串田アキラ、デビューから50年を振り返る「挫折するのは好きな気持ちが足りないってこと」【インタビュー】 2ページ目 | アニメ!アニメ!

串田アキラ、デビューから50年を振り返る「挫折するのは好きな気持ちが足りないってこと」【インタビュー】

今年でデビュー50周年を迎えたヒーローソングとアニメソングのレジェンド・串田アキラさん。ベストアルバムのリリースやアニバーサリーライブ開催に沸くこのタイミングでインタビュー。デビューの経緯や思い出に残る出来事などを語ってもらった。

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■ヒーローソングとの意外な出会い


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――ともあれ、その後は『太陽戦隊サンバルカン』などのヒーローソングにも挑戦していきますが、こちらも苦労したそうですね。

串田:映画『マッドマックス』の「ROLLIN' INTO THE NIGHT ~マッドマックスのテーマ~」を聴いた渡辺宙明先生が「サンバルカン」に推薦してくださいました。
確か、アルバム作っているときかな? 「今度こういう感じのお子様向けの曲があるんだけど」と言われて。軽い気持ちで引き受けたんですよ。

――初めて挑んだヒーローソングはいかがでしたか?

串田:全然うまくいかなかったんです。ワンコーラス歌っては「違うんだよね」の繰り返しで、どうすればよくなるのかも教えてくれないからわからない。
並行してバンド活動をしていて、メンバーを待たせるわけにもいかないので、もう1回歌って駄目だったら帰っちゃおうくらいの気持ちでした。

――どうやって克服したんですか?

串田:最後に譜面をしっかり見て歌ったら、「できるじゃん」ってOKだったんです。そのときはなんでOKだったのかわらかなかったんですけどね。

だけど、その次の『宇宙刑事ギャバン』のときはすんなりOKだったんですよ。最初は駄目だろうなって思っていたんですけど、スタジオに『?ギャバン』でヒーローとヒロインを務める大葉健二さんと叶和貴子さんが観に来てくださっていて、気合いが入ったんですよね。「えっ、もうOKですか?」っていうくらい。

――ほかにもなにか掴んでいたのかもしれないですね。

串田:そうだったんでしょうね。自然と掴めていたのかもしれない。今ならわかるんですが、ヒーローには見え見えの優しさじゃなくて、秘めた優しさもあるんですよ。それが歌に入っていたんだろうなと思います。

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――具体的には、どんなふうに歌うんですか?

串田:大雑把に言えば、ちょっと引いてみるんです。するとそこに抑揚というか、問いかけるような表情が生まれるんですよね。『~サンバルカン』も、改めて聞くとああ、入っているなって思うんですよ。挿入歌も含めて。それから『宇宙刑事シャリバン』『宇宙刑事シャイダー』と続きます。

――すごいですよね。その後も『巨獣特捜ジャスピオン』が続きますし、毎年串田さんです。

串田:びっくりしましたね。『~ギャバン』が終わったら、「はい、次は赤いのね」と言われて『~シャリバン』を歌って、「次は青いのね」と言われて『~シャイダー』を歌うという。

――正直、売れっ子ですよね。

串田:これだけ続くとは思わなかったです。

――ちなみに、特撮ドラマに最初に触れたのはいつ頃ですか?

串田:それが『~サンバルカン』なんですよ。『~サンバルカン』の曲を歌うとなったとき、「『ゴレンジャー』ってわかる? あれが3人になったやつなんだけど」と言われたんですけど、『ゴレンジャー』がわかりませんでしたから。

それに、僕以外にどんな人がヒーローソングを歌っているのかもわからなかったです。コロムビアがやっている音楽イベントで共演することはあったんですけど、それ以上の付き合いが全然。バンドをやっていたのもあって、「串田は誘えない」っていう雰囲気になっていたんですよね。

――そのあたりは世間知らずだったというか。でも、誘われないのはちょっとさみしいですね。

串田:そうですね。「串田、今度の土曜だけど……あ、串田は駄目か」って言われて、何があるのかもわからなかったですから。

――とはいえ、それも忙しさゆえ。「売れたな」と思った時期っていつごろですか?

