■役者と共にキャラクターをつくり上げていった過程
――『D4DJ』は西尾さんが所属するHappy Around!のほかにPeaky P-key、Photon Maiden、Merm4id、燐舞曲、Lyrical Lilyといったユニットがいます。さらに特徴的なのが、ユニットごとに音楽プロデューサーがついていて、ある程度独立した音楽制作がなされているところです。水島さんはそのなかでPhoton Maidenの音楽プロデュースを担当していますが、どういった経緯で実現したのでしょうか?
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水島:「音楽プロデューサーもやってみたい」とノリで言っていたんですよ(笑)。そしたらPhoton Maidenのプロデューサーを誰にするかという話になった際、「作品のこともわかっている人」ということでオファーをいただきました。
中山:『D4DJ』はフェスをイメージしているので、音楽のジャンルもクラブミュージックだけではなくオールジャンルで行きたかったんです。
ユニットごとに音楽プロデューサーを立てることで、楽曲の幅が広がり、量産体制も出来、お互い楽しみながら切磋琢磨出来る等良い効果が出ました。
Photon Maidenの音楽プロデューサーを探していたときに、アニメの監督として『D4DJ』に対する熱い取り組みを水島監督から感じまして、これはもうこの方しかいないじゃないかなって思ったんです。
そしたら木谷も「自分もそう思う」となって、水島さんにご提案させていただきました。
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水島:最初、僕のプロジェクトへの参加発表が、アニメ監督としてではなく音楽プロデューサーだったから、ファンの皆さんが「ああ、アニメの監督は水島じゃないんだ」と思ったみたいで。
『D4DJ』は「ゲーム」「アニメ」「ライブ」のパワーを均衡に保つために、情報出しのタイミングをかなり見計らっているそうなんですが、あれは面白かったな(笑)。
――実際にPhoton Maidenをプロデュースした感想はいかがでしたか?
水島:Photon Maidenのプロデュースを行うにあたり、ブシロードさんと音楽の方向性やユニットのイメージなど細かく方向性をすり合わせましたが、その後は基本的にこちらに任せてもらっています。
ゲームのストーリーに合わせて楽曲はこういう感じにしようとか、何の曲をカバーするのかもこちらから積極的に提案させてもらいましたし、その意見を尊重してくれる。
アニメ監督としても新鮮な気持ちだし、ありがたいなって思いますね。
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――そうしたプロデュース活動がアニメ制作にもフィードバックされると。
水島:そうですね。キャスティングにはタッチしていませんが、キャラクターをつくり上げていくために、アニメのアフレコ収録が始まる前からライブや収録の現場に顔を出して、時々ディレクションをしたりしました。
台本の情報だけだとまだうまく演技ができない子もいるので、「こうしたらいいんだよ」とディレクションしていました。そうしてつくり上げていったキャラクター像は、当然アニメにもフィードバックされています。
――アニメのアフレコ以前に、Photon Maiden以外のキャスト陣とも会う機会はあったわけですね。
水島:短いボイスドラマの収録があって、そのときにキャラクターの統一感を出すために立ち会ってほしいと言われたので、そこでディレクションしました。
中山:昨年10月に行われた2nd LIVEやYouTubeなどのボイスドラマはひととおりディレクションしていただきました。
水島:役者にとっても「この子はこういう感じの子」というベースを最初に作っておいたほうが良いんです。キャラクター像を提示してあげたほうが演じやすいし、取っかかりがないとブレてしまう。
そうしたベースがないと「ゲーム」「アニメ」といった現場ごとに、セリフの捉え方も変わってくるし、それが今までのメディアミックスプロジェクトの悩みどころだと聞いていました。「じゃあ俺がそれをまとめます」となったんです。
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――アニメだけではなく、コンテンツ全体のキャラクターを統一させたことは、演じる西尾さんとしてはいかがでしたか?
