トッピー、ラナ、ジラフ、シビップ……動物のような外見ながら、人間くさいキャラクターたちが、宇宙を舞台に血湧き肉躍る大冒険を繰り広げる本作。
ただ、その原作者としてクレジットされているアンドレア・ロモリのことは、当時からほとんど知られていませんでした。
しかし、アニメ放送から32年を経た今年2018年、フェイスブック上に『宇宙船サジタリウス』のファングループが誕生。
そこになんと、原作者ロモリ氏ご本人が参加されたことにより、日本のファンとの交流が始まりました。
そこでは、ロモリ氏が現在もなお『宇宙船サジタリウス』(原題『ALTRI MONDI』、「別世界」の意)の執筆を続けられていることが語られ、SNS上でも話題となりました。(最新作はコチラ)
日本のファンにとっては、「謎の原作者」であったロモリ氏に、30年越しのインタビューを試みました。
[翻訳・写真=石井園美/構成=山科清春]
アンドレア・ロモリ(Andrea Romoli)
1944年12月3日生まれ。イタリア・フィレンツェ出身・在住。マンガ家、物理学者。
イタリア語の発音では「ロモーリ」が近い。
大学卒業後30年以上物理学者として光学設計、NASAの土星探査機の開発などに関わる一方、TVアニメ『宇宙船サジタリウス』(1986年、日本アニメーション)の原作『ALTRI MONDI』の第1作「イッサルの逃走(Fuga su Issar)」を1976年に発表。
以後、同シリーズとして「アズールの悪魔(Il Demone di Azul)」「最後の砦(L'utima fortezza)」「かに星雲(Crab Nebula)」「世界の鏡(Lo specchio dei mondi)」を発表。現在、最新作「Kthalon」を大幅改稿中。他に『マグダラとメリッサ(Magdala & Melissa)』、『ペロとペラ(Pero & Pera)』、『狐のレナート(Renato la Volpe)』、『海のヒヨコ(I pulcini di mare)』などの作品シリーズがある。(いずれも日本語版は未刊行)
1944年12月3日生まれ。イタリア・フィレンツェ出身・在住。マンガ家、物理学者。
イタリア語の発音では「ロモーリ」が近い。
大学卒業後30年以上物理学者として光学設計、NASAの土星探査機の開発などに関わる一方、TVアニメ『宇宙船サジタリウス』(1986年、日本アニメーション)の原作『ALTRI MONDI』の第1作「イッサルの逃走(Fuga su Issar)」を1976年に発表。
以後、同シリーズとして「アズールの悪魔(Il Demone di Azul)」「最後の砦(L'utima fortezza)」「かに星雲(Crab Nebula)」「世界の鏡(Lo specchio dei mondi)」を発表。現在、最新作「Kthalon」を大幅改稿中。他に『マグダラとメリッサ(Magdala & Melissa)』、『ペロとペラ(Pero & Pera)』、『狐のレナート(Renato la Volpe)』、『海のヒヨコ(I pulcini di mare)』などの作品シリーズがある。(いずれも日本語版は未刊行)
■トッピー、ジラフ、ラナはおばあちゃんの手作り人形から生まれた
――『ALTRI MONDI』(『宇宙船サジタリウス』の原作マンガ)のトッピーやラナ、ジラフなどの個性的なキャラクターは、どうやって生まれたんでしょうか?
