日本テレビ放送網（以下「日本テレビ」）がスタジオジブリの株式を取得し、子会社化することがわかった。2023年9月21日に開かれた、両社の取締役会でそれぞれ決議されたもので、同日に発表となった。
スタジオジブリといえば2023年7月、7年の歳月をかけて完成した宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』が劇場公開を果たしたばかり。そんなスタジオジブリだが、同社を牽引する宮崎駿監督は82歳、鈴木敏夫プロデューサーは75歳を迎え、長らく悩まされてきた後継者問題は目下の急務となってきていた。
スタジオジブリの後継者としてはこれまで、創業者である宮崎駿監督の長男にして自らもアニメーション映画監督である宮崎吾朗氏の名前が何度か候補に上がっていた。しかし、宮崎吾朗氏は「一人でジブリを背負うことは難しい、会社の将来については他に任せた方が良い」との考えを示し、それを固辞してきた。また、鈴木プロデューサーが宮崎吾朗氏を推す一方で、「宮崎」という名前でスタジオジブリを支配し続けることに反対する宮崎駿監督の意見もあった。
このため、スタジオジブリは外部に経営を任せられないかと、その候補を巡って様々な検討を重ねてきた。そのような経緯を経て、先ごろ長年にわたり親しく付き合いのある日本テレビに白羽の矢が立ち、このたびの子会社に至った。
昨年某月、鈴木プロデューサーからの「ジブリがこれからも映画づくりに集中するために、経営を日本テレビで手伝ってもらえないか」という申し入れに、日本テレビの杉山美邦代表取締役会長執行役員が「今後ともジブリ作品を応援し、ジブリが映画を作り続けられる環境を守ることになるならば」と前向きに応えたことが、そのきっかけとなった。
日本テレビは1985年、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』（1984年）をテレビ初放送して以来、映画番組『金曜ロードショー』を通じてスタジオジブリ作品を放送し続けてきた。また、同じく宮崎駿監督の『魔女の宅急便』（1989年）からは映画製作への出資でも携わっており、2001年に開館した「三鷹の森ジブリ美術館」の設立も支援するなど、長年にわたってスタジオジブリと歩みを共にしてきた歴史がある。
このたびの子会社化にあたって、日本テレビはスタジオジブリの議決権の42.3％を所有する筆頭株主となり、かつ、スタジオジブリの経営面をサポートする契約を締結して、役員を派遣する。その一方、スタジオジブリの自主性は尊重され、同スタジオは今後ともアニメーション映画の制作、ならびにジブリ美術館やジブリパークの経営に専念していく。
なお、日本市場においては日本テレビの子会社が運営する「Hulu」でのスタジオジブリ作品の配信は、現状では未定となっている。
