“日本が誇る長寿アニメ”を描き続けることの魅力と難しさ「ちびまる子ちゃん」高木淳監督【インタビュー】 2ページ目 | アニメ!アニメ!

“日本が誇る長寿アニメ”を描き続けることの魅力と難しさ「ちびまる子ちゃん」高木淳監督【インタビュー】

アニメサイト連合企画「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」の第18弾は、日本アニメーション・高木淳監督に『まる子』の魅力と難しさ、そして日本アニメーションについて話を聞いた。

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――『ちびまる子ちゃん』は、海外だとアジアを中心に人気がありますが、人気を体感したことはありますか?

高木:以前、香港に行った時に実感しました。日本だと長く続いていることもあって『まる子』というのは定番という感じですが、向こうはまだ熱気がある感じでしたね。

ただ、アジアでも放送されてからは長くは経っているので、子供だけでなく30代ぐらいに見える大人のファンの方もいましたね。
『まる子』の世界は静岡県清水市――今は静岡市清水区ですが――とはなっていますが、基本的にはどこにでもあるような町並みですし、まる子というキャラクターも「自分がまる子だったら」とか「自分の近くにこういう子がいた」とか考えやすいキャラクターなんですよね。

そのあたりが国境を超えても人気を集めている理由かなと思います。黒髪ということもあってアジアンテイストですし。

――海外のファンの中には「日本のアニメをもっと応援したいのだけれど、スタッフの人にとってなにが一番うれしいんだろう」という疑問を持つ方もいるそうです。高木監督としては、こんなことをしてくれたらうれしい、ということはありますか?

高木:これは海外のファンに限らないのですが……。僕は、この仕事を30年以上やってますが、テレビアニメの現場でずっと育ってきました。
テレビって基本的に、一方通行なんです。僕らのところに視聴者から直接リアクションが来ることはほぼないんです。

例外的に、テレビ局の企画で感想のお手紙が募られたりした時に、「そっか、見てくれてる方たちは、そういうふうに思ってくれてるんだな」「こういうところが好きなんだな」っていうのを知る感じなんです。
僕はそれがもう当たり前になっているので、「SNSで投稿してなんか褒めたたえてくれ」とか、そういうことも別にないんですよ(笑)。
だから本当に「見てくれるだけでうれしいです」っていうだけで、そして、もしかしてこちらが込めた思いが伝わっていたりしたら「ありがたいな」と思うぐらいで。

なので海外のファンの方も、意識して作品を見てくださるだけで、僕は十分うれしいんです。



――「まる子は生きているんだ」というお話がありましたが「キャラクターを生きているものとして、その生活を追っていく」という考え方は日本アニメーションを代表する『世界名作劇場』シリーズにも通じる視点だと思いました。

高木:僕は入社してまず『世界名作劇場』の『愛の若草物語』に演出助手で入りましたし、『七つの海のティコ』では監督もやらせてもらいました。

だから、そこそこ『世界名作劇場』のことは知っているほうの人間だと思うのですが、「人間を描く」という意味では確かに『世界名作劇場』の経験は『ちびまる子ちゃん』にとても役に立っていると思います。


――高木監督は1987年に入社して以来、一貫して日本アニメーションで仕事をしてきました。どういう経緯で日本アニメーションを選んだのでしょうか。

高木:僕は日本大学芸術学部の映画学科なんですが、大学に求人が来ていたんです。
子供のころから『マジンガーZ』『天才バカボン』『宇宙戦艦ヤマト』といった作品が好きで、1980年前後のアニメブームのころから――一応子供向けではあるんですが――ドラマを大事にする作品に魅力を感じていました。

だから欧米の児童文学などを題材にした『世界名作劇場』で人間のドラマをマジメに細かく描いている日本アニメーションは、おもしろい会社なんじゃないかと思って応募することにしたんです。

あと、当時は生活感あるSF作品の『宇宙船サジタリウス』も放送中でしたし、少し前には宮崎駿監督の『未来少年コナン』も制作していて、いろいろな作品も作れそう、という感触もありました。

――当時の日本アニメーションはどんな雰囲気でしたか?

高木:当時は今の社屋になる前で、古い年季の入った社屋で2階建てでした。
昔のアニメーション会社はみんなそうでしたけれど、ほぼ不夜城で、夜中まで電気がこうこうとついてましたね。

僕は『世界名作劇場』の『愛の若草物語』に演出助手で入ったんですが、『ボスコアドベンチャー』が終わったばかりで、『宇宙船サジタリウス』はまだ制作中で、とにかくテレビシリーズをガンガン回しているという感じでした。

当時は、ほとんどが男性スタッフばかりで、女性は数人ぐらいでした。
今、スタジオ4°Cの社長になっている田中栄子さんはそんな女性スタッフのひとりで、ちょうど僕と入れ違いぐらいで、日本アニメーションを辞めて、スタジオジブリに移っていかれましたね。



――高木監督は『南国少年パプワくん』で監督デビューしますが、師匠と呼べるような方はいるのでしょうか?

高木:演出や監督にやり方について、別に手取り足取り教わったわけじゃないんです。
ただ、長く一緒に仕事をさせていただいたという意味でいうと、まず『世界名作劇場』で何作も監督をされていて、昨年亡くなられてしまった楠葉宏三監督。

それから『まる子』の第1期を須田裕美子監督と一緒に監督されていた芝山努監督。
お二人に「演出とは」とか「監督とは」といった形で何かを教わったわけではないんですが、実際の演出作業の中でリテイクを通じて指導を受けたりしたので、自分としてはこのお二人が師匠かなと思っています。

――高木監督は日本アニメーションという会社の強みはどんなところだと思いますか?

高木:強みというか……。以前、どこかのテレビ局のプロデューサーさんが「日本アニメーションさんはいろんな作品を作っても、良くも悪くも日本アニメーションの作品になるよね」っておっしゃっていたんですよ。それは頷ける部分はあります。

うちの作品は、そんなド派手なものはなくて、そのかわりに、優しくて、柔らかくて、ささやかで……ほのぼのとか心温まるっていうのは陳腐な言い方でイヤなんですが……そういう作品を作ってきた歴史は長いんです。そして、そういうものを作り上げる力は今もあると思います。



――高木監督としても、そういう大きな流れを汲んだ中に監督としている自覚があるわけですね。

高木:そうです。保守に凝り固まるということではなく、新しい作品を作る中にも、そういう個性は残していくべきなんじゃないかなということは思っています。

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《藤津亮太》

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