「製作委員会方式に並ぶ選択肢がもっとあっていい」ヤオヨロズ福原Pが展望するアニメビジネスの未来像 | アニメ!アニメ!

「製作委員会方式に並ぶ選択肢がもっとあっていい」ヤオヨロズ福原Pが展望するアニメビジネスの未来像

『けものフレンズ』『ラブ米』を手掛けたアニメ制作スタジオ・ヤオヨロズの福原慶匡プロデューサーにインタビューを敢行。なぜアニメプロデューサーという仕事に注目するのか? その必要性とは? 昨今話題となっている製作委員会方式の是非や

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福原慶匡氏
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今、アニメプロデューサーとしてアニメ業界の最前線を走っている人物をひとり挙げるとすれば、それは『けものフレンズ』『ラブ米』を手掛けたアニメ制作スタジオ・ヤオヨロズの福原慶匡氏だろう。
その福原プロデューサーが『アニメプロデューサーになろう! アニメ「製作(ビジネス)」の仕組み』(星海社新書)と題する本を上梓。アニメビジネスの構造からアニメプロデューサーに必要な知識・素養を自身の経験から解説した一冊だ。
だが、そもそも福原氏はなぜアニメプロデューサーという仕事に注目するのか? その必要性とは? 昨今話題となっている製作委員会方式の是非やアニメーターの労働環境問題も絡めて、アニメビジネスにおける疑問点や今後の未来像を訊いた。

星海社新書『アニメプロデューサーになろう! アニメ「製作(ビジネス)」の仕組み』
2018年3月23日発売
http://www.seikaisha.co.jp/information/2018/03/13-post-animep.html
[取材・構成=いしじまえいわ]

■全ての責任と決裁権を持つのがプロデューサー

――今日はアニメプロデューサーとアニメビジネスについて詳しくお話を伺いたいと思いますが、前提として「アニメプロデューサー」とはひと言で表すならどんな仕事だとお考えですか?

福原慶匡プロデューサー(以下、福原P)
アニメを作る上で「作品として作る」「商品として作る」という2つの側面があります。前者を「制作」、後者を「製作」ともいいますが、その両方が分かる人物がアニメプロデューサーと名乗るべき、と僕は考えています。

――べき、ということは、現状そうでないケースが多いということでしょうか。

福原P
そうですね。大まかに言うと、クリエイティブの現場とビジネスの現場にプロデューサーがそれぞれいてそれぞれのことをやっている、という感じです。
ただ、現在はデジタル化が進んでメディアミックスの幅が広がっているので、その両方に精通し全体を統括できるプロデューサーがより重要になってきています。仮に今、製作委員会方式の作品に関わる全てを統括するプロデューサーをひとり立てるとすれば、それは製作委員会の幹事にあたる人物になります。その人はビジネスについてはもちろん専門家ですが、さらにクリエイティブにもどれだけ造詣があるか、ということにかかってきます。

――理想的にはその立場の人がクリエイティブ側もきちんと見るべき、ということでしょうか。

福原P
本来そうあるべきだと思います。実際、ハリウッドのプロデューサーは脚本も企画も自分で決めますし、お金を集めるのも自分でやります。
ひとつ大きく違うのは、製作委員会方式というのは海外にはあまりなくワンオーナー制、つまりプロデューサーにクリエイティブとビジネス両方の責任と決定権があるんです。だから製作委員会形式のようにメンバー同士で利害が対立したり意見がまとまらなかったりということがそもそも存在しないんです。そしてそれだけ大きな責任を負うので海外ではプロデューサーとして一発当てた時のインパクトが非常にデカイですし、憧れられています。

――大きな責任がある一方、社会的地位も高く儲かるのが海外でのプロデューサーなんですね。

福原P
そうです。そのためには相応に頭が良くないと務まりません。だから海外のプロデューサーには弁護士出身やMBA持ちといった人が多いんです。それぞれの専門の立場で作品に携わった時に「こんなに儲かるんだ!」というのを目の当たりにして、プロデューサーになるんです。
もちろん、ハリウッドの形だけが正解だとは思っていません。日本では監督などクリエイターが脚光を浴びますし、プロデューサーはその縁の下の力持ち、でいいと思います。でも頭の良い優秀なプロデューサーが必要、というのは日本のアニメ業界も同じだと思います。

■ファンの熱意に応えることがビジネスの成功につながる

――これまで作品を作り手側のクリエイティブサイドとビジネスサイドという構図のお話でした。視点を変えて、作り手側と受け手側という構図で考えた場合でも、やはりプロデューサーは重要な存在なんでしょうか。

福原P
そうですね。ライブと同じで、今のアニメシーンでは観客やファンという表現も古いと思えるくらい、ムーブメントは作り手と受け手が一緒になって作り上げるものになっています。ファンはSNSなどで作品やスタッフに関する情報もどんどん集めていきますから、作り手がどれだけ作品を愛しているかも深くまで見ています。
今ちょうど日中案件のビジネスに携わっているのですが、アンケートやリサーチなどでお客さんの反応を確認してみると、日本のファンは非常に深いところまで見ています。いわゆる“考察班”と言われる方など見巧者も多く、物語の読み方がスタッフよりも深いお客さんもたくさんいます。日本のファンのコンテクストを深く読む作品愛の深さは誇るべきものです。
だからこそ、送り手側の情報発信や対応能力も高いものが必要になってきています。クリエイティブの価値を理解し、顔も名前も出してファンに対して誠実な対応をし、信頼を得られる存在でないといけません。それもまた今のプロデューサーに求められているものの一つだと思います。
そして、それができるか否かが結局ビジネスの勝敗も分けるので、今ビジネスとクリエイティブが分断されているのはナンセンスな状況です。
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《いしじまえいわ》

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