【10周年】未視聴な人にも知ってほしい『ダンまち』がライトノベルの歴史に残したものは何だったのだろうか? | アニメ!アニメ!

【10周年】未視聴な人にも知ってほしい『ダンまち』がライトノベルの歴史に残したものは何だったのだろうか?

2023年に刊行10周年を迎えた、『ダンまち』。本稿では各業界関係者の証言をもとに、“『ダンまち』がライトノベルの歴史に残したもの”を徹底検証!作品の魅力のみならず、話題となった出来事や、原作者・大森藤ノ先生にまつわる伝説的エピソードまで詳しく解説していきます。

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(C)大森藤ノ・SBクリエイティブ/ダンまち5製作委員会(C)Fujino Omori/SB Creative Corp. illustration:YASUDA SUZUHITO(C)Silbird, Inc. published by GREE, Inc.(C)WFS(C)MAGES.
(C)大森藤ノ・SBクリエイティブ/ダンまち5製作委員会(C)Fujino Omori/SB Creative Corp. illustration:YASUDA SUZUHITO(C)Silbird, Inc. published by GREE, Inc.(C)WFS(C)MAGES. 全 10 枚 拡大写真

2023年に刊行10周年を迎えた、ライトノベル『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(以下、ダンまち)。

発行部数はシリーズ累計1,500万部を突破しています。本作の歴史を紐解いていくと、ライトノベル業界のみならず、アニメ業界、ゲーム業界でも大きな記録を打ち立てた作品であることが見えてきます。

アニメ!アニメ!では、各業界関係者の証言をもとに、“『ダンまち』がライトノベルの歴史に残したもの”を徹底検証。作品の魅力のみならず、話題となった出来事や、原作者・大森藤ノ先生にまつわる伝説的エピソードまで詳しく解説していきます。

目次

GA文庫大賞初の大賞作品!男女ともに楽しめる王道の主人公成長譚

◆ストーリー

迷宮都市オラリオ――『ダンジョン』と通称される壮大な地下迷宮を保有する巨大都市。未知という名の興奮、輝かしい栄誉、そして可愛い女の子とのロマンス。人の夢と欲望全てが息を潜めるこの場所で、少年は一人の小さな「神様」に出会った。どの【ファミリア】にも門前払いだった冒険者志望の少年と、構成員ゼロの神様が果たした運命の出会い。

これは、少年が歩み、女神が記す、
―【眷族の物語(ファミリア・ミィス)】―

本作はGA文庫大賞で初めての大賞を獲得した作品であり、ライトノベルファンのみならず、多くの読者やアニメファンを魅了してきました。男女ともに共感できる登場人物たち、細やかに描かれる心の動き、そして壮大な世界観が魅力の一つです。

主人公・ベル・クラネルがダンジョンでの冒険を通して成長し、様々な仲間たちとの出会いを経て強くなっていく王道のストーリーは、読者・視聴者に彼と一緒に成長していくような体験を与えてくれます。

◆業界関係者が考える「ダンまち」の魅力とは?

・大きな歴史の中でベルを中心に切り取った「ダンまち」本編以外にも、その世界を多くの視点で描くスピンオフ作品が充実しており、ライトに多くの人にも楽しまれながらも、深く楽しもうと思えばどこまでも深く沼れる世界観を魅力に感じます。また、大森先生の人柄か、関わる多くのスタッフの方が本当に「ダンまち」を愛している雰囲気が伝わり他のプロジェクトにはないくらいの熱量を感じます!

・王道ファンタジーとしての成長譚、冒険、異性含めた様々な出会いなど一口には語れないのですが、個人的に一番推したいのは、やはり熱い物語展開でしょうか。英雄に憧れる主人公のベルが、通常だったら折れてしまうような状況であっても愚直に物事と向き合っていく姿が熱い物語を生み出し、読者の共感を得ているのだと思います。

まだ見たことのない方の中には、ハーレム系作品だとおもってスルーしてしまっている方もいると思うのですが、(主人公だし、魅力もあるので異性からもモテるけど)ベルはどっちつかずだったり何かに揺れたりするような考えではなく、憧れを胸に前に突き進む、そんな熱い作品です。

物語は冒険や戦いだけでなく、登場人物たちの心の葛藤や成長、そして彼らが生きる世界の壮大な背景にも焦点を当てています。これにより、人間の心の複雑さや成長の喜び、そして人間関係の美しさが本作の大きな魅力になっているんです!

活動10周年「原作者・大森藤ノ伝説」

『ダンまち』の舞台裏で物語を紡いできた原作者・大森藤ノ。作品のメディアミックスに端を発した、劇場長編アニメのシナリオ執筆、ゲームアプリ『ダンメモ』のイベント企画・プロデュースなど、ライトノベル作家の枠にとどまらない活躍をされています。ここでは、業界関係者たちから集めた証言をもとに「大森藤ノ伝説」を紹介してきます。

伝説1:シリーズ13ヶ月連続刊行、毎回増えていくシナリオボリューム…関係者驚嘆の執筆スピード!