西尾:早めにボイスドラマがあって本当によかったなって思います。
キャラとして初めて喋ったのがボイスドラマなんですけど、その前に曲をいっぱい録っていて、「りんくはコレで合っているのかな……」と不安もありました。
ボイスドラマを監督にディレクションしていただいたおかげで、ゲームやアニメのなかで喋るりんくというものもつかめたし、そこから歌も「もっとこうしたほうがいい」というのも掴めたんですね。
水島:演者にとってもそれがいいよね。キャラクター像をしっかり提示してあげることが僕らの仕事なんだけど、こういうメディアミックス型の大きなプロジェクトでは意外と指針を示す人がいなかったりするから、収録現場でみんながあたふたしてしまう。
アニメの現場で役者が悩むのは嫌だったので、こういう方向にキャラを育てていくんだと共有していきました。その延長線上にアニメの収録もあります。
中山さんをはじめスタッフのみなさんが協力的で、自分のキャリアをわかったうえで任せてくれているのが大きかったですね。
■「アニメは多種多様なキャラクターたちが集結するフェスを目指した」(水島)
――さて、いよいよ放送間近となったTVアニメ『D4DJ Frist Mix』ですが、水島さんとして目指したものはなんでしたか?
水島:木谷さんにも早くから「フェスやりましょうよ」と言っていたぐらいなんですが、アニメは多種多様なキャラクターたちが集結するフェスのようなものを目指しました。
そういうフェスみたいな超ハッピーエンドな方向性に持っていくために、ストーリーとしてはキャラクターの成長物語で間違いないだろうと。
大好きな音楽をふんだんに盛り込みつつも、ドラマもしっかり見せることを意識しました。
――ブシロード側からは何かオーダーがありましたか?
水島:「キャラクターが”闇堕ち”するのはやめてください」と言われました。「それを俺に言うのか」と思いつつ(笑)。
――たしかに水島さんのフィルモグラフィーを見ると、そういうタイプの作品もありますよね(笑)。
水島:「俺だって明るいのだってできるんだぞ!」っていう(笑)。
ポジティブな友情もの・成長物語として、音楽を作る楽しさや仲間と頑張る楽しさが伝わる普遍的なストーリーを作ろうと思っていました。
割と王道につくろうとしていたところ、Merm4idがグラビアのBlu-rayを出したり、燐舞曲が「スペースシャワーTV」の公式YouTubeチャンネルで冠番組を持ったりと特殊な動きをしていて(笑)。
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――たしかにここにきて、ユニットの特性を活かした活動が活発化していますよね。
水島:『D4DJ』のプロデューサーシステムが功を奏しているんだと思います。
新しい取り組みをしたいというスピリッツを持っている人たちがいるおかげで、アニメが始まる前から新しい地平をどんどん切り拓いているみたいな。
中山:6ユニットのなかでHappy Around!、Peaky P-key、Photon Maidenの3組は同じ学校で、燐舞曲とMerm4idは大学生。違う環境で活動していることを立体的に打ち出したく、あのような展開の仕方になりました。
水島:そういうところがまた面白い。中山さんや都田(和志。Merm4idプロデューサー)さんが面白いユニット展開を仕組んでくれるから、じゃあ僕らは彼女たちをどういうタイミングで登場させようかって考えられる。
――『D4DJ』の世界の中でもさまざまな環境での活動があって、一方現実でも同じように各ユニットが多彩な活動を見せているというメディアミックス感は刺激的ですね。
中山:『D4DJ』の根幹となる大きなテーマがあって、それは”再生と繋ぎ”です。
「音楽を再生する」という意味でもありますし、カバーやリミックスという意味での再生でもあるんですが、その再生によって我々は3つのものをつなげたいと思っています。
まずは「世代」をつなぐ。情報発信力のある10代や20代からその上まで、エンタメですべての世代をつないでいきたい。
あと音楽の「ジャンル」、そして「2次元」と「3次元」をより深い意味でつないでいきたいと思っています。
再生と繋ぎをテーマに、それぞれ大事な要素をつなぐ立体的な活動を目指しています。
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