コスプレの到達点“造形レイヤー”とは?達人ふたりが明かす奥深き世界、製作の心得 3ページ目 | アニメ!アニメ!

コスプレの到達点“造形レイヤー”とは?達人ふたりが明かす奥深き世界、製作の心得

同条件を満たす定義は様々ですが、全体で見れば、原作のキャラクターにどれだけ寄せられているか、平たく言えば化粧や衣装、小道具などのクオリティーが高いかどうかが評価を左右する傾向が見られます。

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ファンタジー作品の人気が強いのもあり、造形をやりたい人が増えて来た


ーーお二人も講師をするなど、業界全体で造形教室が最近は増えています。それだけ造形をしたい人が増えたと言えますか?

空我
それはあると思います。理由としては大まかにふたつあって、まずコスプレファクトリーのように造形に必要な材料を安く販売する所が増えたのがひとつ。
次に最近流行っているコスプレとして、『Fate/Grand Order』や『刀剣乱舞』など、衣装のどこかに造形物が入っている作品のキャラクターが増えた影響が大きいのではないかと思います。

らぷらす
目が肥えて、売っている物では満足しない人が増えたのもあると思います。例えば、衣装を買ったけれど、肩のパーツの部分が原作とは違って布になっている。
衣装はそのまま使うけど、肩のパーツだけ造り直したいとなった時に造形の知識が役に立つ。既製品を改造することで自分らしさが出せるんです。
造形は表現の幅を広げるための手段なので、僕らも造形レイヤーというよりは、造形をしなくては満足できなくなったコスプレイヤーです。

空我
あとは以前と比べてコスプレに対する姿勢も変わって来ているのを感じます。
昔はコスプレイベントに専属のカメラマンさんを呼ぶこともなく、コスプレイヤーが集まってワイワイやりながら自分達で記念撮影するというノリでした。今はスタジオやロケーションの良い建物、自然の中で良い写真を作品として残すようになってきています。
そうなると、造形の完成度も求めるようになるんじゃないかと思います。

造形においては情報交換を大事にしている


ーー造形をする人達同士で交流は盛んですか?

空我さんの製作現場 (画像提供:空我)

空我
自分たちの周りはわりと交流する人が多いですね。製作物は自分が造って良い仕上がりだと思っても、周りが見た時にそうじゃないこともあるので、意見やアドバイスを聞きたいです。
造形はある程度は方向性が同じでも、細かい所は人によってやり方が全然違うので、情報交換はとても貴重です。自分一人だとどうしても煮詰まってしまいますから。

らぷらす
お互いの製作物を見せ合った際は、表に見えない裏の部分を確認し合っていますね。クオリティーとして見せる部分ではない、時間や予算の節約するための工夫した箇所です。そういう意味ではとくに女性の造形が得意な人は尊敬していますね。

ーー女性は手先が器用なイメージがありますよね。

らぷらす
ここまで造形レイヤーというくくりで話をしてきましたが、厳密にはそんなくくりはないと思うんです。シンプルに言うなら、造形が得意な人と縫製が得意な人に分けられるんじゃないかと。
そこで言うなら、僕は縫製が苦手なんです。ミシンはあるのである程度まではできますけど、複雑な切り返しなどはできません。
女性は造形が上手な人は縫製も上手である人が多いですね。どっちも得意なのがすごい。実は僕の中で勝手に七英雄と呼んでいる女性のコスプレイヤーがいるんです。

ーー七英雄!?かっこいいですね!

らぷらす
あくまでも僕の考えですけど、男性と女性で大きく違うのが、細かい仕事を淡々とできるかどうか。
例えば僕なんかは同じ腕パーツを2つ造るだけで辛い。同じだと飽きちゃうんで。
ところが、女性の方で同じ鱗パーツを300個とか平気で造れる方もいるんですよ。自分にできないことができる人は尊敬できる人です。

新しい技術を発見して広めて行きたい



ーーお二人の今後の目標は?

らぷらすさんが製作途中の『疾風!アイアンリーガー』マグナムエース

らぷらす
電気を使った仕掛けが知識として全然ないので、今造っている『疾風!アイアンリーガー』のキャラのサングラスにディスプレイで目を表示させたい。
今の知識だけじゃ絶対できないことですけど、目標にして取り組むプロセスの中で色んな派生の知識が得られるので、今の自分ができないことにどんどん取り組んで行きたい。

空我
電飾関係はコスプレイヤーでやっている方はあまりいらっしゃらないので、そういった他の方も知らない技術をどんどん開拓して、広めて行きたいのはやっぱりありますね。

らぷらす
例えば、コスプレファクトリーで人気が高いEPPフォームは最初から社長が意図していた使い方じゃなかったんです。
普通、発泡スチロールにボンドを付けたら溶けちゃうんですね。ところが、社長に「コスプレの造形として使えそうなんだけどどう?」と送られた発泡スチロール系のサンプルに、Gボンドを試しに塗ったら全然溶けなかったんです。
しかもスプレーも吹きかけられる。ただ曲げても割れにくい発泡スチロールと言う紹介で渡されたのに、そんなすごい素材だったのが判明したんです。

造形トップだって、相性の良い合皮に塗れるんですよ。合皮にエナメルのような光沢が欲しい時は、造形トップとの相性が良ければいける。それも最初は社長が想定していなかったんですけど、「やってみたらできた!」と。
コスプレファクトリーには新たな材料をたくさん試させてもらっているので、副作用を見つけたり、社長が意図していなかった効果が得られたりしたことを他の方に伝えられるのは喜びなので、これからも広めて行きたいです。

空我
また、全く何から手をつけて良いか分からない方へのアプローチとして、「とりあえずこれを造りながら学んで行きましょうか?」という提案も必要だと思うんで、そういった意味でも造形教室は今後も続けて行きたいと思っています。

◆◆
ここまで空我さん、らぷらすさんの話を聞いて、コスプレにおいて造形レイヤーというくくりはないのだと感じました。恐らく昔の造形をする人が少なかった時代で、造形を本格的にやっている人がめずらしかったことから生まれた造語だと思います。しかし、現在のコスプレでは大小、何らかの造形物が欠かせないことが多いため、造形がより身近になりました。そういった意味では、かつてあった“造形レイヤー”という呼び方は今後なくなっていくのかもしれません。

プロフィール


天元突破グレンラガン』ラゼンガン/空我(画像提供:空我)

空我(@Qooga_13)
FGOのおじさんキャラから懐かし系のロボット、着ぐるみ等多ジャンルで活動中のコスプレイヤー。甲鉄城のカバネリ公式『イラスト&イメージ写真集』に造形物作成や一部モデルとして参加。定期的に造形教室も開催しています。また、イベントでのステージ出演、コスプレ修理ブース等の依頼も随時受け付けております。

ザク(全長約2m。1/10スケールMS-06FZ)/らぷらす(画像提供:らぷらす)

らぷらす(@laplace0920)
三度の飯よりサンライズ系ロボット作品が好きなコスプレイヤー。洋画からゲーム作品、ネタ系と幅広く好きなものだけをやっています。主にコミケにて「らぷらすちっく」というサークル名でグッズや写真集を頒布しております。今年の夏コミも空我さんと共同のFGOジャンルサークルを金曜日P-4abにて行いますのでぜひお越しください。
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《日本コスプレ通信》

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