「イングレス」「あしせか」のクラフタースタジオ、最新IT技術で作るアニメの未来とは【インタビュー】 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「イングレス」「あしせか」のクラフタースタジオ、最新IT技術で作るアニメの未来とは【インタビュー】

アニメサイト連合企画「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」の第15弾は、クラフタースタジオの常務取締役・川島英憲と監督・櫻木優平にインタビュー。アニメ制作の心得や海外との違い、目指すビジョンについてうかがった。

インタビュー スタッフ
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クラフタースタジオ 川島英憲 常務取締役と櫻木優平 監督 インタビュー
クラフタースタジオ 川島英憲 常務取締役と櫻木優平 監督 インタビュー 全 20 枚 拡大写真

クラフタースタジオ インタビュー会議室に設置されている櫻木優平監督による長編アニメーション映画『あした世界が終わるとしても』のポスター

――『あした世界が終わるとしても』(櫻木優平監督による長編アニメーション映画/2019年)が、アヌシー国際アニメーション映画祭にノミネートされましたが、作品を作るときに海外の方を意識して作っている部分はありますか?

櫻木『あした世界が終わるとしても』は、結構海外を意識しています。全世界配信の『イングレス』は、もともと「海外ってこういうのがウケるだろうな」みたいなキャラクターの設定や画作りなど海外向けを狙って作ったんですよね。ただ、Nianticのスタッフの方と話している中でも認識のズレが結構あって、こちらの普通が海外の方からすると違和感である、と。

分かりやすいところだと、コマの使い方。
『あした世界が終わるとしても』でモーションキャプチャーを使った理由にもつながるんですが、『イングレス』で、日本のアニメの作画のケレン味みたいなのがほとんど海外で伝わらないというのが分かったんです。

日本のアニメっぽくタメツメをつけてコマを削ったりとかしてバキッと見せたい画も、向こうから見ると単純にコマが抜けてるようにしか見えない。逆にモーションキャプチャーを使った日本人から見たらぬるぬるして少し気持ち悪くみえるような動きの方がクオリティーが高く見えるとか、そういったギャップがありましたね。

今は、日本の若者もネットでいろんなメディアを見るから、海外の反応は日本の若者の反応と近いなと思っています。
自分の中で狙った『あした世界が終わるとしても』のターゲットは主人公と近い年齢の高校生~20歳前後。昔ながらのケレン味みたいな表現を、より誰が見ても分かる、海外の人が見ても分かる滑らかな動きで表現しました。

『INGRESS THE ANIMATION』(C)「イングレス」製作委員会『INGRESS THE ANIMATION』
――ところで、日本のファンの方と海外のファンの方で食いつくところや評価される部分が違うところはありましたか?

櫻木コアなファンは海外も国内もアニメ好きの好きな部分はわりと同じ印象でした。海外でもアニメはみんな見慣れてきていて、それこそアニメエキスポとか行ったときに盛り上がっている作品は、大体日本のアニメ好きが好きそうな作品で盛り上がってる。
ただ、アニメは世界の中でもまだ狭いコミュニティだと感じています。アニメエキスポにあれだけ人がいるとはいえ、やはり人口のごく一部で、それ以外の普段日本のアニメを見たことない方々が見たときの傾向は違うんだろうなと思っています。

クラフタースタジオ インタビュー
――『INGRESS THE ANIMATION』『あした世界が終わるとしても』でもCGが滑らかで、背景含め違和感はないなと感じました。そのような表現はNianticさんの意見も取り入れて変えていった部分はあったのでしょうか?

櫻木:細かい動きやクオリティーに関しての要望は特になかったです。チームがそういうスキルや熟練度を持って作ったからそうなったという感じですね。
われわれが「スマートCG」と呼ぶ、アニメルックの画を作るということに関しては結構昔からやっているメンバーなので、『イングレス』は、そのメンバーが1カ所に集まったという感じが強い。

『あした世界が終わるとしても』に関しては、そこで築き上げたクオリティーラインをどう次のフェーズに持っていくかという思想で作ってましたね。モーションキャプチャーを使ってみたりとか、ルックも新しいことを入れたりとか。

クラフタースタジオ 櫻木優平監督
――技術的な面を含め、海外と日本の差を感じることはありますか?

櫻木:やっぱり予算と人の数。日本は海外の大型映画ほどの規模で公開できてない。予算の中とは言え、同じ場所で発表するという環境は一緒なので、どう戦うかみたいなところをうまく考えないといけないですし、日本人は絶対数が少ない。その中でいかに優秀なスタッフたちを中心に海外と戦える作品を作っていくか、みたいな。
業界としては、現状維持をしたらすぐ越される感覚はありますね。実際もう日本代表みたいな人たちを集めないと勝てないと思います。

川島:大前提で規模感ですね。作業規模の桁が違う。アメリカ・中国というこの2つの大きな経済圏に日本のアニメのアドバンテージがどれくらいあるのか。
圧倒的な経済力に対して1社体制で戦って勝てるような、そういう勝負でもなくなっています。作品・期間ごとにどこと組んでやっていくか。それが唯一海外に対して今、本気でやれる勝負の仕方かなと思っていますね。

クラフタースタジオ 櫻木優平監督
――影響を受けた作品や監督はいらっしゃいますか?

櫻木:秘密です。

川島:(笑)。わりともうベタなんですけど、『スター・ウォーズ』やあだち充作品など。

日本の今の時代に生まれ育って、ありとあらゆる情報のシャワーを受け続けて育っているので何か作品1本で影響を受けきるっていうのも無理だと思うんですよね。1世代前だと、何か原点を作る時代があったんですが、僕らの世代になってくるともう派生型です。『エヴァンゲリオン』もそうだし、本当にいろんな作品ですね。

――国内外問わず、作品を見るときについ注目してしまう部分はありますか?

櫻木:レイアウトとカットつなぎですね。映像作品全般でどことどこをつないで演出してるかみたいなものを見てしまいます。
これはもうたぶん職業病の部類だと思いますけど、表現や感情の誘導とか、演出として、どういう伝え方をしようとしてるのかな、というのは見てしまいますね。

「やられた」もあるし、「これ、今度やりたいな」もあるし、逆に「いや、良くないな」って思うときもあるし、「もうちょっとやりようがあるんじゃない?」と思うときもあるし。そういう目で見る気持ちはありますね。

川島海外のアニメを見るときは、どのターゲットを狙ってきてるのかを考えることが多いですね。海外アニメは、アジアマーケットやそれぞれ自国のコミックマーケット自体の掘り起こしみたいな感じで、日本のアニメが好きなユーザー向けに本気で作ってきてるアニメではないという印象です。『スパイダーマン』を見ても、決して日本のアニメユーザー向けに作ってるものではないですし。

ただ、日本のアニメやハリウッドのマーベルのような広い層を対象としたアニメは、今後どちらがマーケット人口を増やすかという段階になっていると感じています。

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《高木真矢子》

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