「バ美肉」(バーチャル美少女受肉)のメリットは何か? VTuber“バーチャル魔王おじさん”が実体験を語る | アニメ!アニメ!

「バ美肉」(バーチャル美少女受肉)のメリットは何か? VTuber“バーチャル魔王おじさん”が実体験を語る

株式会社Live2Dが主催する「alive2018」イベントレポートをお届けします。自分で描いたキャラを使って自分でVTuberとなった魔王マグロナ様のセッションです。VTuber活動を通して得られた作家としてのメリットが語られます。

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「alive2018」にてVTuber魔王マグロナ様がご講演―“バ美肉”そのメリットはどこにあるのか
「alive2018」にてVTuber魔王マグロナ様がご講演―“バ美肉”そのメリットはどこにあるのか 全 7 枚 拡大写真

「バ美肉」という言葉をご存知でしょうか。バーチャル美少女受肉の略とされ、自らの手でモデルを作り、自らキャラクターを動かし、自ら声を当てて演者となる……そうした活動をされる方々が注目されはじめています。

2018年12月3日──ベルサール秋葉原にて、Live2D社による「alive2018」が開催され、イベントのスペシャルゲストとして魔王マグロナ様が単独セッションを受け持ち、作家として感じたVTuber活動のメリットを語りました。

本稿では、セッション「"セルフ受肉"自分の描いたイラストに乗り移ってみて感じた、新しいファンサービスの形」の内容をお届けします。Live2Dによる活動開始までのスピード、作家が模索するSNSの活動スタイル、ファン交流のあり方など、実用的な内容に注目です。

魔王マグロナ様は1日で動かせるように



魔王マグロナ様の講演はイラストレータ兼バーチャル美少女セルフ受肉ボイスチェンジお絵描きYouTuber魔王おじさんという肩書きの紹介から始まりました。本業はイラストレーターで、ライトノベル表紙・挿絵やソーシャルゲームのキャラクターイラストなどの活動をされています。

そんなマグロナ様は元々VTuberをやるつもりではなく、自分の絵を動かしてみたい、と遊びのような感覚だったそうです。ご友人のイラストレータが公開していた、Live2Dを導入する為の動画を見て、簡単そうだと思えたことから奮起。その動画を見終えてから、自分のキャラクターを動かす動画を配信するまでわずか一日というスピードでした。

このことがきっかけでVTuber活動を開始。イラストレーターの下地があれば同様のことが手軽に実現できるとし、作家として新たな発見をするに至るのです。

セッションでも、会場前面へ大きく映し出されたスクリーンにマグロナ様が直接登場。おじさんとは思えぬ艶やかな声色でふわふわと喋ります。

作家と作品とSNS──悩める現代の戦略



マグロナ様は作家が広報する上でSNSが欠かせない時代であるとし、多くの場合は新たな作品をアップロードし続けることがメインの活動になるはずだと、現代の状況を俯瞰します。

しかしそこには大きな壁が存在します。作品を見てもらう為にSNS活動を頑張り、頑張る為に作品を掲載する……これが報われにくい無限ループになってしまうと言うのです。例として、何万件とリツイートされた単発の作品を出せたとしても、リプライツリーにぶら下げた宣伝が同じく評価されている例は、残念ながらあまり見られないことを指摘。

これは流れてきた作品を気に入った人が、その作家を好きになるとは限らないことを意味すると主張します。他にやりようがないと思いつつも、作家を好きになってもらうことが理想で、SNSではスマートにいかないと感じていたようです。

作家が作品になるとコミュニケーションを楽にする


活動前はukyo_rst氏の名義のみであったが、現在は二つの名義を掲げる

そしてセッションの主題である作家のメリットが語られます。

自身で描いたキャラクターに自身が乗り移ることで、それ自体が作家でもあり作品でもある存在になるのです。これにより、キャラを作品として好きになってもらえれば、新たな創作物はそのキャラが生み出したものと認識されはじめます。

「作品を見た人が作家を知る」ことと「作家を知った人が作品を見る」こととが同時に起こるので、ファンに対する伝達はとても効率の良いものとなります。マグロナ様はこの現象がとてもスマートなものだと評し、SNSでの課題も軽減できると続けてアピール。

ただのおじさんは面白いのか?



※本格的に活動を始められる前にアップロードされたテスト用の動画。既に高いレベルでモデルや声が作成されている。イラストレーターとしての活動を知るファンからは驚きのコメントが寄せられた。

SNSで行う作家の広報活動は、作品のアップロードに尽きることは間違いありません。しかしながら、作品に関係ないSNSの活動はどうでしょうか?マグロナ様は「おじさんの晩御飯が何だったか知りたいか?といった問題」と例をあげ、「おじさんを知るのは言うてそんな面白くない」とバッサリ。

であるならば、作品をアップロードする以外のSNS活動は本当に作家を好きになってもらう努力として妥当かと疑問を呈します。中にはそうしたことに成功している人もいるものの、極めて特殊な例か、既に自身のキャラを確立しているとしか言えないのでしょう。そういえば、インサイドには日記を書き続けている謎のおじさんが居たような……

