アニメにおける“グラフィックデザイン”とは? 「妹さえいればいい。」BALCOLONY.インタビュー 3ページ目 | アニメ!アニメ!

アニメにおける“グラフィックデザイン”とは? 「妹さえいればいい。」BALCOLONY.インタビュー

TVアニメ『妹さえいればいい。』より、パッケージデザインやキービジュアルのほか、作中のグラフィックデザインも手がけたデザイン会社・BALCOLONY.にインタビューを敢行。

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アニメにおける“グラフィックデザイン”とは? 「妹さえいればいい。」BALCOLONY.インタビュー
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■ツルツルの表紙とザラザラの帯で、『妹さえ』の二面性を表現

――本作のBlu-ray BOXもデザインされています。この作品ならではのこだわりポイントはいかがでしょう?

『妹さえいればいい。』Blu-ray BOX上巻


染谷
「美少女もの」や「キャラもの」のパッケージだと、普通、カメラに向かって決めポーズを取るヒロイン、みたいなのがユーザーも作り手も求める王道鉄板のデザインです。
でもキービジュアルの時にお話したように、単なるバカで明るくポジティブ100%ってアニメじゃなくて、シビアでピュアな部分がこの作品の感動できるポイントです。だから作品の顔であるパッケージを、お気楽極楽なノリに持っていくべきなのか、すごく悩みました。

加藤
Blu-ray BOXは映像を見て伊月たちのピュアなところに感動した人が買うものだから、最終話を見終わった時に「こうだよね」と思えるように、情緒的なジャケットにしたんです。

染谷
『妹さえいればいい。』とタイトルに代表される「美少女もの」のノリは、あくまでも入口。出口としてはこういう風景じゃないかと話し合って、カントクさんにはしっとりとした彼らのなんでもない日常を描いてもらいましょう、とオーダーさせていただきました。

加藤
紙の選び方も、情緒的な内容に合わせて紙質をしっとりさせた方がいいのか、あるいはツルツルしたものがいいのかで議論しました。ツヤツヤ・テカテカしてる帯に「楽しい日常。でも何かが足りない」という平坂読先生のコピーが合うかどうかも悩みどころで。


表紙全体はツルツル、帯はザラザラした紙質。『妹さえ』の二面性をデザインで表現


染谷
ツルツル系の紙は「ポップ」「ポジティブ」「未来的」「前に進む」といったイメージがあります。ザラザラした紙は反対に、「オールドスクール」「内面的」「静かな」というイメージになります。
今回は、イラストのほうをツルツルの紙にしつつも、帯の紙質をザラザラにして、「楽しい日常。でも何かが足りない」というコピーを入れて、紙の質感のギャップを出すことでコピーを活かす方向に決めました。

加藤
『妹さえいればいい。』は二面性が魅力なので、ボックス本体もザラザラした紙にしてしまうよりは、ツルツルさせて、帯のしっとりさと対比させています。

――ツルツルの紙質なので、カントク先生の描くキャラがより瑞々しく感じられていいですね。

加藤
パッケージが情緒的な雰囲気で、中を開けると楽しいカラフルな雰囲気。これも作品の二面性を表現しています。


太田
盤面を外した時に各キャラクターのタイムスケジュールが描かれていたりと、ちょっとしたネタも入れてみました。

【『妹さえ』特集連動記事より】
「妹さえ」アニメ!アニメ!編集部がBD BOX特典をチェック 妄想捗るアレやコレが満載!

ディスク1は伊月、ディスク2は千尋、ディスク3は那由多、ディスク4は京、ディスク5は春斗……と、それぞれの表面にはキャラクターの顔がデザインされており、ディスクを外すと各キャラの1日のスケジュールが見られるという仕様。
たかがケースかもしれませんが、こういうところにも遊び心が詰まっているのは嬉しい。
ここに載っている生活パターンも各自“らしい”もので、特に那由多は「なるほどな~!」と謎の納得をしてしまいました。

加藤
伊月は普通にフリーランスっぽいんですけど、那由多がヒドい(笑)。下巻はもっととんでもない事になっているのでお楽しみに。

■パッケージ制作は、コンセプトを決めた時と放映中でズレが生じる難しさ

染谷
今みたいにパッケージをデザインする時は、まずコンセプトを立てるんですが、アニメはナマ物なので大変です。

――といいますのは?

染谷
DVD・Blu-rayの仕様は早い段階で決めなきゃいけなくて、発売の半年前から紙の種類や加工を設計し始めないといけません。その時点でパッケージのコンセプトを固めないといけないんですね。でも実際のデザインデータを作るのは、ちょうど1話2話くらいが放送されるくらいの時期なんです。
半年前に仕様を決めた時の作品に対する気持ちと、作品が1話2話放送された後に実際にデザインしている時の気持ちにズレがあって、「『妹さえいればいい。』ってこういう作品だろう」「いやこっちだ、この色だ!」と、半年前にコンセプトを決めたはずなのに、社内でも意見が割れて、デザインを納品する直前まで議論は尽きなくなります(笑)。
本作のパッケージでも、たとえば色を決める段階で「いや、ここはやっぱり白だ!」といった選択をギリギリまでジャッジしていました。

――普段何気なく手に取るパッケージには、それほどまでのこだわりが込められていたんですね。

染谷
文字を配置するときも、2万円近い商品を買っていただく時に、どういう温度感だったらエンドユーザーとしての自分が嬉しいかを考えます。ソリッド過ぎても萌えが好きな自分は嬉しくないし、かといって萌え萌えな造形の装飾過多で字を並べても安っぽくなってしまって、「俺は円盤を買ってるんだぞ!」っていう自己満足感というか、虚栄心が満たされない(笑)。

加藤
お客さんがどんな気持ちで買うのか、最終的な体験まで含めてプロダクトにしないといけません。例えば、漫画雑誌を買うときとBlu-ray BOXを買うときの心構えは全然違いますよね。低価格帯の商品には、手軽に楽しめるわかりやすいデザイン必要です。でも高額な商品では、最大限ファンを満足させてくれそうな佇まいを感じさせないといけないんです。
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《かーずSP》

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