【のび太の宇宙小戦争 2021】ドラえもん史上最強で最弱な敵役ドラコルルと哀れな独裁者ギルモア | アニメ!アニメ!

【のび太の宇宙小戦争 2021】ドラえもん史上最強で最弱な敵役ドラコルルと哀れな独裁者ギルモア

※本記事では、映画『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』本編の内容について触れています。 「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第21弾は、『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』よりドラコルルとギルモアの魅力に迫ります。

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『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』ドラコルル長官(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2021
『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』ドラコルル長官(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2021 全 5 枚 拡大写真

※本記事では、映画『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』本編の内容について触れています。

    アニメやマンガ作品において、キャラクター人気や話題は、主人公サイドやヒーローに偏りがち。でも、「光」が明るく輝いて見えるのは「影」の存在があってこそ。
    敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第21弾は、『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』よりドラコルルとギルモアの魅力に迫ります。


現在公開中の『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021(以下2021)』は、独裁政権の打倒を描いている。本作を鑑賞して、現在の世界情勢を思い浮かべる人も多いようだ。

本作の原作は1984年に発表され(ジョージ・オーウェルの『1984』と同じ年なのは偶然だろうか)、1985年に長編アニメーション映画として公開された。『2021』はオリジナル作品を尊重したリメイクであり、独裁者の描写も基本的にオリジナル準拠である。作り手は世界情勢に鑑みたわけではなく、世界が勝手に追いかけてきてしまったのだ。

本作でドラえもんたちに立ちはだかるのは、独裁者ギルモア将軍とその部下、ドラコルル長官だ。この2人はドラえもん大長編シリーズでも特に味わい深い敵役だろう。特に、ドラコルルはファンの間では「ドラえもん大長編シリーズ最強で最弱の悪役」とも呼ばれている。

そんなドラコルルは『2021』ではさらに魅力的な敵役として描かれ、ギルモアは一層哀れな独裁者として描かれた。この2人の対比が独裁の哀れさを浮かび上がらせる。

『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』メインカット(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2021

知略と情報戦でドラえもんを圧倒


本作でドラえもんたちは、地球から遠い宇宙にあるピリカ星の政変に巻き込まれる。軍事クーデターによって国から脱出せざるを得なかったピリカ星の大統領パピが地球に不時着し、のび太たちは彼をかくまう。パピを追ってきたのは、ピリカ星の諜報機関PCIA(ピシア)を束ねるドラコルル長官だ。

諜報機関の長官らしくドラコルルは情報を重視する。未知の地球でむやみに行動せず、まずは情報収集。パピが匿われている場所と誰が匿っているか、どんな人物が出入りしているかを、小型ドローンのようなものでじっくり観察し、見事内部に潜り込むことに成功。留守を狙って侵入し、しずかちゃんを人質にパピを誘い出す。大統領相手に実に弁舌巧みに振舞い、大統領の性格を知り尽くした上で交渉にのぞんでいる。

ピリカ星の住人は地球人よりも小さい。ドラコルルは身体を小さくできるスモールライトの重要性を最初から見抜き、これを抑えることで圧倒的に優位に立って見せる。

舞台がピリカ星に移ってからも、その頭脳は冴えわたる。隕石の落下に紛れて突入するドラえもんの作戦を難なく見抜き、わざと泳がせて反対勢力を一網打尽にしようと画策する。未来のひみつ道具を駆使するドラえもんを相手に、その洞察力と情報収集力でドラえもんをどんどん追い詰めていくのだ。

『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』場面写真(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2021

ドラコルルはただ頭が冴えるだけではなく、部下の命も人質の命も無駄に扱わない、人道的な配慮の出来る男でもある。一方で、彼が仕えるギルモア将軍は典型的な暴君で、逆らう者はすぐに処刑したがる。

ドラコルルはギルモアに対して面従腹背的な面がある。ギルモアは人間を信用しない。だから、無人兵器に頼りたがる。人間に兵器を持たせたら反乱されるかもしれないという恐怖を覚えているのだ。そんなギルモアに対して、ドラコルルは「自分の不人気をよくご存じだ」と皮肉を漏らす。

知性に溢れ、高度な判断力を有し、見事な作戦でドラえもんたちを追い詰めるドラコルルは、確かに最強の悪役の風格を持っている。しかし、同時に彼は最弱なのだ。なぜなら、小さいからだ。

地球人とピリカ星人では、その体格差で本来はまともな勝負にならないところを、スモールライトを抑えて互角の条件に持ち込み、知略であと一歩のところまで追い詰めた。劣勢を跳ね返す驚くべきセンスと能力を持った敵役なのだ。

『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』場面写真(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2021

独裁者は人間を信用しない


一方、ギルモア将軍は哀れな独裁者として、1985年版よりも一層駄目な奴として描かれている。ドラコルルが優秀であればあるほど、ギルモアの無能さが際立つわけだが、今回は民衆の勇敢さの裏返しとしての存在も強調されている。

『2021』は、1985年版や原作と比べて、民衆の勇敢さが強調されている。圧政を打倒するのは外部の軍事力ではなく、その国に生きる人々であるべきだというメッセージが込められているのかもしれない。

哀れなギルモアには信頼できる部下が一人もいない。民衆から逃げる時に乗り込む車はロボットが運転している。独裁者の末路は人間不信だ。独裁者の晩年は内部粛清が増えていくものだが、ドラえもんたちの介入がなくても、どのみちギルモアの天下は長く続かなかったかもしれない。

ドラコルルはまともな民主政権のもとでは、優秀な官僚になれるだろう。このような人材を活かしきれないギルモアのような独裁者は、やっぱり良くない。民主制も完璧ではない、けれど独裁よりはマシだろうとつくづく思わせる、2人の敵役なのだった。

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《杉本穂高》

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