「ヒロアカ」最大のヴィラン死柄木弔は、単なる敵役を超えた"裏の主人公"である。【ヴィラアカ】 | アニメ!アニメ!

「ヒロアカ」最大のヴィラン死柄木弔は、単なる敵役を超えた"裏の主人公"である。【ヴィラアカ】

敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第15弾は、『僕のヒーローアカデミア』より死柄木弔の魅力に迫ります。

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『僕のヒーローアカデミア』第5期 第108話 先行場面カット(C) 堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会
『僕のヒーローアカデミア』第5期 第108話 先行場面カット(C) 堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会 全 7 枚 拡大写真
    アニメやマンガ作品において、キャラクター人気や話題は、主人公サイドやヒーローに偏りがち。でも、「光」が明るく輝いて見えるのは「影」の存在があってこそ。
    敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第15弾は、『僕のヒーローアカデミア』より死柄木弔の魅力に迫ります。

『僕のヒーローアカデミア(ヒロアカ)』は、ヒーローの活躍を描く作品だ。この作品は、ヒーローが悪を倒し、人々を救う姿をカッコよく描くことを目標にしている。読者や視聴者もそれを期待して本作を観ているはずだ。

しかし、この作品は、時にヒーロー以上に敵(ヴィラン)が輝くことがある。ヴィランたちの主張は、しばしばヒーロー側を凌駕する説得力を持つこともあり、実際に作中で多くの人間が惹きつけられ、ヴィラン勢力がどんどん拡大していく。

今回は、そんな『ヒロアカ』のヴィランから、作中最大の敵であり、ヴィランをまとめ上げる存在として成長してゆく死柄木弔を取り上げる。

キーワードは、ヒーローとヴィランの「入れ替え可能性」だ。


『僕のヒーローアカデミア』第4期第2話先行カット(C) 堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会


死柄木は努力し、成長し、仲間との絆を勝ち得ていく

人口の8割が何らかの特殊能力を発現させた超人社会において、『ヒロアカ』は、無個性の緑谷出久(デク)が、No1ヒーローのオールマイトから力を継承されるところから物語が始まっていく。本編の中心となるのは、デクとオールマイトの師弟関係と、デクの同級生たちとの絆と成長だ。

この師弟関係と仲間との絆を、死柄木弔はヴィラン側で体現していく存在だ。死柄木弔にも「先生」と呼ぶオール・フォー・ワンがおり、敵(ヴィラン)連合のリーダーとして仲間を束ねる立場でもある。『ヒロアカ』は、デクを中心とした表の本編と、死柄木を中心とした「裏の本編」の2本柱で構成されていると言ってもよい。

少年ジャンプの主人公らしくデクは、様々な体験を経て、無個性で取るに足らない存在から大きく成長してゆく。しかし、本作はヴィランの死柄木が大きな成長を遂げていく模様もまた丹念に描いている。はじめは、衝動のままに暴れるだけの癇癪を起こした子供のような存在だったが、ステインなどの大物ヴィランとの邂逅を経て、本物のカリスマへと成長してゆく。

ステインとの出会いをきっかけに、最初は死柄木に懐疑的な態度だったヴィラン連合の者たちも、次第に信頼を勝ち得ていく。このヴィラン連合は、目的意識はバラバラだが、ヒーロー社会の中で居場所を失い、抑圧された存在でもある。社会の中で必然的に生み出される歪みの犠牲者という側面があり、死柄木ははからずもそんな連中に居場所を作ることになったのだ。その意味では、死柄木もまた他者を救っているのである。


『僕のヒーローアカデミア』第5期 第108話 先行場面カット(C) 堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会


デクと死柄木の命運を分けたものは

死柄木の目的はヒーローが支える社会全てを崩壊させること。そんな彼も幼少期は、デクのようにヒーローに憧れる少年だった。彼の祖母は、とある有名ヒーローだったが、そのために彼の家庭は崩壊した。「ヒーローは他人を助けるために、家族を傷つける」という言葉は、彼の一生に重くのしかかることになる。

主人公のデクも無個性だったせいで、ヒーローにはなれないと、夢を否定されてきた過去を持つ。デクも死柄木もともにヒーローに憧れる気持ちを否定されて育ったのだ。


『僕のヒーローアカデミア』第5期 第108話 先行場面カット(C) 堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会


2人の行く末を分けたのは、手を差し伸べた者の違いだ。デクにはオールマイトというヒーローが、そして死柄木にはオール・フォー・ワンが。この組み合わせがもし入れ替わっていたら、何が起きていたのだろう。一歩間違えればデクが死柄木のようになっていてもおかしくないのかもしれない。

ヒーローの1人、ベストジーニストが「ヒーローとヴィランは表裏一体」と言っていた。ヒーローとヴィランはともに個性による暴力を行使するが、両者を分かつものは法律だ。しかし、どちらの道に進むのかを決めるのは、ほんの些細な運命のすれ違いでしかないかもしれない。

ヒーローは他者を助けても、全ての困っている人を救えるわけじゃない。助けられなかった人々は裏切られたと感じ、ヴィランになる。そんなマッチポンプな関係を許容しているヒーロー社会は欺瞞に満ちている。だから全て崩壊させよう。その目的のために、死柄木は、デクさながらに「プルスウルトラ」してゆく存在となる。

本作のヴィランは、ヒーローを輝かせるために用意されたやられ役では決してない。ヒーローとヴィランは、超人社会のコインの裏表なのだ。コインは強い風が吹けば、たやすくひっくり返る。死柄木の征く道が、デクと重なれば重なるほど、彼にも幸せな道が訪れてほしいとも思えてきてしまう。しかし、彼の夢が叶えば、それこそヒーローとヴィランの立場が逆転した世界になってしまうのである。


新章『僕のヴィランアカデミア』キービジュアル(C) 堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会


デクと死柄木、ヒーローとヴィラン。決して相容れることができないこの世界の残酷さにおののてしまう。本当に悪いのはヴィランなのか、それとも世界なのか。

もし世界が悪いのだとしたら、一旦壊すしかない。そういえば、死柄木の個性は触れたものすべてを壊す「崩壊」だった。彼の個性は、悪い世界の仕組みに対するカウンターなのかもしれない。

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《杉本穂高》

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