「日本沈没2020」震災の実体験とエンターテイメントの両立を目指して…湯浅政明監督が語る、アニメ化の意義【インタビュー】 3ページ目 | アニメ!アニメ!

「日本沈没2020」震災の実体験とエンターテイメントの両立を目指して…湯浅政明監督が語る、アニメ化の意義【インタビュー】

Netflixオリジナルアニメシリーズ『日本沈没2020』より湯浅政明監督にインタビュー。1973年に発表されて以来、繰り返しさまざまなメディア作品になっている『日本沈没』を、今なぜ再び取り上げたのか。その理由とアニメ化の意図を、湯浅政明監督に聞いた。

インタビュー スタッフ
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『日本沈没2020』(C)“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners
『日本沈没2020』(C)“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners 全 8 枚 拡大写真

スタジオ・サイエンスSARUの成長の糧となる作品


大スペクタクル映像とは真逆の方向性を目指したことで生まれた、「体感」する映像。『日本沈没2020』で湯浅が描きたかったテーマはなんだろうか。

「ひとつは、自分が立っている“ここ”は何か。日頃あまり気にしていませんが、多くの人たちが作ってきた結果のうえに今の自分が立っていて、その恩恵も享受しながら生きているという事。

日常というものが、本当にいろいろなものの積み重ねでできあがっていること、善良な人たちの行いの積み重ねから恩恵を受けたり、邪悪な人たちの行いのつけが自分に回って来て被害を被ったりもする。日々努力して報われない事もあるけど、決して自分1人の力で立っている訳でもない。
そんな自分が立ってる礎を「感じられる」ストーリーになればいいなと思いました。

日本が沈没してしまうなんて怖ろしく怖い事ですが、また変わらず日が昇り、それを生き抜いた者達が、礎や礎となった人々の善行を糧に再び立ち上がっていく。そんな風に観てもらえるといいですけどね」

アニメーションを制作したのは、湯浅率いたサイエンスSARU。『夜は短し歩けよ乙女』や『映像研には手を出すな!』などの代表作と比べると、リアルな描写がメインの本作はテイストがやや異なる。

「カートゥーンのようにマンガっぽくてシンプルな画の作品からスタートしたスタジオです。これまでも色んなステップを踏んできましたが、ここでまた1つ、荒療治というかスパルタで、リアル路線のものをやってみようと挑戦しました。
リアルなものを作るにはいろんな蓄積が必要ですし、やらなければならない作業も多いので、それができるようになれば、今後もっと幅広い活動ができるようになるだろうと考えました。

リアルなものを作った後にシンプルなものをつくると、引き出しが増えるというか、引っ張ってこれるものが増えて、さらにシンプルなものが良くなっていく。そしてシンプルとリアル、それぞれの良さがわかっていくと思うし、使い分けができるようになると思います。
その方がスタジオとして幅広い成長になり、かつ未来に繋がる仕事として捉えました」


『日本沈没2020』場面写真(C)“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners
最後に湯浅はこうメッセージを残した。

「原作者の小松左京さんや、星新一さんはSF界の巨匠ですが、世代によっては知らない方もいるかもしれません。ですからこの機会に原作小説や、過去の映像作品に触れていただいてもいいと思います。
それらの作品に対して、アニメーション『日本沈没2020』はまったく違った視点で作っていますので、並べて観ていただいても全然差し支えがないと思います。

危機的状況に立たされてもなお先に進んでいく武藤一家の姿をぜひ観ていただきたいです」


『ゲーム・オブ・スローン』や『ウォーキング・デッド』など、海外で人気のサバイバルエンターテイメント作品のおもしろさに通じる、「だれがどう、生き残っていくか先が読めない」というストーリーテリングと、災害を“自分ごと”として捉えることができる「体感性」を備えた本作は、2020年という時代だからこそ誕生した映像だ。

難しいSF考証や原作の予備知識は、一切必要ない。ただ観て、感じて、そしてその後湧き上がってくる自分の心の声に耳をかたむけて欲しい。

<作品情報>
配信日:Netflixにて、7月9日(木)全世界独占配信(※中国本土を除く)
作品ページ:netflix.com/日本沈没2020
エピソード:全10話

キャスト:武藤歩:上田麗奈/武藤剛:村中知/武藤マリ:佐々木優子/武藤航一郎:てらそま まさき/古賀春生:吉野裕行/三浦七海:森なな子/カイト:小野賢章/疋田国夫:佐々木梅治/室田 叶恵:塩田朋子/浅田 修:濱野大輝/ダニエル:ジョージ・カックル/大谷三郎:武田太一

原作:小松左京『日本沈没』 監督:湯浅政明
音楽:牛尾憲輔 脚本:吉高寿男 アニメーションプロデューサー: Eunyoung Choi
シリーズディレクター:許平康 キャラクターデザイン:和田直也 
フラッシュアニメーションチーフ:Abel Gongora 美術監督:赤井文尚 伊東広道 
色彩設計:橋本賢 撮影監督:久野利和 編集:廣瀬清志 音響監督:木村絵理子  
アニメーション制作:サイエンスSARU ラップ監修:KEN THE 390
主題歌:「a life」大貫妙子 & 坂本龍一(作詞:大貫妙子/作曲:坂本龍一)

公式HP: http://japansinks2020.com/
公式twitter:@japansinks2020
製作:“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners


(C)“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners
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《中村美奈子》

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