死、暴力、性…タブーに斬り込みヒーロー描く「戦隊」 “有名脚本家”が覆面で本作生み出した理由とは?【インタビュー】 3ページ目 | アニメ!アニメ!

死、暴力、性…タブーに斬り込みヒーロー描く「戦隊」 “有名脚本家”が覆面で本作生み出した理由とは?【インタビュー】

日本発のヒーロー・コミック・レーベル「シカリオ」とアニメ制作会社STUDIO4°Cが、アニメ監督・田中孝弘が作画を担当するグラフィックノベル『戦隊』。本作のシナリオを担当するシカリオ代表・中村神鹿にインタビューを行った。

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死、暴力、性…タブーに斬り込みヒーロー描く「戦隊」 “有名脚本家”が覆面で本作生み出した理由とは?【インタビュー】
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■強烈なヴィラン創造の経緯



――戦隊と対峙する悪党たちはビジュアル、内面共に強烈な面々ですが、こちらはどういった経緯で今の形になったのでしょうか。

中村:当初、敵はリアルな極道チックにしようと考えていたのですが、シリーズ第一弾ということもあり、多少キャッチーなほうがいいだろうと。
そこで、“アニキ”率いる組織暴力は、戦隊に対してビジュアル的にも尖った奴らをぶつけることで、邪魔者との戦いを新たな“遊び”として心から楽しんでいる……という体にしました。


――幹部として登場するゴールドチンポは名前といいビジュアルといい、戦隊を食ってしまいそうな存在感を持つキャラですが、なぜあのネーミングにされたのですか?

中村:昔から自分の中で、ぼんやりと「ベルベット・ゴールドチンポ」というキャラクターを頭の中で考えていたんです。普段はおとなしくて弱い男だけど、ベルベット・ゴールドチンポになったときは超強い……という二重人格なキャラなんですが、その名前だけ拝借した形です。


――てっきり、アソコは通常のエンタメでは描きにくいタブーの象徴でもあるので、ご自身のなかで「タブーを破りたい!」みたいな衝動があるのかと思っていました。

中村:それもあるかな(笑)。これはいつか文章で形にしたい前日譚なのですが、ゴールドチンポは徹底的に警察とその家族をレイプし続けることで、警察を掌握してきた男なんです。やつにとっては性別も思想も関係なく、平等にチンポで服従させていくことが全てという。
もちろん戦隊も例外ではなく、勝利した暁には全員にチンポを入れるつもりで戦いを挑んでいる……というところまで僕は考えているんですよね。

――かなり強烈なキャラクター設定ですね。作中、そんなゴールドチンポを代表とするヴィジュアルメンたちの出現で、戦隊はスムーズに正義を執行することが難しくなっていくのが、中盤から終盤にかけての見どころになっていきますね。

中村:ナレーションの中で、「正義を行う」と語っている箇所があるものの、基本的に戦隊は正義を掲げて、自分たちの意志を遂行しているというだけなんですよね。
わかりやすい悪を叩き潰すことはざっくり正義だと思っている人って、作中にも現実にもいますけれど、そのために人をボコボコにしたり、殺したりしたら、言っていることとやっていることの整合性がとれない。

だから、俗に“正義”と言われるものを実行したときに、何の傷もない玉のような状態でいられるのか? ということは作中で問うてるつもりです。
そもそも、よく正義の対比に悪という言葉が使われますが、悪の対義語って善なんですよね。正義の反対は不義とか不正とか、そういうことになると思うんですよ。そこの歪みがどう戦隊を襲うかは、今後どんどん掘り下げていきたいですね。

■巨大なユニバース創造への第一歩を踏み出して



――シカリオというのはスペイン語で「殺し屋」という意味ですが、それをレーベル名に付けたのはどういった理由からでしょうか?

中村:意味を調べると物騒だけど、響きとかが可愛いじゃないですか。そこのギャップがいいと思ったんです。
あとは、僕が好きな映画『ボーダーライン』の原題なんですよね。あの映画に登場する二人組がすごく好きなので、自分が組織を作るときはシカリオにしようとずっと考えていました(笑)。

――なるほど。「シナリオ」や、ペンネームの中村神鹿の「鹿」とかけた名前でもあるのかと思いました。

中村:そこはたまたまです(笑)。中村神鹿に関しては、戦争で死んじゃったおばあちゃんの弟の名前なんです。その人が短歌を書いていて、文人的な活動をしていたので、名前をいただいたという形ですね。

――そんなシカリオが巨大なユニバース創造への第一歩を踏み出したということで、そのスケールの大きさに圧倒されると同時に、途方もない戦いではないだろうか? という印象を受けることも事実です。最後に、今回の大きなチャレンジに対する意義や、意気込みについてお聞かせください。

中村:ここ十何年かで、日本にもアメコミがここまで浸透したという土壌を利用して、日本のヒーロー文化を大人向けにカスタマイズすることに、あえて自腹を切って踏み出してみた次第です。
単純に応援してくれる人がいるからやり始めただけで、何の勝算もありません。みんなが好きな感動ものではないし、萌えもないし、受ける要素に対して逆張りをしていますから。
でも、そんな作品だからこそ「これを求めていた!」という人は必ずいると思っているので、その人たちに『戦隊』が刺さるよう、ちょっとずつ努力を重ねていきたいと考えています。

アイデアは頭の中にいっぱいありますので、それらの実現のためにも、興味を持った方はぜひ力を貸していただければと。
最終的には、いろんな人の絵柄やストーリーでこの世界の物語が描かれていけば素晴らしいと思いますね。それが今考えている一つのゴールです。


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『戦隊』は2019年5月31日まで、クラウドファンディングを実施中。すでに開始から48時間で目標を達成したが、ストレッチゴールにチャレンジ中だ。
>『戦隊』GREEN FUNDING クラウドファンディング特設ページページ
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《山田幸彦》

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