【インタビュー】声優・緒方恵美がアニメ業界の窮乏をクラウドファンディングを通じて伝える理由 | アニメ!アニメ!

【インタビュー】声優・緒方恵美がアニメ業界の窮乏をクラウドファンディングを通じて伝える理由

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【インタビュー】声優・緒方恵美がアニメ業界の窮乏をクラウドファンディングを通じて伝える理由
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『幽☆遊☆白書』から『美少女戦士セーラームーンS』、『新世紀エヴァンゲリオン」、そして近作でも『ダンガンロンパ」シリーズなど第一線で活躍し続ける声優の緒方恵美が、活動25周年を記念したアルバム製作をクラウドファンディングでチャレンジした。
それは5月12日22時のスタートからわずか90分で目標となる1000万円を突破し、凄まじい反響を集めた。さらに設定日終了を待たず、6月23日にはすべての商品が完売、プロジェクト終了日の7月11日には、2000人以上のファンと2500万円以上の支援を獲得し、ストレッチゴールも全て達成した。これは全クラウドファンディングの1%に満たないほどの稀有な成功例として数えられる。
しかし、このクラウドファンディングは単なる制作費集めだけが目的ではなかった。彼女はこのプロジェクトを通じて海外にCDを同時に届けようとしている。そしてそれは日本のアニメビジネスにおける海外展開の弱点と、それを一因として業界が窮乏する懸念を示したものになっている。
ではなぜ、緒方恵美は声優・歌手の立場からこのアクションを起こしたのだろうか? プロジェクト実施期間中である6月8日、本人を直撃し、その意義と取り組むまでの苦悩を語ってもらった。またインタビューにはゲームブランドのOVERDRIVE代表でクラウドファンディングサイトのcampfire顧問を務め、さらに自身もパンクロックバンドmilktubのリーダーを務め先日には結成25周年記念アルバム『M25』をリリースしたbamboo氏にも加わってお話していただいた。
[取材・構成=日詰明嘉]

abesan――アニメ業界はビジネス上のさまざまな課題を抱えていることは、先日NHKの番組でも採り上げられるなど、広く知られるようになりました。そして今回、緒方さんのプロジェクトではご自身のCD製作をクラウドファンディングで行なうことを通じてそのひとつを喚起させることも目標とされています。声優・歌手としての立場から行動を起こしたのはどんな思いからなのでしょうか?

緒方恵美(以下、緒方)
私は声優として25年間、当時から現在の新作に至るまでずっとアニメのフィールドで活動させていただき、その中で多くのクリエイターの方々と交流を持って――単純に言うとよく飲みに行って(笑)――、直接的にビジネスが大変であるという現状を伺っていました。そういうお話を聞くなかで、ひとりの役者として、また友達としても戦友が苦しんでいるという姿を見るにつけ、何かできないだろうかと常々思っていたという下地がまずあります。
現場の方が苦しんで悩んで、それに対して努力ももちろんされてきていましたが、長年続き、それも限界に達しようとしています。もちろん、他の声優であってもアニメ業界の一員なので、このことに関心がない人はいないと思いますが、私のようにこの年まで長く付き合う信頼関係のもとだからこそ分かることも多くあると思います。たとえば若手の子だったら部分的に聞いたとしても全体像がわからないだろうし、 先輩方であっても新作の現場にいつづけていないと知らないこともあるでしょうし…。
そうした状況のなか、自分が活動25周年を迎えるにあたり、ありがたいことに記念のアルバムを出させていただけるお話をいただきました。私がチャンスを頂いていて、ここまで生きながらえていたのはこの業界のおかげだと思っています。でもそこで考えたんです。私だけがそのような恩恵に預かってよいものだろうかと。ありがたいことに今までずっと仕事をさせていただいておりましたが、これから先もずっとそれが続くとも思っていないので、この状況を使って何かできないだろうかと考えて動き出したのがきっかけです。

――その中で、クラウドファンディングのプランを、「ご自身で製作し海外のファンにもCDを届ける」という形にしたのにはどんな理由からくるものでしょうか?

緒方
以前から「アルバムを出します」と発表すると、海外の方から「それはどこで買えますか?」といろんな言語でたくさんの方に聞かれていたんです。でも海外に正規流通の販路が少なく、それにうまく応えられない状況がありました。そうしたなかでふと、「クラウドファンディングなら関税に関係なく寄付のリターンという形で届けることができるのでは」と思いついたんです。それをこの課題についてこれまで話してきた周囲の人に相談したところ「緒方さんでしかできないけれども、それでもし突破することができたら活路のひとつが見えるかもしれない」とみんなが応援してくれたんです。海外では5周年や10周年よりもクォーター(25周年)の方が重要だと捉える国が多いそうなんです。 そういうタイミングですのでこの機会にやってみようと。

abesan――当事者として海外流通について、また海外での日本アニメの人気についてはどんな認識をお持ちでしょうか?

緒方
近年の出演作で言うと『Angel Beats! 』、『暗殺教室』、『ペルソナ』等が好きだと言う人ももちろんたくさんいますが、それはコアな人たち。私の感触では海外のフェスに行くと「幽☆遊☆白書」や「セーラームーン」といった'90年代のアニメが好きだという方がすごく多い印象です。それはなぜかというと、その頃は子供向けではない作品が増えてきた時代でもありましたし、骨太で万人にわかりやすい王道なストーリー、かつ、少数精鋭で、長期にわたるシリーズが多かったためでもあると思います。
私のファンが海外にいると初めて聞いた時には「なぜ私の声を知っているの?」と思いました。自分のイメージとしては洋画をアテレコするように日本のアニメが海外に行ったら当然、現地の声優が当てていると思っていたからです。要は多くの場合、私の声を知っているということは違法アップロードに字幕が付いたものや海賊版パッケージを観ているからなんですね。もちろん、正規ルートで契約している「アニメ見放題チャンネル」等を利用して下さっている方や、日本語と現地語の2つを内包したDVDを購入して下さっている方もいらっしゃるのですが、割合的には少数で……それによって元々作っているクリエイターや制作会社にきちんと還元されない状況は何とかならないかと思うわけです。
心あるファンのなかにはエンターテイメント産業とはそういう仕組みではないとわかっているから、正規品が欲しいと言ってくれる方もいましたが、販路がないものを手に入れることはできない。「ANiUTa」(※アニメ音楽会社が共同で手がける定額聴き放題サービス)が今年度内に海外でも始まりますし、そういう正規の有料のサービスにも参加して頂くなど、我々が作るものを支えて欲しいときちんと訴えることは大事なことだと思います。
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《日詰明嘉》

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