今回の対談は、高橋の最新作『MAO』第1巻、野田の『ゴールデンカムイ』第19巻の発売を記念して行われた。「明治」「大正」と近しい時代を描く2人が、創作論や作品の魅力について熱弁。高橋が「ネーム中は魚を食べるようにしている」というジンクスを明かすなど、意外なエピソードも盛り込まれている。
「高橋留美子×野田サトル対談」は、2019年9月11日発売の「週刊少年サンデー41号」に前編、9月19日発売の「ヤングジャンプ42号」に後編が掲載。
また、マンガアプリ「サンデーうぇぶり」には完全版が収録。9月18日から前編、9月25日から後編が公開となる。
<対談一部掲載>
【『ゴールデンカムイ』の取材について】
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高橋:食べるシーンも本当に美味しそうなんですが、食べたりとかお料理の取材の方はいかがですか?
野田:この間、樺太に。サハリンから寝台車でずっと北上していって。ニヴフっていう人たちが作る料理を食べさせてもらったり。とにかく色んなもの食べてきました。ロシア人はラードの塊を食べるんですよ。
高橋:北の方だと、アザラシとかですか?
野田:食べるのはブタですかね。アザラシの油を食べるのはニヴフみたいな少数民族ですね。彼らにとっての調味料です。日本人でいうと醤油みたいな感覚でアザラシの油を常備していて。今は都会に住んでいる人も多いみたいなんですけど、都会のニヴフたちは海で漁をやってる親戚とかから取り寄せたりしてるそうです。
高橋:へー、それはやっぱり寒いので、油を摂らないとっていうことなんですかね。
野田:どうなんですかね、昔はそうだったのかもしれないですね。
高橋:実は、吾妻ひでお先生の『失踪日記』読んでたら、その天ぷら油をね、飲むというシーンがありまして、そういうことなのかなと。
野田:阿寒湖のアイヌの人たちには、サメの油を食べさせてもらいました。サメの油を調味料みたいにして、かけたりして食べたんですよ。
高橋:美味しかったですか?
野田:若干クセがありますね。食べ慣れない味で、独特な調味料っていうか……。
【高橋留美子 連載と連載の間の過ごし方】
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野田:長期連載と長期連載の間ってどうされてるんですか?
高橋:今回が一番長くて1年5か月くらい。その間、新連載の打ち合わせも野球と時事ネタばっかりで……3歩進んで2歩戻るみたいな。
野田:なるほど。その間、旅行とかいったりしなかったんですか?
高橋:旅行は行かなかったですけど、食事はやたら行きましたね。休みはデビューしてから今回が一番長かったです。一番忙しい時は『うる星やつら』と『めぞん一刻』を同時期に連載していたので……なんか気づいたら「スピリッツ」が週刊誌になっちゃってて……。
野田:凄いです。そんなこと聞いたことないですね。
高橋:でも昔の人はもっと凄かったですからね、水島新司先生は5誌同時連載とかなさってましたから。
野田:できないです。
高橋:『ゴールデンカムイ』情報量すごいですしね。普段、どうされてるんですか?
野田:とにかく資料を読み込む。ずっと読んでます。トイレにも山積みだし。好きな映画も観る暇もないくらい。
高橋:映画はどういうものをご覧になるんですか?
野田:くだらないものから、ちゃんとしたものまで。面白いと言われたものは観るようにしてます。基本海外のものが多いですけど、ただ映画館とかまで観に行く暇はないですね……。
高橋:私も徒歩15分のところにシネコンがあるんですが……なかなかちょっと。シネコンができる前は、都心に出かけて日に5本とか観ていたんですけど。今は行こうと思えばすぐ行けるにも関わらず……。