出の過去のパートが描かれたこと。原作では後半の7巻から描かれる小学生時代の一部のエピソードを前章に持ってきて、おんたんが別の並行世界からやってきてことがほのめかされ、どうやらその記憶も失っているらしいことが描かれます。

小学校時代のおんたんは“おとなしい性格”で、門出は“強気な性格”でした。2人は教室で浮いた存在でいじめも受けていましたが、夏期講習の最中に侵略者を偶然助けたことで仲良くなります。そして、侵略者の秘密道具を駆使して世の中を「良く」しようとするのですが、その正義が暴走した結果、門出に悲劇が訪れることが描かれました。

このエピソードが前章で登場したことで、本作に別の並行世界があることが示唆され、物語のスケール感を出しています。そして、その平行世界の謎をフックにして、後章の期待感に繋げています。

■後章はおんたん・門出・大場をフォーカス

(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

多くの謎と伏線を散りばめた前章を受けて、後章はそれを一気に回収しながら物語が展開していきます。かなり情報量が多いこともあったためか、後章では原作よりも登場人物を減らしているのが特徴です。群像劇のような趣きがあった原作に比べて、結果として、おんたんと門出、大場のメインキャラクター3人の関係性によりフォーカスされた内容となっています。

例えば、日本オタクのアメリカ人たちは登場しません。それから、小比類巻が助ける「プロ弱者」の女性も出番がなくなっています(実は1カットだけ密かに描かれていますが)。ビッグコミックスピリッツ編集部の描写もないので、花沢健吾先生も出てきません。登場するサブキャラクターについてもエピソードはかなり絞られています。

おんたんと門出、大場の3人を取り巻く登場人物たちはきちんと出てきますが、ふたばやマコトといった主要キャラクターのエピソードも原作に比べると抑え気味です。1本の映画作品としての尺の問題もあるでしょうが、一気に見せる映画という媒体ならば、誰の物語なのかをはっきりさせたほうが見やすいという判断もあると思われます。

■大場が決死の活躍! “くそヤバい”は免れた?

(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

そして、最も大きな変更点はクライマックスと結末です。終盤、爆発寸前の母艦を止めるために、大場は決死に覚悟で単身、母艦に向かいます。原作では乗り込むことができずに母艦は大爆発を迎えますが、映画では母艦内部に侵入することに成功、ある侵略者から託されたパスワードを打ち込むという活躍が描かれるのです。

その結果、触れるだけで生物を殺す謎の光の拡散を最小限にとどめることに成功します。原作同様、東京は甚大な被害に見舞われますが、生死不明だったおんたんと門出は無事なことが確認され、大場とおんたんが感動の再会を果たす様子が描かれるのです。

映画ではこのような結末となっているため、原作で描かれた「8.32」と呼ばれるディストピア世界は描かれていません。したがって、「8.32」のエピソードで中心的な役割を果たす門出の父、小山ノブオの出番もなくなっています。

ノブオは母艦が東京上空に現れ甚大な被害を起こした「8.31」の時に消息不明になっていましたが、実は大場のように侵略者と融合して生き延びていました。しかし、融合した侵略者が死亡し、ノブオの自我が戻り始めて、意識を取り戻すと、世界は一変していたのです。そこから、ノブオは娘に会いに行くため、別の並行世界へとシフトして、その世界でおんたんと門出の大人になった姿が描かれていました。

この結末の違いで何が生じているでしょうか? 原作では、崩壊した世界をリセットしてやり直すという感じに見えなくもないですが、映画では半壊した世界で、それでもおんたんと門出は生きていくということを示唆していると言えます。

東京にいた家族など大切な人の何人かは失われているので、そのやるせなさもありながら、おんたんと門出の絶対の友情だけは不変、その絆があればダメージを負った世界でも生きていけるという力強さを感じさせる終わり方でした。

(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

どちらの結末が好みかは人それぞれだと思います。しかし、どちらの結末でもおんたんと門出の友情は「絶対」として描かれています。その意味では、映画版が原作を好きな方を裏切っているわけではなく、「こういう未来もあり得たかもしれない」と感慨深いものになっていると思います。

【作品概要】
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』
前章:大ヒット公開中 後章:5/24(金)全国ロードショー

■キャスト
幾田りら あの
島袋美由利 大木咲絵子 和氣あず未 白石涼子
入野自由 内山昂輝 坂 泰斗 諏訪部順一 / 竹中直人

■スタッフ
アニメーションディレクター:黒川智之 シリーズ構成・脚本:吉田玲子 世界設定:鈴木貴昭
キャラクターデザイン・総作画監督:伊東伸高 色彩設計:竹澤聡 美術監督:西村美香
CGディレクター:稲見叡 撮影監督:師岡拓磨 編集:黒澤雅之
音響監督:高寺たけし 音楽:梅林太郎 アニメーション制作:Production +h.
原作:浅野いにお「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)
アニメーション制作:Production +h.
製作:DeDeDeDe Committee
配給:ギャガ
主題歌:前章「絶絶絶絶対聖域(よみ:ぜぜぜぜったいせいいき)」 ano feat. 幾田りら|後章:「青春謳歌(よみ:せいしゅんおうか)」 幾田りら feat. Ano

(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee


《杉本穂高》

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