「THE REFLECTION」長濵博史監督インタビュー スタン・リーと超アメコミ好きクリエイターが生み出すアニメとは 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「THE REFLECTION」長濵博史監督インタビュー スタン・リーと超アメコミ好きクリエイターが生み出すアニメとは

7月22日より放送スタートするTVアニメ『THE REFLECTION(ザ・リフレクション)』より、長濵博史監督にインタビューを行った。

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「THE REFLECTION」長濵博史監督インタビュー スタン・リーと超アメコミ好きクリエイターが生み出すアニメとは
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――謎の煙と光線を浴びてパワーを得た超人の話とのことですが、かなりマーベルっぽさを感じる設定で、なんだか「インヒューマンズ(※ティリジェンミストという煙によって特殊なパワーを得た超人種族)」っぽいですよね。

長濵
そうそう。今までにない全く新しいヒーローを登場させようとはしていません。あえて、そっくりそのまま同じではないけど、どこかで見たことのあるヒーローを登場させようとしています。 それは『ウォッチメン』や『キック・アス』的なもので、単なるパクリでは終わらせず魅力的なキャラクターと独自性を確立して観客を引きつけます。
今作のキャラクターたちも、見ている人は最初は「あ、こいつら見たことあるぞ」となりながらも、見終えると「こいつらはこいつらで面白いぞ」となるようにしているわけです。 ぱっと見で、「なんかあのキャラっぽいのが出てくるアニメだ」と思った人に、詳しい人に「そのアニメ、原作者は『アイアンマン』や『スパイダーマン』作った人なんだよ」と語ってもらって、より多くの人にアメコミやスタン・リーに興味を持ってもらえるような作品にしたいという思いありますね。
僕は左利きなので子供の頃はすごくからかわれたり、学校の先生に咎められたりして、やっぱり自分はおかしいんじゃないかと思うこともありました。 そんなことがあったので後々『X-MEN』を読んだ時に、ミュータントたちに共感を覚えたし、変でも良いんだということを教えてもらえたと感じました。『X-MEN』はそういうメッセージのこもった作品だと思うし、今でも世界中のマイノリティの人に希望を与えてくれていると思っています。
そんな素晴らしい作品を生み出したスタン・リーはまだ日本ではどんな人なのかそれほど有名にはなっていないと感じています。映画でのカメオ出演はありますが、彼の業績をもっと知ってもらいたい。
そういえば、そのTシャツのロックジョーとカーナック(※どちらもインヒューマンズの一員。取材時、筆者はマーベルヒーロー大集合のTシャツを着ていた)もいるんですね。


――よく見つけてくれました(笑)。 本当にアメコミとスタンがお好きなようですが、最初に読んだアメコミは何なんですか?

長濵
小野耕世さんが訳してた、光文社の『スパイダーマン』ですね。一番気になっていたのは『シルバー・サーファー』で、銀色でサーフボードに乗っているなんてカッコいいなぁと思っていたのですが、2巻までしか出てないし、もしかして面白くないんじゃないか……と思って手を出せなかったんです。 『キャプテン・アメリカ』や『マイティー・ソー』もあったのですが、当時やってたCMで頭に羽飾りをつけたムキムキマンという男が踊るという面白いCMがあって、キャプテン・アメリカやソーも頭に羽がついているので、学校に持っていったら笑われちゃうんじゃないかと思って買えませんでした。
なので結局、最初は『スパイダーマン』にしようと決めました。東映の特撮版で知っていたし、5巻か6巻くらいまで出ていて数もあるし大丈夫だろうと思ったので。それで手にとってひと通り表紙を見てみると、4巻の表紙が凄くカッコよくてそれを買いました。 その表紙は、這っているポーズのスパイダーマンの周りに、グエン(・ステイシー)やノーマン(・オズボーン)などの顔が浮かんでいるというものでした。

――昔のアメコミの表紙によくあった頭だけが浮いてるやつですね。

長濵
あれ好きなんですよ。当時から、マンガを1巻から買うことはなくって好きな表紙を見つけて途中から買って、そこから遡って読んでいくというのが好きなんです。アメコミって元から長くあるキャラクターのストーリーを途中から読むことが多いので、意図せずしてピッタリな読み方でしたね。 そんな風に買ったスパイダーマンが最初のアメコミであり、僕の中でのアメコミ像になっています。アートをジョン・ロミータ・シニアとギル・ケインが描いている本当に凄い時期のコミックですね。
そのストーリーの中で印象に残っているのは、スパイダーマンと『X-MEN』のアイスマンが共演する回ですね。 とある事情でスパイダーマンがグエンを抱えて移動しているときに、それを見かけたボビーという男が突然路地裏に行って「X-MENである僕が悪事を見逃すわけにはいかない」みたいなことを言って変身してスパイダーマンに戦いを挑むんだけど、途中で自分の勘違いに気づいて最後は一緒に悪党を退治するというお話でした。 当時は『X-MEN』については知らなかったのですが、そのページには小さく「X-MENとはミュータント・ヒーローチームである」とだけ書いてありました。この説明だけですよ。もう、まったくわからない(笑)。なので、最初はアイスマンって事情もわからずスパイダーマンを邪魔するなんて嫌なやつだなぁと思ったのですが、最後に仲間になるところをみて、驚いたし、アイスマンのことが凄く好きになりました。
この何の前触れもなく突然別のコミックのキャラクターが出てくるし、敵か味方かもわからないという、ドキドキ感を色んな人に味わって欲しいと思っていますし、今回の作品にも取り入れています。


――そういったアメコミっぽさや、スタン・リー作品っぽさをアニメーションの中に取り入れるにあたって、どんな工夫をしていますか?

長濵
特別なことをしているという意識はないですね。ただ、スタン・リーの作品の魅力を表現しきったアニメーション作品はまだないと思っているので、自分がやるんだったら、そこをしっかり出して行きたいと考えています

――それはキャラクター・デザインにも反映されていますか?

長濵
スタンがジャック・カービーやスティーブ・ディッコらと生み出したキャラクターは、子どもでも簡単に描けるように作られています。例えばスパイダーマンは、蜘蛛の巣模様をちゃんと描くのは大変ですが、子どもがクレヨンで赤い顔に白で目を描いて、黒で線をいれればなんとなくスパイダーマンだと認識できますよね。 そういう子供でもわかる「記号」が重要だと思うので、今作のキャラクター・デザインにも反映しています。
主人公のエクスオンやアイガイはアルファベットの「X」や「I」をモチーフにしていて、例えばエクスオンなら赤にXを描くだけで分かるようになっています。 これはシンプルで一見バカバカしくも思えるかもしれませんが、ファンタスティック・フォーの青いタイツに「4」の文字だって、コミックを読んでいるうちにたまらなくカッコよく見えてきますし、ファンならその「4」の文字を見ただけで「あっ、ファンタスティック・フォーだ!」盛り上がれるわけです。
そういうアイコン化がアメリカン・コミックらしさかなと思っていて、それを今回の作品でもやっています。日本的デザインもカッコいいのはわかるんですが、あえてレトロなアメコミのキャラクターが今アニメ化されたかのような雰囲気を出しているんです。
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