世界の長編アニメーションの新しい景色を語るための言葉 「GEORAMA 2017-2018」/高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言 第11回
アニメ批評家・高瀬司の月一連載です。様々なアニメを取り上げて、バッサバッサ論評します。今回は長編インディペンデント・アニメーションのフェスティバル「GEORAMA 2017-2018」について。
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高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言
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まず最初に挙がったのは、「イランの宮崎駿」こと、アリ・ノーリ・オスコーイエ監督による『天国から見放されて Release from Heaven』(2017年)であった。イラン・イラク戦争をモチーフに、3DCGパートと2D作画パートのハイブリッドで描かれる本作は、土居が「テーマ的に後期宮崎作品に通じ、映像的には新海誠を思わせる」と語るように、「GEORAMA 2017-2018」を象徴する作品と言ってよいだろう。あるいはイラン版『戦場でワルツを』とでも言うべきだろうか。アッバス・キアロスタミを代表とする映画大国に根付いた、高度な映像文化の蓄積を感じさせる傑作である。
また土居は宮崎と新海の名を挙げたが、終盤で「世界から戦争はなくならない。子どもたちを暴力から遠ざけられるのは物語」と語り、過酷な現実を前に“絵”と“物語”が希望をつなぐ本作を、『この世界の片隅に』(2016年)や『マイマイ新子と千年の魔法』(2009年)の片渕須直監督と並べることも可能なはずだろう。
続いて2本目に挙げられたのは、2017年の新千歳空港国際アニメーション映画祭で日本初上映された際も大きな話題を呼んだ、スペインのアルベルト・バスケスとペドロ・リベラによる『サイコノータス 忘れられたこどもたち Psiconautas: The Forgotten Children』(2015年)である。
汚染された島という、宮崎駿『風の谷のナウシカ』の系譜を思わせる設定を持ち込みつつ、同時に『エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』に通じるシーンも含む本作を観ることで、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』(2014年)のトム・ムーアと並ぶヨーロッパの新たなスターと言っていいだろうこのバスケスのことを、“スペインの庵野秀明”と呼ぶ者がいてもおかしくはない。
ことによっては、ポスト・アポカリプスの世界を舞台に、キュートな動物たちのダークな物語を紡ぐ本作のことを、“実質『けものフレンズ』”と言いはじめる者すら出はじめるかもしれない。
《高瀬司》
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