ロモリ:私のキャラクターのうち、トッピー(Toppe)とジラフ(Giraffo)は、戦時中に私の叔母アダがつくってくれた布製のぬいぐるみから誕生しました。元々は兄のものでしたが、手荒に扱うため、私の手元にやってきたのです。
トッピーは手足のとても短い、端切れでできた子犬のぬいぐるみです。何度も継ぎをあてられていたので、イタリア語のToppare(継ぎを当てる)から名付けられたと思います。
ジラフは、赤白のチェックのキリンです。この2つはとても愛着を感じ、現在も大切に保管してあります。
そこに、手編みのラナ(Rana)が加わりました。ラナは、名前が創造性に乏しいからでしょうか、いつのまにかどこかに姿を消してしまい、今は私の手元にありません。
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トッピーは、宇宙船サジタリウスの司令官で、真面目で、まあまあ寛容なキャラクター。しかし、とりわけラナの態度が原因で、時々カッとなることがあります。
一方、ジラフは穏やかなタイプ。物に動じない楽観主義者。まれに我慢の限界を超えると、特にラナに対しては皮肉を言うこともあります。
ラナは、気難しくて偏屈。苦労や不快な事が我慢できず、どちらかというとエゴイストです。彼のこの欠点により、面白さを強調した性格のキャラクターになりました。船の生物学者であるラナの長所は、あらゆる種類の惑星や動植物に対する科学者としての好奇心ですが、この好奇心が、彼らにやっかい事を引き寄せてしまいます。
シリーズ第1作『Fuga su Issar(イッサルでの逃走)』では、それにシビップ(Sibip)が加わりました。我ながらとても上手くいったと思うキャラクターです。
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キャラクターデザインをする上で、彼らをシリアスに描くべきか、面白く描くべきか、最初は迷いましたが、最終的には、それなりに満足のいくバランスが選べるようになりました。
キャラクターについては、ある程度私の中で明確になっていたのですが、当初は彼らを様々な環境の中で動かすことの方に関心がありましたので、「キャラクター」というものにあまり重きを置いていませんでした。後になって、もう少しキャラクターに手を加え、強化する必要があることに気付きました。
一度、私の父が「人間のキャラクターにした方がいいんじゃないか?」と提案してきたことがありますが、それ以外には、私にキャラクターについての妥協を迫ってきた人はいませんでした。
もちろん、私は父を尊敬していましたが、そのアドバイスには合意しませんでした。トッピー、ジラフ、そしてラナ、彼らは私のキャラクターであり、その姿でなければならなかったからです。
■最初の客が日本人で、アニメ会社の人だった
――『宇宙船サジタリウス』の原作『ALTRAI MONDI』を発表したとき、イタリア国内では、どのような反響がありましたか?
ロモリ:1976年の初頭、「Fuga su Issar(イッサルでの逃走)」を出版し、ボローニャで行われた「少年・少女のための本の見本市」に持ち込みました。最初のお客さんは日本人でした。
見本市の会期中、たくさんの評価を受け、お断りはしたのですが原画を購入したいという申し出も受けました。
しかし、後に知ったことですが、私の本を出した出版社は、事前に私の作品について、有名なディレクターや編集者、ジャーナリストなどに助言を求め、そして「この作品は流通する価値が無い」と厳しい評価を結論づけていたというのです。
『ALTRI MONDI』の「Fuga su Issar(イッサルの逃走)」、「Crab Nebula(かに星雲)」「L'utima fortezza(最後の砦)」、「Il Demone di Azul(アズールの悪魔)」の4作のマンガは、イタリアだけでなく、スペインとポルトガルでも出版されました。これらの国でヒットしたかどうかを示すデータを私は持っていません。
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当時の出版界、特に少年・少女向けのカテゴリでは、私の作品のジャンルがそれまでにない新しいものであることは歴然としていましたが、Web上でたくさんの意見を見つけることが出来る現在と違って、この時代は「販売部数」だけが本の評価の基準でした。
私の国では無名な作家が脚光をあびることが、そう容易ではないということを知りました。
しかしながら、現在、コミックコンベンションの会場で、当時、私の本を購入したという読者に出会う機会が度々あります。
――日本でアニメ化したいというお話は、どういうふうな経緯だったのでしょうか?
ロモリ:そのボローニャの見本市の最初の訪問客の日本人こそが、「日本アニメーション」さんのアートディレクターだったのです。
その後、日本アニメーションによって『ALTRI MONDI』のTVシリーズ化の意向があると知らされた時、最初は目と耳を疑いました。私の生涯の夢が、今まさに実現しようとしているのですからね。私は、とても満足でした。
――自分のキャラクターが日本語を喋っているのを聞いたとき、どうお感じでしたか?
