アニメ界で引っ張りだこの脚本家・吉田玲子、そのルーツと“場の空気”まで描く脚本術とは?【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

アニメ界で引っ張りだこの脚本家・吉田玲子、そのルーツと“場の空気”まで描く脚本術とは?【インタビュー】

『きみと、波にのれたら』の湯浅政明監督、『けいおん!』の山田尚子監督、『ガールズ&パンツァー』の水島努監督など、ヒット作を手掛けるクリエイターから引っ張りだこの脚本家・吉田玲子にロングインタビュー。前編では吉田さんが脚本家になるまでのお話を中心に聞いた。

インタビュー スタッフ
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『きみと、波にのれたら』メインカット(C)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会
『きみと、波にのれたら』メインカット(C)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会 全 3 枚 拡大写真
6月21日より、湯浅政明監督の最新劇場アニメ『きみと、波にのれたら』が公開される。

脚本を担当したのは吉田玲子。前作『夜明け告げるルーのうた』から続けての起用となった。

吉田さんといえば、『けいおん!』の山田尚子監督、『ガールズ&パンツァー』の水島努監督など、ヒット作を手掛けるクリエイターから引っ張りだこの人気脚本家だ。

原作もの、オリジナルアニメ、キッズ向けと幅広くアニメ業界で活躍する吉田さんのルーツをうかがおうと、今回、吉田さんとは浅からぬ縁(?)のある筆者がインタビューをさせていただいた。

記事は2回に渡ってお届けするが、この前編では吉田さんがアニメの脚本家になるまでのお話を中心に聞いている。
次々と話題が転じ、吉田さんの脚本術や携わった作品タイトルが飛び出すインタビューをお楽しみいただきたい。
[取材・構成=奥村ひとみ]

■アニメ脚本家になるまでの経緯は?



――初っ端から余談で恐縮なのですが……(『映画けいおん!』のアフレコ台本を出す)実は私、声優の活動もしていまして、『けいおん!』に出てるんです。

吉田:ええっ! そうなんですか!? 映画のほうですか?

――オカルト研究部員の役で、第2期から。でもTVシリーズでオカルト研が出ていた回は吉田さんが書かれたものではなく、全部、横谷昌宏さんが脚本でした(笑)。

吉田:あら、それはごめんなさい(笑)。

――いえいえ、とんでもないです! おいしいキャラクターを書いていただいてありがとうございました!

吉田:いい味を出していただきました(笑)。

――ちょっと個人的な質問になるんですが……。『映画けいおん!』で、最後の教室ライブにオカルト研究部員を呼んでくれたのは吉田さんですか?

吉田:んー、どうだったかなー……(笑)。『けいおん!』はこれで最後だっていう気持ちがあったので、今までお世話になったキャラクターたちはなるべく出したいなと思っていたんです。本当はもうちょっと出せればよかったんですけどね。

――今日はいろんなお話をお聞きできればと思っていますが、まずは吉田さんがアニメの脚本家になった経緯から。吉田さんも寄稿されている『だからアニメシナリオはやめられない』(映人社)によると、小山高生さん(脚本家。「タイムボカン」シリーズや「ドラゴンボール」シリーズなど)主催のアニメシナリオハウスがきっかけだそうですね。

吉田:そうですね。もともと他のシナリオ学校にも通っていて、そこで出会った友だちが「アニメのシナリオを習う学校に行くから一緒に行かない?」と誘ってくれて、アニメシナリオハウスにも通ってみたいなと思いました。

――小さい頃から「脚本家になりたい」という気持ちはあったんですか?

吉田:映画や小説、アニメやマンガなどフィクションは大好きでしたが、脚本家になりたいと思ったことは、学生時代のころは一度もなかったですね。

――そうなんですね。ちょっと意外です。

吉田:私もひな子(『きみと、波にのれたら』の主人公。大学生で、自分の未来について自信を持てずにいる)と一緒で、やりたいものやなりたいものを、全然見つけられなかったんです。
フィクションがずっと好きだったけれど、それを仕事に結びつける自信もありませんでし
た。

『きみと、波にのれたら』場面カット(C)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会『きみと、波にのれたら』ひな子
――ちなみに、吉田さんが好きだったフィクションとは具体的にはどんな作品ですか?

吉田:子供の頃は、まだビデオレンタル店もなかったので、TVの洋画劇場で育ちました。NHKの教育テレビで冬と夏に、昔の洋画特集がよくされていたので、それを熱心に見ていました。ヒッチコックの作品から、『会議は踊る』や『オーケストラの少女』、『道』とか。

見たいものを自由に選べる今と違って、当時は放送されているものぐらいしか見るものがなかった。なので、放送されているものは浴びるように見ていました。
小説やコミックも好きでしたけど、映画やアニメーションなどの映像作品に強く惹かれていました。

――最初はラジオドラマを執筆されていたんですよね。いざ脚本を書こうとなったきっかけは?

吉田:大学生の頃は脚本家になりたいと全然思わなかったんですけど、その後、主婦の友社の近くにある小さい編集プロダクションに勤めるようになって。実用書籍をメインに、健康書籍や理研究本を作っていました。

そこでいろんな作業をするわけですが、原稿を書くのが一番好きだなと思って。それで、ちょうど「ぴあ」で募集記事が載っていたシナリオ学校に通い始めました。
ただ、「脚本家になりたい!」というわけではなく、ここに行ったら映画の好きな友だちができるかなと思って。

――すごく気軽な感じだったんですね。てっきり、「編集の仕事をしていて何か挫折があったから……」みたいな答えを期待してしまいました(笑)。

吉田:脚本教室に通ったときも、最初からプロになれるとは全然思ってもいなかったし、単純に「映画も好きだし、シナリオ書くの面白そう」という好奇心ベースでした。
軽い気持ちで行き始めたシナリオ教室ですが、周囲の熱気に煽られるように私もコンクールに応募し始めました。


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《奥村ひとみ》

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