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「きみの声をとどけたい」伊藤尚往監督インタビュー 「演技の上手さとは違う才能を見つけたかった」

8月25日より全国ロードショーを開始する、長編アニメ映画『きみの声をとどけたい』より伊藤尚往監督にインタビューを実施。作品にかける思いや、プロジェクトに対する心意についてお話を伺った。

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「きみの声をとどけたい」伊藤尚往監督インタビュー 「演技の上手さとは違う才能を見つけたかった」
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■演技の上手さとは違う才能を見つける

――昨年8月に、キミコエ・オーディションの合格者が決まりました。最終審査では本作のシーンを抜粋したアフレコ審査もあったそうですが、この時点でキャスティングはどの程度、進められていたのでしょうか?

伊藤
それぞれに「この役ができそう」という感じで括っていたとは思います。想定はしていましたが、最終的にはバランスなどを見ながらオーディション後に決めました。絵コンテ作業がほぼ同時進行だったんですけど、キャラクターを決めていく中でも、オーディションで決まる子たちにある程度フィードバックができるように、なるべくキャラに幅を持たせながら進行していきました。


――女子高生7人のキャラクターはどのように作っていきましたか?

伊藤
オーディションで選ばれた子たちが、「せっかく選んでもらったのにこんな役?」とはならないようにしたいと考えていました。人数がいても、向かっていく方向や経過がきちんと別々のものになっていれば個性の住み分けはできると思うので、そのあたりには気を配りましたね。脚本の石川さんが個人のプロフィールを細かく作ってくれたので、映画を見た人がそれぞれの関係性を想像してくれるように意識して描いていきました。

――キャラクターデザインの青木俊直さんにはどんなリクエストをされたのでしょうか?

伊藤
“ボーイッシュな子”や“ふわっとした子”といったように、キャラクターは見た通りでいいのかなと僕は思っています。青木さんにはシナリオのプロットからイメージをお伝えしたと思うんですけど、最初に描いてもらったなぎさが、特徴的と言うほどではないんですが、キャラクターがちゃんと立っている感じがしたんですよね。「あ、この子が主役っていいな」と思ったんです。


――主人公・行合なぎさ役を演じているのは、オーディション時の審査員得票数としては一番少なかった片平美那さんなんですね。

伊藤
僕のインスピレーションとして、「なぎさはあまりプロフェッショナルっぽくないほうがいいな」というのがあったんです。難しい話ですが、審査員の皆さんは上手い人を取りたがっていたんですよ。選ばれた子たちは皆、本当に才能のある方々だと思います。でもやっぱり、新人の良さというか、素人芝居とはまた違うフレッシュさというものはあるはずなんです。そのバランスはたいへん悩ましかったですが、オーディション二次選考くらいから、あえてそういうお芝居の子を何人か残してもらうようにしました。その中から片平さんが選ばれて、最終的なキャスティングも紆余曲折あった末、なぎさを片平さんでいくと面白いのかな、というところに落ち着きました。なぎさはすぐ泣いてしまう多感な子で、片平さんもそれに似た不安定なところがあり重なるところがありました。実際に声をはめた時にすごく自分の中でハマって、「これはいける!」と自画自賛した感じでしたね(笑)。


――キミコエ・オーディションは、数ある声優オーディションの中でも「育成」を大きく打ち出しているのが印象的でした。

伊藤
そうですね。ある意味で彼女たちを放り投げられない状況を作って、これから一緒に仕事をしたい人を真剣に選ばせていただきました。90年代後半に流行ったオーディション番組ばりに密着カメラも入っていて、その様子はそのまま彼女たちのミュージックビデオに使われていたりするんですよ。あれから一年が経って、ここ最近はラジオや舞台挨拶でご一緒するとすごくちゃんとお話をしていて、「この子たちすごいな」と思うばかりです。だからこそ、僕たちの手の離れたところでも頑張っていってほしいと思っています。真

――最後に、これから映画を見る人に向けてメッセージをお願いします。

伊藤
新人声優の子たちだけでなく、三森すずこさんを始めとした素晴らしい役者の皆さんが華を添えてくださいました。また湘南の情緒ある風景や、音楽もとても豪華に仕上がっています。特に数々の挿入歌は、シナリオのセリフから歌詞を書いていただいたものもあり心情がよく表れていますので、歌も聞き込んでいただけると嬉しいです。
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《奥村ひとみ》

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