ロモリ:1981年に東京に行き、パイロット版のフィルムの中で、アニメ化された私のキャラクター達を初めて見ました。彼らはまだ喋ってはいませんでした。数年後、ようやく彼らが話しているのを聞いて、私は感動しました。
――1986年に放送開始されたアニメ『宇宙船サジタリウス』では、原作には登場しないキャラクターが登場し、サラリーマンの悲哀などがテーマに盛り込まれていたり、シビップのキャラクター設定などが変わったりと、大きなアレンジが加えられていますが、それに関して、どのようなご感想をお持ちですか?
ロモリ:私は言葉の問題があって、各エピソードの内容を評価できているとはいえませんが、アニメーションのクオリティについて、とても高く評価しています。
ただ、当時の私は、アニメ化に際しての内容の変更の可能性に関して、個人的な意見を述べることができませんでした。制作の一端さえ担うことができなかったのは残念でした。
当時の出版元の編集者が、それらの局面で責務を果たさなかったのです。私がその状況を受け入れざるを得なかったことは、不本意なことでした。
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しかし、今さら「こぼれたミルクを嘆いても意味がない」のです。長期にわたるその編集者への抗議と、正式な手続きを経て、ようやく私はその編集者との間の契約を無効にする事ができました。今ではとても良い関係で「日本アニメーション」さんと直接やりとりしています。
ただ、この残念な出来事は、非常に私を落胆させました。その影響で『ALTRI MONDI』の新シリーズの「世界の鏡(Lo specchio dei mondi)」の仕事を一時、投げ出していたことを、皆さんに告白しなければなりません。
その間、私は別のキャラクターによる新しいお話や絵本のプロジェクト『Magdala & Melissa(マグダラとメリッサ)』、『Pero & Pera(ペロとペラ)』、『Renato la Volpe(狐のレナート)』、『I pulcini di mare(海のヒヨコ)』などのマンガにとりかかりました。
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しかしながら、私の心はいつも、私の幼なじみであるトッピー、ジラフ、ラナに向いていました。私は再び彼らの物語「世界の鏡」を仕上げ、今まさに「Kthalon」の大幅な改稿を進めているところです。
そして、他にも取り戻したいものがあります……これは一つの夢ですが、願わくば、これらの物語を、新しい『サジタリウス』のアニメシリーズで……というのはどうでしょうか?
これらの全てのお話とキャラクターたちは、アニメ化してくれる制作会社をお待ちしています。
――日本では、今でも多くの人々が『サジタリウス』について語り、主題歌をカラオケで歌ったりしています。
ロモリ:今はとても遠い場所のほんの小さなニュースでも、インターネットを通じて私たちのもとに届きますが、当時はそうではありませんでした。日本でアニメがヒットしたというニュースを知ったのも、ある本の見本市に参加している際に、日本のマンガやアニメが好きなイタリア人の若者グループと出会ったおかげでした。
はじめて『宇宙船サジタリウス』の主題歌の一つ「夢光年」を聴いた時、とても良いと思いました。最近になって、Facebookでつながったファンの皆さんのおかげで歌詞の意味を知る事ができました。翻訳してくださったファンのみなさんに改めてお礼を申し上げます。
聴いていると感動が込み上げるという、皆さんの主題歌に対する称賛は確かで、私も同じ気持ちです。この場をお借りして、歌手の方、そして作詞・作曲者の方にもお礼を言いたいです。
もっと以前から、日本やヨーロッパ、それ以外の国々のファンの皆さんとこれを共有できなかった事がとても残念ですが、いずれにしても、これら全てのことに感激しており、失われた関係と時間を取り戻せることができたらなあと思っています。
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――アニメ『サジタリウス』は本国イタリアでは放送されていないとのことなのですが、今後放送されることはあるのでしょうか?
ロモリ:残念ながらその通りです。実現できるかどうか、何と言って良いか分かりませんが、私はそれを願っています。
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