なぜなら、スタジオ撮影などのように機材を自由に持ち込んで使えないこと、コスプレイヤーが立っている撮影位置から基本的には移動できないこと、大勢の人が撮影するので1回の撮影時間が短いことなどが理由としてあげられる。
しかし、綺麗な写真を撮ればコスプレイヤーにも喜んでもらえ、Twitterでリツイートしてもらえるし、腕を見込まれればスタジオ撮影を依頼されるチャンスにも繋がる。カメラマンにとってイベント撮影はとても大事だ。
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そんなイベント撮影で、まるでスタジオで撮影したかのようなクオリティーの写真を撮るカメラマンもいる。そのひとりが教主shadowさんだ。中国で活躍している彼は、イベントでのコスプレ撮影においてNo.1の呼び声も高い。
日本でもSNSを通して注目を浴びているが、基本的に使っているのはカメラボディが「CANON EOS 6D」、ストロボは「Yongnuo製 Speedlight YN560」3個と、参加しているカメラマンの中では特別高い機材を使っているわけではない。
どうすれば同じようにクオリティーの高い写真が撮れるのか、教主shadowさんにコツを教えてもらった。
■良いコスプレ写真を撮るために必要なことは?
――コスプレ撮影を始めた理由は何ですか?
教主shadow
ある時、動漫展(中国の同人即売会)で、コスプレをした可愛い女の子をたくさん見たんです。そこから、可愛い女の子を撮影したくて、カメラを買って撮影を始めました。
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――コスプレ撮影の魅力は何ですか?
教主shadow
毎回、コスプレイヤーと打ち合わせして、異なるテーマや表現手法を用い、それぞれの希望を写真で形にできるように取り組んできました。そうやって、現実世界とは異なる千差万別の世界観を生み出すことができた時の快感は、一度経験したら病みつきになります。
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――イベントでのコスプレ撮影は、どういった準備をしていますか?
教主shadow
ふたつありますね。まずは、モデルのコスプレするキャラクターをしっかり理解しておくこと。もうひとつは自分が撮りたいテーマ(ある種のスタイル)を明確化すること。
そのふたつを頭の中で合成させてから、撮影環境に一番適したレンズを選んだり、ストロボの光など機材をセッティングしたりするのです。
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――実際に撮影する時はどうなりますか?
教主shadow
理想は「3、2、1、パシャ!うんいいね~次言ってみようか!」だと思いますが、実際の撮影ではこんなにスムーズに行くことはほぼありません。まずはコスプレイヤーの体型や衣装を把握し、一緒に撮影イメージを共有することが大事です。
あとはカメラアシスタントに、やるべきことの指示を出してから、「3、2、1、パシャ!うんいいね~次言ってみようか!」になるわけです。私の場合はカメラアシスタントを3~5人くらいを連れています。
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――良い写真を撮るのに一番大事なことは何ですか?
教主shadow
コスプレイヤーと自分、お互いの理解を深めることです。コミュニケーションを取ることで、たくさんのアイデアが生まれますし、レンズ越しにこちらがどんな風に見ているかが相手に伝わればポージングもしやすいでしょう。
会場での撮影時間は短いですから、お互いが力を合わせることでより良い撮影ができるのです。
例えば、「マントをもっと広げほしいです」といった指示も、遠慮せずにきちんと伝えたほうがよいです。
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■誰かのマネではなく、自分のイメージを撮影することが成長のカギ
――中国ではどんな撮影スタイルがあるのですか?
教主shadow
中国ではたくさんの撮影スタイルがあります。ひとつひとつを説明するのはとても難しいです。独自のスタイルを持った多くのカメラマンがそれぞれの撮影方法を突き詰めています。
なので、同じモデルに対しても撮り方は千変万化です。それもコスプレ撮影の魅力だと思います。
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――では、教主shadowさんは、どのような撮り方をしているのでしょうか?
教主shadow
私の場合は、カメラアシスタントの人数が多いことが特徴でしょう(笑)。私はストロボを多用した撮影が好きです。自然光はコントロールが難しいので、自分が操作しやすいストロボがあると撮影がスムーズです。
自分のイメージ通りの陰影を演出したうえで、次は引き算ですね。写真の構図では、いらない要素は映さないほうがいい。最後に、できるだけコスプレイヤーの強みと会場の雰囲気がマッチングするようにします。
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――撮影にどうしても欠かせないことはありますか?
教主shadow
私の場合は、ストロボは欠かせません。それと、最も大事なのは喜んで撮影させてくれるカッコいいお兄さんや可愛いお姉さんのコスプレイヤーたち! そして、私の撮影を手伝ってくれる仲間ですね。
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――よくストーリーが分かる写真が理想だと聞きますが、どういうことでしょうか?
教主shadow
私の考えで言うなら、写真を見ただけで何を訴えたいのかが分かることですね。
本来、モデルの視線、表情、ポージング、雰囲気はそれぞれ独立した要素ですが、全てがひとつにマッチングした瞬間、その写真からは何を伝えたいかがはっきり感じ取れるようになります。いわば写真から声が聞こえるんです。
そういった写真を撮れることが、ストーリーを生み出すことに繋がるのでしょう。
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――最後に、どうすれば撮影技術が上達するのでしょうか?
教主shadow
この質問はとても難しいですね。撮影することにおいて、機材操作や構図の作り方などの基本を理解しておくことは、テンプレートのようなもので必須です。
そのうえで、個人的な考えを言いますと、カメラマンとして大事なのは、自分の頭の中にあるイメージ通りに撮ることであり、誰かのマネをすることではないということです。
良い写真を参考にするのはいいですけど、自分が撮りたい写真に向けて一歩一歩近づけるよう取り組み、試行錯誤を繰り返し、とにかく上手くなりたいという強い気持ちが成長に繋がります。
あるいは、模倣の中にも喜びはあるかもしれません。しかし自分のオリジナルでないと、自分の思考や哲学などがだんだん消えていくのだと思います。
撮影:教主shadow(Twitter:@jiaozhushadow、weibo:@教主shadow)
取材協力:寒黙(Twitter:@nigellizhe)