「リラックマとカオルさん」小林雅仁監督が語る、キャラに“実在感”を持たせるためのこだわり【インタビュー】 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「リラックマとカオルさん」小林雅仁監督が語る、キャラに“実在感”を持たせるためのこだわり【インタビュー】

4月19日よりNetflixにて全世界独占配信される『リラックマとカオルさん』は、少しとぼけたアラサー女性・カオルさんとリラックマたちの12ヶ月の日常を描くストップモーションアニメだ。

インタビュー スタッフ
注目記事
「リラックマとカオルさん」小林雅仁監督が語る、キャラに“実在感”を持たせるためのこだわり【インタビュー】
「リラックマとカオルさん」小林雅仁監督が語る、キャラに“実在感”を持たせるためのこだわり【インタビュー】 全 6 枚 拡大写真

■デザインから照明まで、リラックマたちの実在感を出すためのこだわりとは


――ビジュアル面では、メインビジュアルから本編映像まで、とにかく照明で自然光のような表現をすることにこだわられている印象を受けました。

小林
リラックマたちの実在感を出したいと思い、カメラマンや照明技師含めて、実写をメインでやっているスタッフに今回入ってもらったんです。
「この季節ならこの時間に太陽はこの位置」というのを1カットずつ決めていき、都合よく光を当てないようにしていました。
だから、昼間は明るく、逆に夕暮れのシーンでは室内が容赦なく暗くなったりするんですね。

ストップモーションアニメは制作のいろんな事情にあわせてまわした照明を作ることが多いのですが、今回は現場の都合で光を設計しないでリアルな太陽光との関係性を作る方針ですすめました。


――また、顔の表情の筋肉の動きを再現するために、メカニカルヘッドを導入されたそうですね。こちらを採用された経緯というのは?

小林
単純な「悲しい」や「嬉しい」だけではない、日常の中で見せる微妙な表現を芝居としてやらないと成立しないお話だと思っていたので、繊細な表現が可能なメカニカルヘッドを採用したんです。
日本語の表現って、はっきりと感情を出さずに行間を読むみたいなところもあるので、喋っていないときの心情を表現するのにとても貢献してくれました。

――キャラクター造形をティム・バートン監督の『フランケンウィニー』、ウェス・アンダーソン監督の『犬ヶ島』などにも参加されているタテオカ タカシさんが担当されています。お仕事をご一緒されてみていかがでしたか?

小林
そうか、「タテオカ タカシ」って言うんですよね。僕は現場できゃっしーという愛称で呼んでいたので(笑)。
きゃっしーは端的に言って天才だと思います。彼はイギリスの工房で働いているからか、日本人にはあまりない感覚と日本人的な感覚の両方を持ち合わせている。それは新鮮でしたね。
そのセンスがキャラクターのテイストにも出ていると思います。

――日本人にはない感覚で言うと、カオルさんのキャラクターデザインは『アングリーバード』などに参加していたフランチェスカ・ナターレさんが担当されていますよね。

小林
最初、デザイナーの方数人にカオルさんの設定をお渡しして描いてもらったのですが、その中でもフランチェスカさんの絵は「そう来たか!」という意外性があって面白かったです。
さきほどのきゃっしーの話と似たようなところがあって、日本人的な部分もありつつ、西洋の文化がミックスされた部分が出てきたので。

今回、完成形のデザインは日本人テイストなものですが、もうちょっと吹っ切れたデザイン案もありました。
そういった日本と西洋の文化が融合した印象があると、背景や風景は日本でも、海外の人に響く作品になるのではないかと思いますね

■国内のストップモーションアニメでは類を見ない豪華さ


――作品を拝見していて特に印象的だったのが、1話の散歩→ダンス→散歩とシームレスに1カットの中でシーンが切り替わる部分でした。こういったカットではVFXなども併用されつつ撮影されていたのでしょうか?

小林
散歩のシーンに関してはモーションコントロールカメラ(※コンピューター制御され、同じカメラワークを繰り返し再現できるカメラ、システム)で撮っています。
VFXもところどころで使用していますが、やっていることは常にアナログでしたね。

そういった技術も用いつつ、例えば白い背景のシーンでは、カメラの移動に合わせて背景をどんどん動かして切れ目なく見せていたりと、人力によって出来上がっているカットも多いです(笑)。


――基本となるセットはどのくらいのサイズなのでしょうか?

小林
シーンによっても変わるのですが、カオルさんが住んでいるアパートは1セットにつき大きめのテーブルほどのサイズですね。
で、一部屋のセットが2分割されていて、それが二部屋分で、4つあります。
カオルさんの部屋を入れて合計10個のセットが常に用意されていましたね。

――国内のストップモーションアニメとしては、かなり大規模な体制なのではないでしょうか。

小林
そうですね。それは今回Netflixさんと組めたからこそだと思います。
さっき言ったモーションコントロールカメラも今回初めて導入できましたし、10セットで10班体制というのはドワーフとしても、日本のストップモーションアニメ界でも初めてのチャレンジでした。

――ストップモーションでこれだけ豪華な体制のシリーズものは、なかなか類を見ない作品だと思います。実際に制作を終えてみての感想はいかがですか?

小林
とても楽しかったです。ただやはり「ストップモーションは時間がかかるな!」と(笑)。

――実際、どれぐらい時間がかかったんですか?

小林
撮影自体は本編で6ヶ月、オープニングで1ヶ月の、合計7ヶ月かけました。
尺を考えると短いほうらしいのですが、やっている間は忍耐も要求されるので、長く感じますね。

――しかも実写と違い、「このカットも撮っておこう!」と気軽に言えないのもストップモーションの難しさですよね。

小林
おっしゃる通り、1カット撮るだけで数日増えてしまったりしますからね。
なので、撮影は7ヶ月ですけれど、準備段階のプリプロにはさらに時間をかけていました。

「もっと時間があれば嬉しかったな」とは思うんですが、人にそうぼやいたら「いくらあっても足りないものなんだよ!」と返されましたね。
これはもう、ストップモーションアニメの宿命だなと(笑)。


――大変とは思いますが、ぜひこの豪華体制で再び作品を作っていただきたいです(笑)。では最後に、本作の見どころを改めてお願いします。

小林
今回、Netflixさんの推進する4Kという解像度の高い形式を採用しているので、画面上のあらゆることが隠せなかったんです。
なので、その「全てが見える」ことを楽しんでもらおうと思い、芝居から小道具まで作り込みました。

ドラマももちろん良いですが、観ていただく中で、「ここの芝居の意味は?」とか、「この小道具がカオルさんの部屋にあるのはこういうことか!」といった、画の中に仕込んだ小ネタを楽しんでいただきたいです。
毎回発見があると思いますので、コアな方には何度も観ていただけると嬉しいですね。
  1. «
  2. 1
  3. 2

《山田幸彦》

特集

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]