まず紹介する伝説的逸話は、業界内外から賞賛を浴びている執筆速度についてです。GA文庫やWFSの関係者からも、その非凡な才能が証言されています。

◆GA文庫編集部 担当編集 宇佐美さんの証言

原作10周年の企画を考えていたときに、「12ヶ月連続刊行をやりましょう」と言い出した時にはびっくりしました。それを実際にやり遂げてしまったうえに、途中で「13ヶ月にできます」と言いだしそれもやり遂げていました。シリーズ13ヶ月連続刊行は、一つのシリーズでの連続刊行では最長記録なのではないでしょうか。


◆株式会社WFS Wright Flyer Studio本部 第1スタジオ部 長野さんの証言

常に過去の自分を超えようとされています。 『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~メモリア・フレーゼ~(ダンメモ)』ゲームアプリの周年イベントにおいてのシナリオでは、1周年から4周年にかけてボリュームがどんどん増えていき、設定もかなり踏み込んだ内容を惜しみなく注ぎ込んでいただきました。常に「過去の自分がやったことを超えられているのか?」を掲げていたことが印象的でした。

これらの証言から、大森先生の常に自己を超えようとする姿勢や、異例の執筆スピードが見て取れます。その実績は、ライトノベル界だけでなく、ゲーム業界等にも影響を与えているようです。

伝説2:「コミュニケーション能力おばけ」と言われてしまうほどの人間的魅力!

次に、大森先生の人間的魅力とそのコミュニケーション能力がどのように周囲との信頼関係を築き、プロジェクト全体を盛り上げる力となっているのかを明らかにしていきます。

◆ワーナー ブラザース ジャパン合同会社 アニメプロダクション 前田さんの証言

大森先生はコミュニケーション能力おばけです。アフレコ現場でも打ち上げの場でも、誰よりも色んな方としゃべりに行きますし、声優さん一人一人としっかりとお話をされます。声優さんだけではなく、監督含めたアニメ制作側の方にもどんどん話しかけてくれます。原作者というよりはIPを盛り上げるための仕事仲間という認識の方が強いです。


◆ワーナー ブラザース ジャパン合同会社 アニメプロダクション プロデューサー 志治さんの証言

大森先生は、原作者の顔を持ちながらも、いちスタッフのスタンスでアニメの脚本会議やゲームの監修会に参加されます。以前、ゲームの監修会の場に初めて連れて行った若手スタッフに対して意見を求められた事がありました。キャラクターの衣装についての簡単なアンケートだったと記憶していますが、大森先生はどの立場のスタッフに対しても平等に接すること、コミュニケーションを積極的に取ろうとされます。仲間づくりが上手なのだと思います。

アニメの脚本会議の場でもやはり監督と大森先生を中心に議論が展開されていきます。そういう場では、作家の目線だけではなく、プロデューサーのような俯瞰の目線で作品と向き合われているように感じます

大森先生は単なる作家以上の存在として、多くの人々とのコミュニケーションを築きながら、プロジェクトを成功に導いています。先生がいかに「仕事仲間」としての認識を大切にしているのかが伝わってくる逸話です。

伝説3:既存の枠を超えてくるアイデア発想力!

最後に紹介するのは、大森先生の創造的思考についてです。先生の出すアイデアは、しばしば既存の枠を超えてくることがあり、『ダンメモ』の企画会議でも以下のような出来事があったそうです。

◆株式会社WFS Marketing部 ナカハラさんの証言

ダンメモ3周年のシナリオ企画会議で行き詰まった際に、大森先生が「ちょっと考えさせてください」と外に散歩に行かれ、帰って来たときに「【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】を出しましょう」と誰もが予想しないアイデアが飛び出した時が印象に残っています。スマートフォンゲームのシナリオでここまで踏み込むのは純粋にすごいと驚いた記憶があります。

※【ゼウス・ファミリア】【ヘラ・ファミリア】は、原作でもまだほとんど素性が明かされていない最強格のキャラクター達であり、物語の非常に重要な設定

このエピソードは、大森藤ノ先生の非凡な発想力と、それがいかにプロジェクトに革新をもたらすかを鮮明に示しています。原作執筆のみならず、アニメ、ゲームにまで心血を注ぐ大森先生。多岐にわたるメディア展開が成功する要因はこうした側面からも伺うことができます。

前代未聞の『ダンまち』偉業の数々

『ダンまち』シリーズは、多くの印象的な出来事やコラボレーションを通じて、独自の足跡を残してきました。ここでは、アニメ!アニメ!編集部の記憶に残る3つの偉業をピックアップしてご紹介します。

偉業1:原作・ゲーム・アニメ、三位一体のメディアミックスの影響は現実にまで!?

TVアニメ放送開始時には、ヘスティア様の衣装の「青い紐」が大きな話題になりました。服やヘスティアのスタイルの魅力も相まって、圧倒的な印象を与えアニメファンの中では「例の紐」と呼べば伝わる異例の事態になりました。秋葉原では「例の紐」を1本1,000円で販売するお店が出るなど、アニメファン全体を巻き込む社会現象を生み出しました。

偉業2:『キノの旅』『デート・ア・ライブ』とコラボし、新たな物語の展開とユニークなキャラクターの交流を実現!

