――片渕監督とは他にどんな話をされましたか?
バラス
私は片渕監督の作品で特に『マイマイ新子と千年の魔法』が気に入っています。何故かというと、主人公の女の子(新子)が自分の先祖や昔のことに想像を膨らましていくのですが、私も同じように「自分の先祖はどんな人だったんだろう」「その人たちはどんなところに住んでいてどんな生活をしていたんだろう」と思いを馳せるのが好きだったんです。『マイマイ新子』はそんなかつての自分を思い出させてくれると同時に、その体験を通じて現在のことも見つめ直させてくれる、そんな作品だから好きなんです。
そんな話を片渕監督にしたところ、片渕監督も『ぼくの名前はズッキーニ』を見て子供の頃のいろんなことを思い出させてくれた、とおっしゃっていて、お互いの作品が共鳴し合ってるね、ということを二人で話しました。
バラス監督は『#この世界の片隅に 』『#マイマイ新子と千年の魔法 』どちらもお気に入りとのこと 今回の来日では、学生さんたちとのふれあいも楽しんだようです 来日期間も終了し、先ほど無事に出国されました #ぼくの名前はズッキーニ pic.twitter.com/j76qlzQ3Ok
— 映画『ぼくの名前はズッキーニ』公式 (@boku_zucchini) 2017年12月2日
――『ぼくの名前はズッキーニ』を映画化したのも、子供だけでなく大人も自分の子供時代を思い返して物語を楽しんでもらうため、ということでしょうか?
バラス
いいえ、実は『ぼくの名前はズッキーニ』の原作は大人向けの小説で、どちらかというと私はこれをもとに子供に向けた作品にしようと思って映画を作りました。
ところが実際に上映されると、数多くの子どもや子ども連れの大人だけでなく、子どもを連れていない大人だけの観客もたくさん見に来てくれたんです。それは私にとっては予想外でしたが、嬉しいことでもありました。
では何故大人たちが見てくれたんだろう? と考えると、子どもたちの物語によって描かれる様々な感情は、大人たちに自分たちが子どもだった頃のいろんなことを思い出させ、それによって大人の感情も動かす、それが大人の観客を動員する理由になっているように思います。
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――日本のアニメも多くの場合、主人公は少年少女で、大人のファンも彼らの感情を通じて物語を楽しんでいるので、同じように感じます。
バラス
そうですね。そういえば、新海誠監督の『君の名は。』や細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』も面白かったですよ。
――それらの作品もSF的哲学的な要素よりは共感しやすい若い主人公たちの感情を軸に描いてヒットした作品でした。
バラス
『ぼくの名前はズッキーニ』も、そういった作品を好むアニメファンの方に親しんでいただける作品のように思います。