同書は2009年より毎年発行。アニメ制作の元請け制作会社50社からのアンケート回答と公知の統計をもとに「2018年アニメ産業総括」「各分野解説」「海外動向」、デジタル化の現状を記した「特別編」の4章で構成されている。
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2018年のアニメ産業市場は総額2兆1,814億円。内訳について、司会を務めたアニメ産業研究家の増田弘道氏は「2002年頃から伸び続けていた配信が、17年かけてビデオと逆転したのは大きなトピック」と評した。
ジャーナリストの数土直志氏は背景として、Netflix(ネットフリックス)をはじめとする動画配信サービスの躍進を挙げ「コンテンツにお金を払う習慣がつき、特に若い世代にはまだまだ広がる余地はある。日本のプラットフォームでオリジナル作品というのは製作費が追い付いていないのが現状で、アメリカ主導の作品を日本で作る流れが増えてきている」と述べた。
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海外関連が1兆円を突破したことについて、株式会社電通コンサルティング代表取締役社長シニア・ディレクターの森祐治氏は「北米、ヨーロッパ、アジアの新興国の配信サービスを受けられるエリアの成長と相まったことと、スマホアプリでのライセンス収入が増えた。アニメ作品そのものとの相乗効果が大きく、海外市場を引き上げた」と話した。
日本のアニメ製作現場の現状について、株式会社ヒューマンメディア事業プロデューサーの長谷川雅弘氏は「高品質な映像製作については一部製作費が上がっているところもあるが、一方で製作費をかなり抑えて小規模なビジネスを行っていく作品も増えるなど、二極化が進んでいる印象」とし、デジタル化についてはCGで作ったキャラクターをセル画での手描きアニメーションのように表現する“セルルックCG”を用いた作品の増加についても触れた。
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2010年以来右肩上がりとなっているアニメスタジオの売り上げについて、数土氏は「数字だけ見ると好調そうだと誤解する」とし、「市場が拡大していないにも関わらず、お金を出す人が増えTVアニメの製作が伸びているということ。製作に伴うコストが急上昇しており、決して楽観できる状況ではない」(数土氏)と懸念を示した。
グッズ販売などのアニメキャラクター商品市場は、2014年のTVアニメ『妖怪ウォッチ』や映画『アナと雪の女王』の大ヒット以降は減少を続けているものの、株式会社キャラクター・データバンク代表取締役社長の陸川和男氏は「フィジカルな(実物)商品は難しい環境になっているが、スマホ映像やLINEスタンプなどデジタル商材は推定4,000億円ほどのマーケットがある」と期待を込めた。
広告販促とアニメキャラクターの関係性については株式会社ADKエモーションズ コンテンツ戦略室の伊藤直史氏が事例を紹介。
遊戯施設のコラボレーションや、作中などに登場する場所へ“聖地巡礼”を促すユニークな取り組みについて「ユーザーの行動喚起につながる活用が増えている。リアルなタレントより若い人たちにとってはあこがれの存在となり、キャラクターを使う幅が出てきたのでは」と分析した。
ライブエンタテイメント分野は前年比123.1%とトップの伸び率を示した。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科研究員の亀山泰夫氏は「アニソンライブと“2.5次元”作品が牽引している。映画館を活用したライブビューイングで広がりを見せるなど、息も長く、進化のスピードが速く、ボーダーレス化しながらさまざまなパートナー企業と連携しつつ伸びていくジャンル」とした。
[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.bizより転載記事]