ゲームアプリ『ダンメモ』では、ライトノベルの大人気作である『キノの旅』『デート・ア・ライブ』とのコラボも実現しています。

『キノの旅』(著者:時雨沢恵一)は、旅人のキノと相棒のエルメスがさまざまな国を巡る、短編のファンタジー作品。コラボイベント冒険譚“迷宮の国と異邦の旅人”では、『キノの旅』のエルメス(CV:斉藤壮馬)と、『ダンまち』のヘルメス(CV:斉藤壮馬)の掛け合いも話題となりました。

『デート・ア・ライブ』(著者:橘公司)は、主人公が特異な少女たち(精霊)とデートし、彼女たちの力を封印するロマンティック・コメディ。コラボイベント大冒険譚「剣姫カタストロフ」(2019年)、大冒険譚「剣姫エンゲージ」(2022年)のシナリオは両作品の作者が共同で原案・執筆を手掛け、ファンにとって非常に魅力的な内容となりました。

このように、『ダンメモ』のコラボイベントは、異なる作品間のクロスオーバーが生む新しい物語の可能性を探り、原作の魅力をゲームという新たなメディアで拡張することに成功しています。

偉業3:「一人の声優によりモバイルゲームに提供されたセリフの最多数」でギネス記録に認定!

2019年6月、ベル・クラネル役の松岡禎丞さんが、ゲームアプリ『ダンメモ』にて、リリースから2年でボイス数10000ワードを超えるセリフを提供した功績を認められ、ギネス世界記録に認定されました。

TVアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』の1クールのセリフ数が約5000ワードということで、松岡禎丞さんのセリフだけでアニメが2クール出来てしまうという膨大な量となっています。

シナリオ分量や、セリフ量もさることながら、それに対応される声優の皆さんもすごい!!

『ダンまち』がライトノベルの歴史に残したものは何だったのだろうか?

ここまで紹介してきたように『ダンまち』は、ライトノベル・アニメ・ゲーム界隈において、新たな風を吹き込む作品となりました。主人公の成長譚を中心に、多くのキャラクターたちの魅力を最大限に引き出すことに成功したことはもちろん、文化として「物語の多様性」「ジャンルの豊かさ」を多くの人々に伝え、“ライトノベルの可能性を示す一作”として、歴史に名を刻んだのではないでしょうか。

小説投稿サイト発の作品としても、アニメ化やゲーム化などのメディアミックスが続く異例の人気作となっています。10周年を迎える『ダンまち』がライトノベルの歴史に残したものは多様化する作品の発表方法や、メディアミックスの時代の、ライトノベル作品の新しい在り方なのかもしれません。

また、今回のアンケートでそれが成立する大きな要因は作品を大森先生とともに支える各メディアミックスのスタッフや、声優の活躍によることも感じられました。

10周年の今から追いつくためのおすすめの見方は?

『ダンまち』の魅力は多岐にわたりますが、まだ作品に触れたことがないという方は、どこから手を付ければいいのか迷ってしまうかもしれません。こちらでは、『ダンまち』初心者の方におすすめの見方をアニメ!アニメ!編集部がご紹介していきます。

1.まずはアニメで入門!

物語の魅力を手っ取り早く知りたい方は、まずアニメから。主要なエピソードを中心に、ベルの成長と仲間たちとの関係が描かれています。

主要キャラクターやサブキャラクターのバックグラウンドや別の視点の物語を知りたい方は、スピンオフ作品『ソード・オラトリア』にも触れることで、より『ダンまち』の世界観を楽しむことができるでしょう。

過去シリーズ配信情報:https://danmachi.com/broadcast/

2.ライトノベルで大森藤ノの筆致を感じる!

物語の深部やキャラクターの心情を詳しく知りたい方は、大森藤ノ先生の筆致を直接感じることができる原作のライトノベルがおすすめです。

独特の世界観、多面的で複雑なキャラクター描写、緻密なストーリーテリングは、原作だからこそ味わえる部分もあり、初心者のみならず、アニメファンの方にもぜひ触れていただきたい内容となっています。

3. スマホゲームから始めてみる!

普段からゲームをプレイするという方には『ダンメモ』がおすすめ。ゲームは原作のストーリーラインに沿って進みますが、書籍には登場しない独自のストーリーも展開されています。これにより、原作ファンはもちろん、新たにこの世界に触れる方も深い没入感を体験することができます。

そして、もう一つおすすめしたいのが、『ダンまち』シリーズの最新ゲームアプリ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか バトル・クロニクル(ダンクロ)』です。アニメのような3Dグラフィックスで、ベルたち冒険者の活躍を追体験できるアクションRPGとなっており、自分のペースで物語を進めることができるため、深くダイブしたい方にはうってつけです。

(C)大森藤ノ・SBクリエイティブ/ダンまち5製作委員会(C)Fujino Omori/SB Creative Corp. illustration:YASUDA SUZUHITO(C)Silbird, Inc. published by GREE, Inc.(C)WFS(C)MAGES.


《吉野庫之介》

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