「受肉」によってSNSがより効果的に


なかなか思いを伝えるのは勇気がいるもの

自身を作品とすることで、キャラを前面にしたコミュニケーションが可能となりました。マグロナ様は、これによりSNSの使い方が楽になったと言います。確かに昔と比べれば、気に入った作品に対して感想を送るハードルは下がりました。それでも、作家の日々のつぶやきに対しては難しいのが実情です。

マグロナ様自身もひとりのファンの立場を考えた時、好きな作家に対してどの程度踏み込んで良いものか悩ましいものだとその心情を吐露します。仮に感想を送ったり、もらえたりすることがあっても互いに気を使ってしどろもどろになるのは想像しやすいですね。

自身の作品でVTuberとして動くことでコミュニケーションのハードルを下げ、日常的な挨拶だけでも大きく反応を得られるようになったと言います。これは必ずしもファン側だけの気軽さに留まらず、作品を気に入ってくれたファンに対し、作品以外のアクションを作家から行える気軽さの獲得にも繋がったとのこと。なぜなら、キャラ自体に声を掛けてくれた人は少なくとも反応を喜ぶと確信できるからです。

いくら自分のファンとは言え「ただのおじさんが絡みにいってよいものか」というのがマグロナ様の悩みだったようです。作家に親近感を作りにくいという壁はリアルな悩みと言えます。マグロナ様は、この悩みを軽くできたことがメリットだと感じた様子でした。

作品を見てもらえる環境を模索する努力を



コミュニケーションの獲得に伴い「作品を見て頂ける感覚は強くなった」とその満足感を露わにするマグロナ様。作品を見てもらうには作家自体を見てもらえることが強い、という思いを深めたようです。

そんなSNS活動の変遷の上で、現代の作家が直面する課題にひとつの提案を投げかけます。作家は作品を評価されて世に出ることを理想とする……これはマグロナ様自身が作家であることから理解できるとしつつ「強い言葉を使ってしまえば、良い作品であるだけで売れるに違いないという思い込みは、最近の状況を考えると甘えがあるのではないか」と思うに至ったそうです。

作家として、作品そのものに出会ってもらう為の環境づくり、自身のポータルに近いものを作る必要があるという思いから、現代はTwitterがそれにあたると考えていたようです。しかし「受肉」後の活動そのものが、今ではそれが作品発表の根の部分になり得ると実感を強めているようでした。

本日のセッションは、技術的な障壁もどんどん下がる中で、こうした活動は広告塔を兼ねたコミュニケーションツールとなり得る可能性を考えてもらえたら、との思いで臨まれたとのこと。

実際にかかった学習時間は?



それではマグロナ様が活動するまでに必要だった期間はどの程度だったのでしょうか?ご友人が作成されたチュートリアル動画に加え、公式の動画を見た時間を含めて、およそ8時間程度でキャラを動かせるところまで到達できたのだとか。

「自分の描いたキャラが動くのは……かわいいんです。自分の趣味が詰め込まれたキャラが目の前で動いてくれるので」と、学習への動機を語るマグロナ様。

新たな技術を学ぼうとする時には、確かに高い壁を感じます。マグロナ様は、キャラが動けばかわいい!といったことを入り口にしてみても良いのでは、と新たな未来の表現者に投げかけセッションを締めくくりました。

マグロナ様の声への思い


個人的な事で僭越ながら、筆者はマグロナ様が活動されるしばらく前から、イラストレーターの「ukyo_rst氏」が描かれる作品をひっそりと追いかけておりました。描かれるエルフの女の子などとても儚いタッチで、セクシーさと美しさが調和していると感じます。

と思えば、一転してゾンビの女の子の姿を描いた作集を発表したりと、新たな深い表現を模索し続けておられます。筆者はこのゾンビシリーズの最初のプレ作品を求め、即売会へと走ったのを今でも覚えています。

セッション終了後に質疑応答の時間がありましたので挙手してみたところ、筆者が運良く選ばれましたので、マグロナ様の声を作り上げるまでのお話を伺うことにしました。

VTuber活動を始める前は、誰かが声を当ててくれればと考えていたようです。しかし、自分の絵をLive2Dで動かしてみたら、想像以上にかわいかったのだそう。その瞬間に、自分以外が声を当てるのは考えられないと感じ、かわいいだけにおじさんの声を出すのは嫌だったのだとか。そして、地声の方を調整してみたり、様々なソフトウェアを試すなど「負けるもんかという思いでずっと模索してきた」ようです。

そのこだわりは、このセッションが開始される3時間前にも声に関する進展が見られた、と話される姿そのものに現れているのではないでしょうか。マグロナ様、質問にお答え頂き本当にありがとうございました。

以上、alive2018スペシャルゲストセッションのイベントレポートでした。マグロナ様がオススメされるように、読者の皆様も是非Live2Dへ挑戦してみてはいかがでしょうか。

「alive2018」にてVTuber魔王マグロナ様がご講演―“バ美肉”そのメリットはどこにあるのか

《Trasque》

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