■よしもとのアニメに対する本気度「お客さんではない」
長崎
3年くらい前によしもとの大﨑社長とお食事をさせていただく機会があり、その時「よしもとはこれからアニメにジャンルを広げていきたい」と協力をお願いされました。ラフ&ピース専門学校の件も3年前だったと思いますが、その時も社長から直接お声掛けいただいています。
――社長自らアニメ×よしもとというビジョンをお持ちなんですね。
山田
それは間違いないです。
――アニメ業界外の企業が1、2作品携わってそれ以降フェードアウトしてしまうというケースもありますが、よしもとに関してはその心配はない、と考えていいでしょうか?
長崎
よしもとはお笑いなどのライブやエンタテインメント分野では既にシェアを獲っていますから、同じエンタテインメント分野でありノウハウや施設が活かせるアニメに進出するのはある意味では自然なんです。
最近のアニメは作品を放送・配信して終わりではなく、その後ライブや2.5次元ミュージカルなどのライブエンタテインメントにも展開しますから、そういった部分では特によしもとの強みを活かせるでしょう。
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――確かに、よしもとが日本中に展開している大小様々な劇場がそのまま使えるわけですから、その点ではかなりのアドバンテージがありますね。
長崎
現状アニメ関連のライブエンタテインメントの数は膨大にあり、ステージの数が飽和状態ですからね。
山田
弊社は先月2月に大阪城公園内にCOOL JAPAN PARK OSAKA というホールを新設しました。コンテンツ関連のステージは関東公演に集中しているのでこれを関西でも広げ、さらに関空からの外国人観光客にもリーチしたいというのがよしもとの狙いです。
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長崎
海外といえば少し話が変わりますが、よしもとはNetflixやAmazonでの海外配信や配信専用コンテンツの製作もかなり早い段階から取り組まれていますね。
山田
ノウハウやパイプは既にありますから、よしもとはアニメでも同様に海外配信にも力を入れたい考えです。
――向さんはこういったよしもとのアニメ関連の動向についてどう見られていますか?。
向
僕は2000年頃からアニメネタを芸に取り入れているんですが、その頃はよしもととアニメの間にはかなり距離があったんですよ。『おはスタ』内で短編アニメをやっていたんですが、いち視聴者として「(よしもととアニメは)食い合わせ悪いなあ」と思いながら見てました。
山田&長崎
(笑)
向
それがあったせいか、僕、この世界に入ってからもアニメ関連の活動はよしもとを絡めずにやってたんですよ。だって、例えばアニソンフェスをするんだと社員さんに話したら「じゃあ水樹奈々さん呼ぶ?」とか平気で言うわけですよ。それはちゃうやろ! と。
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――水樹奈々さんに会えればもちろん嬉しいですが、ご本人によるステージとファン同士でアニメネタを楽しむフェスとでは趣旨が違いますもんね。でもそのニュアンスの違いはアニメを好きでないと分からないかもしれませんね。
向
だから僕は距離を置いてやってきましたが、2年前にアニメ事業センターができて、長崎さんと業務提携したり作品に出資したりしているのを見るにつれ今回は本気度が違うというのを感じましたし、20年を経て今度はちゃんとアニメに向き合おうとしているなと今は思っています。
僕はよしもとの本気を内側から見ているので理解できましたが、一般の方からすればかつての僕と同じで「またよしもとはアニメなんかに手を出しちゃって」という目線だと思うんですよね。だからこそ、ちゃんとアニメ愛を持ったスタッフさんに入ってもらってこの本気の熱を伝えてもらう必要があるんです。僕自身、そんな人に入ってもらいたいです。
長崎
向さんの「アニ×ワラ」もあって徐々によしもと内でのアニメへの理解や関心が高まったんだと思いますよ。よしもとは最早アニメ業界の外から来た「お客さん」ではないと理解しています。
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