■おなかが減るアフレコ現場
――アニメになって表情がついたり動いたりすることで、キャラクターの輪郭がはっきりするという話はよく聞きます。それによって芝居に変化はありましたか?
西村
その前にゲームのフルボイス収録やドラマCDなどがあって、セリフ回しや世界観がなんとなく広がっていたんです。
そこからアニメになり、絵と合わせる作業や人と合わせる作業が加わったので、よりリアリティある会話になったなとは思いますね。
新垣
変化というよりは、多面的にやったほうが良いというのはありましたね。
例えば、出している言葉が100%自分の言葉じゃないという会話がある場合、そこで人間らしさというか、人間としての存在感を出せる思うんです。それに会話するし動きますし。
ひらべったくのっぺりするのは嫌じゃないですか。立体感を出すためには一言一言にどういう感情を乗せるか。
ため息やセリフ前の吸う息ひとつでも変わってきますからね。
――繊細なお芝居が求められるんですね。1話のアフレコを行なう段階では、絵が完成していたと聞きました。
新垣
ゲームやドラマCDのときは、自分が作ったキャラクターの“間”で演じていたところがあるんです。
アニメでは絵を描いた方と演出家の方の意図が合わさったところに僕らの演技を乗っけていくので、絵が完成している場合はそこにさらに難しさは感じましたね。
西村
基本的にシリアスな物語なので、芝居も全体的に淡々としているんです。
そんな世界観の中で、ポスターのギークがすごくイケメンに写っているから(笑)、「演技変えなきゃいけないかな?」って不安に思った瞬間はありました。

西村
でも、実際のアフレコでは「明るく」だったので。おっちょこちょいでテンションが高くて、みんなを助ける大きな力を持っているというイメージで臨んでいました。
――ギークの明るさに救われるところはありますよね。
西村
コミカルで場を温める存在ですからね。どんなに暗い流れでも、ギークはポッと明るくするような微笑ましいトーンを心がけていました。
――そこがアニメでもアクセントになりそうですね。では、演じるキャラクター以外に好きなキャラクターっていますか?
新垣
ストーリーのなかではほぼ絡みがないんですけど、ソウマですね。
ソウマって、お姉ちゃんを持つ弟じゃないですか。僕にも兄と姉がいて、「子ども扱いするな!」という経験があるんです。「弟だから」と扱われるのを嫌うというか。
そこは「わかるわかる」とすごく感情移入してしまいます。キャラクターとしても魅力的だし、お芝居もすごく好きだったので。
収録のとき、ソウマがしゃべるシーンは気になっていましたね。
西村
設定上、ギークはタクヤ愛がすごいんですよ。なので、どうしても入り込んじゃってタクヤが好きですね。
杉田さんに対しても、それは伝えていたかも。収録のときも杉田さんと席が隣だったので、どうしてもタクヤ愛は大きくなっちゃいますね。
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――アフレコはすでに終わっているそうですが、現場の雰囲気はいかがですか?
西村
楽しく話をしながらやってました。直前まで盛り上がってるんだけどマイク前に入るとスッと切り替わって。
――例えばどんな話を?
新垣
夕方の収録だったので、おなかが減ってくるんですよ。
だから自然とご飯の話になっていました。あのお店のあれが美味しいとか、差し入れなら何が良いとか言い合って、どんどん自分たちの空腹を深めていっていました(笑)。
で、「おなか減ったね~」って帰っていく。打ち上げも中打ちと全部録り終えたあとの2回やりましたね。おいしいビールを飲ませていただきました(笑)。
西村
そうでしたね。キャストさんみんな集まってできました。ああいう場で腰を落ち着けて、お酒を飲みながらできる話だったと思います。
現場でもそうですけど、杉田さんが場を和ませるひと言を発してくれるんです。ムードメーカーですね。
■過去の共演歴は人気海外ドラマ!
――おふたりと言えば吹き替えでも活躍されていますよね。アニメのアフレコと外画の吹き替えにはどんな違いを感じますか?
西村
吹き替えは向こうの役者さんが演じていらっしゃる“表情と呼吸”があるので、そこにある音を何度も聞いて合わせるというやり方ですね。
あちらの役者さんが日本語を喋っているように、自然にやれるようにという心がけはあります。絵ではない、生身の人が喋っているわけですから。

――対するアニメは、生身の人間ほど表情が動かないから誇張する必要がありますよね。
西村
それはありますね。で、自分発信じゃないですか。吹き替えの場合は向こうの役者さんの演技があって、それをこちらで当てていくんですけど。
新垣
そうですね。感覚としては、1回完成してるものを壊さないように日本語にする日本語吹き替え版と、僕らが最後に声を入れて完成するアニメという。
声を入れるという意味では同じですが、役割が違う気はします。
演じるうえでも、キャラクターの情報を読み取って壊さないようにする吹き替えとキャラクターを自分で作るアニメ、役作りのプロセスも違いますね。
西村
違いこそあれ、どっちも楽しいですね。
――吹き替え作品では、共演歴はありますか?
新垣
ガッツリ共演するのは、今回がはじめてですよね?
西村
そうですね! 最初はゲームなので収録もバラバラでしたし、イベントで一緒になってようやくという感じでした。
ただ、僕は一方的に『HAWAII FIVE-0』(ハワイ・ファイブ・オー/アメリカのTVドラマ。新垣さんはシーズン7までメインキャストとして出演)を観ていたので、ゲストで呼んでもらったときは「うおーー! 樽助さんだーー!」って思ってました。
新垣
ありがとうございます(笑)。
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――では、今回ガッツリ共演されてお互いのお芝居をどう見ていましたか?
西村
僕はもう完全に、低い声でぼそっとしゃべる樽助さんが「渋いなー!」「こんなに低いトーンがいけるんだ!」と思っていました。ボソッとひと言発する感じが渋いんですよ。
新垣
恐縮です! 僕は西村さんのギークを見て、タクヤとの友情に対しても大好きなアイドルに対してもすごく情熱的だなぁと思っていました。だって、演技している最中も汗かいているんですよ。
西村
そうですね(笑)。
――まさに熱演ですね。
新垣
そういう、西村さんの情熱的な演技がすごく好きだなと。
ゲームの収録は別だし、ドラマCDでも1度一緒にやっただけだったのでアニメのアフレコを毎週続けていくうちにわかってきました。
しかもずっとそのテンションを保てるんです。自分も演じる側なので大変なんだろうな、テンションを上げなきゃ絶対できないもんなっていう感覚はあるんですよ。
それをずっとやってらっしゃるのですごいなって思います。
西村
汗かいた甲斐があります(笑)。
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