ナメック星人がいないことはわかっているけれど、カメハメ波は努力すれば出せる気がする年頃の話【‘90s男と『デジモンアドベンチャー02』】 | アニメ!アニメ!

ナメック星人がいないことはわかっているけれど、カメハメ波は努力すれば出せる気がする年頃の話【‘90s男と『デジモンアドベンチャー02』】

1990年代生まれの「アニメ!アニメ!」編集長のコラム、青春作品のクリエイターへのインタビュー、同年代の‘90s男との交流を行う連載企画第二弾。今回は、『デジモンアドベンチャー02』のお話をします。

コラム・レビュー アニメ
注目記事
ナメック星人がいないことはわかっているけれど、カメハメ波は努力すれば出せる気がする年頃の話【‘90s男と『デジモンアドベンチャー02』】
ナメック星人がいないことはわかっているけれど、カメハメ波は努力すれば出せる気がする年頃の話【‘90s男と『デジモンアドベンチャー02』】 全 28 枚 拡大写真

1990年代生まれの「アニメ!アニメ!」編集長のコラム、青春作品のクリエイターへのインタビュー、同年代の‘90s男との交流を行う連載企画第二弾。
今回は、『デジモンアドベンチャー02』のお話をします。


連載のロゴをデジモンのデザイナーでもおなじみの渡辺けんじ先生にお願いをしていることからもわかる通り、私はデジモンの大ファン。シリーズ全体について語るときりがなくなるため、デジモンシリーズのTVアニメ第2作『デジモンアドベンチャー02』に絞りお話をします。

本来ならば無印から順に書いていきたいところですが、映画「デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING」の公開後、さらに注目度の上がっている本作を無印の『デジモンアドベンチャー』に先行して語らせていただきます。

※本記事はTVシリーズ『デジモンアドベンチャー02』「デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING」のネタバレ内容を含みます。



■編集長のぉ~ 一番好きなアニメって何ですかぁ?

作品自体のお話の前に、‘90s男の皆様と共有したいエピソードをお話させてください。

昨年、弊社のアニメ事業部初の、新卒社員の配属がありました。弊社アニメ事業部では「アニメ!アニメ!」以外にも雑誌「アニメディア」など複数のアニメメディアを運営しております。これまでは、別の部署を経て移動してきたり、他の契約からの社員登用などが主だったため、待望の新卒入社の配属となりました。

アニメ編集部あるあるなのですが、一通りの挨拶が終わり、一番最初に交わされる会話はだいたい「で、一番好きなアニメってどの作品なんですか?」となります。この時にも、入社ほやほやの22歳は例に漏れずこの質問を放ってきます。

「編集長のぉ~ 一番好きなアニメって~何ですかぁ?」

実際このような言い方だったかは定かではありませんが、今となってはこんな感じだったような気がします。

私「一番好きなアニメは『デジモンアドベンチャー』だよ。」
新卒22歳「デジモン!知ってます! でも最初のシリーズは見たことないです」
私「そうだよね! 1999年に放送していた作品だからね」
新卒22歳「あ、僕生まれてませんね」

ジェネレーションギャップ……

……こちらからは以上です。

ということで彼が生まれた年2000年に放送されていた『デジモンアドベンチャー02』について語ろうと思います。

目次に戻る

■「ポケモンはいないけど、デジモンはいる」のようなリアリティ

デジモンのTVシリーズ2作目の本作は、前作『デジモンアドベンチャー』の、デジタルワールドに迷い込み、サバイバルを繰り広げながら戦っていくストーリーとは打って変わり、選ばれし子どもたち(デジモンのパートナーの子どもたち)が現実世界とデジタルワールドを行き来する形で描かれていました。放課後にPC教室に集まり、現実世界からデジタルワールドへ行き、デジタルワールドでのトラブルを解決し、また現実世界に戻ってくるという形です。そのため、サバイバル中に現れるモンスターとして描かれている前作よりも、デジモンはデジタル世界の生物というイメージが強く印象付けられたのを覚えています。

当時、アニメと現実の差異があいまいな子どもで、「ナメック星人がいないことはわかっているけれど、カメハメ波は努力すれば出せる気がする」のような、絶妙なお年頃だった私にとって、ポケモンがこの世に存在しないことは認識しながらも、デジタルな世界の生物、デジモンはいないとは言い切れないのでは? と夢を持っていました。最寄り駅が車で40分というド田舎に暮らしていた少年の私は、作中で子どもだけで電車に乗るシーンも非現実的でフィクションの世界。

そんな想像を超えた世界で生きる東京の子どもたちの中にはデジタルワールドに行っている子たちの一人や二人いるのだろうと本気で思っていました。作品の舞台が実在の街であったこともそう言ったリアリティの要因かもしれません。

目次に戻る

■沼にハマるデジモンオタク

本作では選ばれし子どもたちとパートナーデジモンたちが、敵デジモンも一つの生命として尊重し、不殺を意識して戦うさまが描かれています。
前半は基本的には敵デジモンは洗脳されたデジモンたちで、洗脳のアイテム(イービルリング/イービルスパイラル)を壊して洗脳を解くために戦っており、後半では、戦いの中で敵とはいえデジモンを殺したくないという子どもたちの葛藤も描かれます。こういった描写が一つの生命としてのデジモンにリアルさと魅力を感じさせられました。

また、本作の主人公、本宮大輔はシリーズでも特にパートナーデジモンとの友情を描かれているキャラクターで、劇場作品も子どもとデジモンの友情を描くロードムービーのような作品の為、友達、パートナーとしてのデジモンへのあこがれはさらに膨らみました。