串田:それが全然わからないんですよね。今自分がどういう状況になっているかも全然わからず、スケジュールが合えばイベントに出演するという生活を送っていました。

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――ただただ夢中。

串田:そうです。はじめてのヒーローショーは『~サンバルカン』のときで、としまえんだったんですけど、ああこういう感じなのかカッコいいなと純粋に思いながら観ていました。
当時の子どもたちはシャイで、司会のお姉さんが「集まれ~」って行っても全然来ないんですよ。遠巻きに見ているだけ。

だから、お姉さんに「マイク貸して!」って言って、僕が「コラなにやってんだ!」って子どもたちに言うんです。すると、「なんだよ!」って子どもも寄ってくるんですよね。で、ステージの前にいっぱいになって近い距離で接することができました。

ヒーローショーはそういうふれあいも楽しいですね。今は当時子どもだった人たちが大人になっているので、子どもと一緒に楽しむ環境ができあがっていて、昔みたいな苦労をすることはないですね(笑)。

■世界各地で音楽を届ける串田さん


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――その後も、ヒーローショーはもちろん単独ライブ、海外でのライブなど様々な場所で歌っていますが、とくに忘れられないステージはありますか?

串田:やっぱり2002年のフランスですね。はじめての海外でのライブだったんですが、南フランスの田舎町に会場があって「こんなところに人が集まるのかな?」と思っていたんです。
そうして、ホテルに泊まって翌朝目が覚めたら、やたらと外がやかましいんですよ。なんだろうと思ったら、窓から見えるライブ会場にめちゃくちゃ人が居るんです。

――一夜でそんなに!

串田:フランスは地続きだから、国外からもいろんな人がキャンピングカーに乗ってきてくれるんですよね。そんな場所で歌ったんですけど、みんな一緒に歌ってくれるんですよ、日本語で。

それはもうびっくりしました。とくに『~ギャバン』と『キン肉マン』の盛り上がりがすごかったなあ。あとは、翌年行ったブラジルも思い出深いです。「来て欲しい」って一通のメールが届いて。

――それで行くことになったんですね。

串田:「ブラジルにも来て欲しい。『巨獣特捜ジャスピオン』が人気です。『世界忍者戦ジライヤ』も人気です」みたいなメールでした。「じゃあノーギャラでもいいから出演者(串田、影山ヒロノブ、渡洋史)のチケットだけよこして!」って返信したら、3人行くのにチケットがバラバラなんですよ(笑)。
そんな感じで結構いい加減だったんですけど、いざサンパウロに着いたらすごかったです。

飛行場にかなりの人がいて、その飛行機に乗っている誰かを待っているようだったんですよ。「サッカー選手でも乗っているのかな?」と思ったら、僕を見て「ダイレオン!(※)」って。俺じゃん!ってなりました(笑)。

※『巨獣特捜ジャスピオン』に登場する巨大母艦。串田さんはテーマソング「超惑星戦斗母艦ダイレオン」を歌っている。

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――串田さんを待ち望んだファンが出迎えを。

串田:びっくりしましたね。だけど、明日ここでやりますっていう会場に連れて行ってもらったら、ステージがまだ組まれていないんですよ。聞いたら「今日のサッカーの試合が終わったらみんなで組みます」って(笑)。

――お国柄ですね(笑)。

串田:でも、それから本当に完成して無事ライブができました。何万人という人が大盛りあがりしてくれてそれはもうすごかったです。
ブラジル特有のサッカーノリというか。ジャージ脱いでステージに投げ込んできましたからね。

ブラジルには35時間くらいかけて行くので大変なんです。だから「もう来ないだろうな!」って思うんですけど、1年経ったら「そろそろ行きたいな」ってなる(笑)。

――それだけの光景は忘れられないでしょうね。

串田:最初に言ったのは2003年ですけど、結局あれから10回以上行っています。日本とはまた違う、あの場所でしか味わえないものがあるんですよね。



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《松本まゆげ》

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