劇場作品自体の魅力に関してはここでは語り切れないため過去の記事を是非ご覧ください。


「D-3」、「Dターミナル」などの作中で使われるアイテムのおもちゃもこのような思いを加速させました。きゃりーぱみゅぱみゅが「つけまつける」でつけまつげや変身ベルトを『付けるタイプの魔法』と表現したその魔法にまんまとかかり、もしかしたらふとデジタルワールドへの扉が開くかもと常に身に着けていたのを覚えています。

こうして、「デジモンアドベンチャー」で掴まれた心を、『デジモンアドベンチャー02』でさらに沼らされていくことになったのです。
そんなデジヴァイスに心躍らせていた私が「デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING」を観た感想に関しては、別途「デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING」を中心に語らせていただくコラムを書かせていただこうと思います。

目次に戻る

■02のリアルさと「デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING」

02の最大の魅力は、デジモンを生命として向き合う真摯さ、それぞれの家庭環境などのバックボーン、放課後にデジタルワールドと現実世界を行き来するという、絶妙なリアリティなのではないかと思います。子どもたちが“なくはないかも、もしかしたらクラスメイトが放課後コッソリデジタルワールドに行っているのかも、僕もPCにD-3をかざせば行けるかも”と思わせるような演出が、わくわくする面白さにも、クトゥルー神話をモチーフにした回などの恐怖にもつながっていたように感じます。

また、だからこそ最終回の“すべての人々にパートナーデジモンがいる”というエンディングに爆発的な喜びを感じたのを覚えています。

「デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING」でも、大和田ルイの家庭環境含め、恐怖を感じるような描写が多く描かれました。

「デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING」の舞台挨拶でも、02だからこそできたストーリーとキャストだと監督からも話題に上がり、「02は心の闇と戦う、向き合うシーンが多い。だから本作(『デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING』)は02じゃないと描けない」と大人になった本宮大輔役片山福十郎さんも語っていました。


02に限らず、子どもたちの心の成長に呼応して、デジモンが進化するストーリー展開はデジモンシリーズの王道ではあるものの、02は特に心の闇と戦う作品といえます。デジモンカイザーとして過ちを犯したトラウマと戦う一乗寺賢や、ラストバトルのベリアルヴァンデモンのマインドイリュージョンで、子どもたちが自分自身の闇と戦うシーンなどが特に印象的です。「リアルさと、だからこそ描ける心の闇との戦い」が02の最大の魅力だと考えた時に、『デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING』はその思いを継承していると言えるでしょう。

個人的に、時系列はどうなんだろう? 02の最終回に向かうとしたらどのようになるのか? などそういった思いもなくはないが、劇場版ってそういうものじゃん!この進化って映画の時にも進化してたけど、TV版でも初見みたいな感じだったりってあるじゃん! のような矛盾した思いを抱えていたりします。
こんな厄介デジモンオタクに自分がなってしまったのも、02のリアルさゆえかもしれません(責任転嫁)。

目次に戻る

■デジモンと継承

ここまで、『デジモンアドベンチャー02』について語ってきました。まだまだ語り足りないところですが。いったん記事をまとめようと思います。
デジモンのアニメシリーズ2作目であり、最終回には、すべての子どもたちがパートナーデジモンと一緒にいる姿が描かれるなど、継承というのも大きなテーマだったのではないかと思います。筆者も3歳の娘がおり、絶賛デジモン英才教育中。テリアモンのぬいぐるみがお気に入りでまさにデジモン愛が継承されています。

今回連載で一番最初に02を扱わせていただいたのは、もちろん映画が公開されているタイミングということもありますが、アニメのデジモンシリーズが今後も僕らファンはもちろん、次の世代のファンたちにも愛されていくような継承が起こればという思いからでもあります。

次の世代にも、できれば僕と同じようにデジモンを愛してほしいし、もしかしたらどこかにデジモンと出会えるチャンスがあるのかもとワクワクしながら過ごしてほしい。

この記事を読んだデジモン以外のファンの皆さんも、デジモンファンの皆さんも、一緒に継承推し活がんばりましょう!

目次に戻る

デジモンアドベンチャー02 15th Anniversary Blu-ray BOX
¥36,963
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
『デジモンアドベンチャー02』を観るならコチラ
東映アニメチャンネルで観る/14日間の無料体験を開始する
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING
絶賛公開中

【キャスト】
片山福十郎(本宮大輔役)
野田順子(ブイモン役)
ランズベリー・アーサー(一乗寺賢役)
高橋直純(ワームモン役)
朝井彩加(井ノ上京役)
遠近孝一(ホークモン役)
山谷祥生(火田伊織役)
浦和めぐみ(アルマジモン役)
榎木淳弥(高石タケル役)
松本美和(パタモン役)
M・A・O(八神ヒカリ役)
徳光由禾(テイルモン役)
緒方恵美(大和田ルイ役)
釘宮理恵(ウッコモン役)

【スタッフ】
原案:本郷あきよし
監督:田口智久
脚本:大和屋 暁
キャラクターデザイン:中鶴勝祥
デジモンキャラクターデザイン:渡辺けんじ
アニメーションキャラクターデザイン:立川聖治
音楽:富貴晴美
スーパーバイザー:関 弘美
アニメーション制作:ゆめ太カンパニー
製作:東映アニメーション・東映

(C)本郷あきよし・東映アニメーション・東映

《江崎大》

特集

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]